USP 不純物分析法を用いた分析における Alliance™ iS HPLC System の高い稼働率と頑健性
要約
規制対象の多くのラボでは、高い装置稼働率と製品タイムラインの要求に対応することができる、信頼性が高く頑健な高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムが求められています。この種の制約がある場合、規制対象のラボには、ダウンタイムを最小限に抑えつつ、長期間にわたって動作できる HPLC システムが必要です。HPLC システムの高い稼働率により、質が高く信頼できる結果が得られる必要もあります。Alliance iS HPLC System は、システム操作における人的ミスを減らすことで、分析をやり直す必要性を低減するのに役立つ機能が備わった合理化されたシステムです。Alliance iS HPLC System の機能の一例として、HPLC の使いやすさを向上させ、システムの稼働時間と効率を最大化する最新のインターフェースが挙げられます。このアプリケーションノートでは、Alliance iS HPLC System を 40 日間稼働させたところ、USP フルコナゾール有機不純物分析法について、一貫して正確な結果が得られました1。試験期間にわたって、システム適合性溶液および不純物を含むフルコナゾールサンプルを毎日モニターして、システム適合性を評価しました。
アプリケーションのメリット
- Alliance iS HPLC System で、長期間にわたって効率的に稼働する性能が示された
- Alliance iS HPLC System は、長期間にわたる分析に使用した場合にも正確な結果が得られる
- Alliance iS HPLC System により、USP 不純物分析法を実行する際の、分析法の頑健性と一貫性が得られる
はじめに
多くの規制対象ラボでは、装置の稼働率と製品のタイムラインに対するますます高まる要求に対応するために、信頼性が高く頑健な装置が求められています。この種の制約がある規制対象ラボには、最小限のダウンタイムまたは高い稼働率(75% 以上の時間)で、長期間動作できる HPLC システムが必要です。この高い稼働率により、質が高く信頼できる結果が得られる必要もあります。効率と頑健性の課題に対処するための 1 つのアプローチとして、システム操作における人的ミスを減らすことで、分析をやり直す必要性を低減するのに役立つ機能が備わった最新のテクノロジーを導入することが挙げられます。Alliance iS HPLC System は、HPLC ユーザーの使いやすさが向上し、システムの稼働時間と効率が最大化するように設計された HPLC システムです2。 Alliance iS HPLC System では、最新のインターフェースおよびシステムの分析前チェックを導入したことで、HPLC システムの頑健性と稼働時間が高まり、生産性を向上させることができます3。 このアプリケーションノートでは、Alliance iS HPLC System を 40 日間にわたって動作させ、USP フルコナゾール有機不純物分析法においていかに一貫して正確な結果が得られるかについて説明します。試験期間にわたって、システム適合性溶液および不純物を含むフルコナゾールサンプルを毎日モニターして、システム適合性を評価しました。
実験方法
サンプルの説明
フルコナゾール標準試料溶液は、USP モノグラフに従って、移動相(80:20 水:アセトニトリル)を使用して、各化合物の最終濃度が 10 µg/mL になるように調製しました。標準試料溶液には類縁物質 A(Sigma-Aldrich、製品番号:PHR1651-30 MG)、類縁物質 B(Sigma-Aldrich、製品番号:PHR1862-20 MG)、類縁物質 C(Sigma-Aldrich、製品番号:PHR1826-20 MG)、フルコナゾール(Sigma-Aldrich、製品番号:PHR1160-1 G)が含まれていました。システム適合性溶液は標準試料溶液と同じであるため、標準試料溶液と同じ溶液をシステム適合性溶液としても使用しました。期限切れレファレンス標準試料(Sigma、製品番号 :F8929-100 mg)を使用したサンプル溶液を秤量し、移動相中に最終濃度 3 mg/mL になるように調製しました。
分析条件
LC 条件
LC システム: |
Alliance iS HPLC System(TUV 検出器搭載) |
検出: |
260 nm での UV 検出 |
バイアル: |
LCGC 認定透明ガラス 12 × 32 mm スクリュー ネックバイアル、マキシマムリカバリー、キャップおよびスリット入り PTFE/シリコーンセプタム付き(製品番号:186000327C) |
カラム: |
XSelect™ HSS T3、3.5 µm、4.6 mm × 150 mm(製品番号:186004786) |
カラム温度: |
40.0 ℃ |
サンプル温度: |
10.0 ℃ |
注入量: |
20.0 µL |
流速: |
0.5 mL/分 |
移動相 A: |
水 |
移動相 B: |
アセトニトリル |
アイソクラティック: |
80:20 移動相 A:移動相 B |
実行時間: |
20 分 |
データ管理
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower™ 3.8.0.1 |
結果および考察
品質管理(QC)ラボでは、製品リリースまでの厳格なタイムラインへの対応に迫られています。Alliance iS HPLC System は、製品を期限通りにリリースするという厳格な要件を満たすのに役立つ最新のテクノロジーです。Alliance iS HPLC System は、規制対象の QC ラボが直面する課題に対処できるように特別に設計されています4。 このアプリケーションでは、1 台の Alliance iS HPLC System を、アイソクラティック USP フルコナゾール有機不純物分析法を使用して 40 日間動作させました。一定期間にわたり、システム適合性を 24 時間ごとに分析して、システムが適切に制御された状態で動作していることを確認しました。
USP モノグラフに記載されているシステム適合性要件は、システムが正しく動作することを確認するための HPLC システムの評価です。USP フルコナゾール有機不純物分析法の場合、システム適合性を満たすには、システム適合性溶液中の類縁物質 B と類縁物質 C の間の分離度が 1.5 以上であることが求められると記載されています。また、システム適合性溶液中のすべての化合物について、面積および保持の %RSD が 5.0% 以下である必要があります。システム適合性溶液には、類縁物質 A、類縁物質 B、類縁物質 C、フルコナゾールの 4 化合物が含まれています(図 1)。USP フルコナゾール有機不純物分析法を、Alliance iS HPLC System で 40 日間試験しました。システム適合性溶液の 40 日間すべてのデータ(表 1)によると、Alliance iS HPLC System では一貫して、USP フルコナゾール有機不純物分析法の分離度、面積の %RSD、保持時間の %RSD に関するシステム適合性要件が確実に満たされています。
システム適合性を満たす必要に加えて、長期性能を評価し、Alliance iS HPLC System が 40 日間にわたる分析で制御された状態にあることを確認するために、結果をモニターしました。システム適合性溶液を用いて収集したすべてのデータをコントロールチャートで分析しました。コントロールチャートでは、データをモニターし、すべてのポイントが平均の +/-3 σ の範囲内に収まっているかどうかをモニターしました。図 2 に、システムが動作していた 40 日間にわたる類縁物質 B と類縁物質 C の間の分離度についてのシステム適合性の結果を示しています。分離度の値はすべて、平均から標準偏差の 3 倍以内であり、平均の +/- 3 σ もシステム適合性要件である 1.5 以上の範囲内でした。
40 日間にわたる類縁物質 A の保持時間の %RSD のシステム適合性結果に関するコントロールチャートを図 3 に示します。類縁物質 A の結果は、5.0% 以下という要件を十分に下回っており、すべての値が 0.3% 未満で、すべてのデータが平均の +/-3 σ 以内で、制御された状態でした。残りの化合物(類縁物質 B、類縁物質 C、フルコナゾール)の保持時間の %RSD の結果は、表 1 に示すように、5.0% 以下という要件を十分に下回っているとともに、制御された状態でした。最後のシステム適合性要件は、各化合物の面積の %RSD に関するものです。図 4 に、コントロールチャートにおける類縁物質 B の面積の %RSD の結果を示します。すべての化合物の結果が要件より低く、すべての値がピーク面積の 0.6 %RSD 未満です。すべての結果がシステム適合性要件を満たし、コントロール範囲内に収まっていたことから、Alliance iS HPLC System では、40 日間の試験を通して、一貫した再現性のある性能が実証されました。
QC ラボは、分析法のシステム適合性要件を満たすだけでなく、信頼性の高いサンプル分析を必要としています。Alliance iS HPLC System を使用することで、システム適合性要件を一貫して満たすことができ、40 日間の試験期間にわたって、再現性よく確実にサンプル溶液を分析することができました。フルコナゾールのサンプル溶液には、2 種類の不純物(類縁物質 A と未知不純物)が含まれていました(図 5)。それぞれの不純物の定量分析は、USP モノグラフに基づいて計算しました3。 40 日間の試験全体にわたる、類縁物質 A 不純物の平均計算値は 0.002% であり(図 6)、未知不純物の平均計算値は 0.374% でした(図 7)。サンプル溶液に含まれる各不純物について、すべての結果がコントロールチャートに記録されます。これにより、定量結果が平均の +/-3 σ の範囲内に十分収まっていることが実証され、Alliance iS HPLC System が試験の範囲全体にわたって制御された状態であることがわかります。
結論
Alliance iS HPLC System の頑健性と再現性を実証するために、USP フルコナゾール有機不純物分析法を Alliance iS HPLC System で長期間にわたって実行しました。40 日間にわたって、Alliance iS HPLC System で USP フルコナゾール不純物分析法を実行し、サンプル溶液とともにシステム適合性溶液を 24 時間ごとに分析しました。40 日間の分析時間を通して、Alliance iS HPLC System により、再現性のあるシステム適合性結果と、サンプル溶液の不純物結果の再現性のあるデータが得られました。QC ラボでは、高品質の製品を期限通りにリリースするために、再現性のある結果が不可欠です。Alliance iS HPLC System によって、QC ラボが求める信頼性と品質の高い結果が得られることが示されました。
参考文献
- USP, Fluconazole.United States Pharmacopeia and Formulary (USP 43-NF38) 2020, (GUID-F961B739-9D37-4719-8E8A-1E7474DFE57D_3_en-US).
- Alliance iS HPLC System
- Zhang X, Birdsall R, You Y, Enhancing Robustness for Biopharmaceutical Separations Using the Waters ACQUITY UPLC PLUS Series.Waters Application Note, 720006285, 2018.
- Francis D, Driving Efficiency in QC Labs.Waters White Paper, 720008074, 2023.
720008254JA、2024 年 3 月