【日本国内編】 お客様事例

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アサヒビール株式会社様

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アサヒビール株式会社
食の安全研究所 所長
望月 直樹様にお話を伺いました。




―本日は、非常にご多忙の中、お時間いただきまして、どうもありがとうございました。

望月様(以下敬称略) - よろしくお願いします

―望月様は、2007年に新設されたアサヒビール食の安全研究所の所長でいらっしゃいますが、昨今食の安全に対する意識が高まっている中で大変責任の重いお仕事かと思います。食の安全研究所発足の経緯、役割および組織等についてお聞かせいただけますでしょうか。

望月 - 食品の安全性の問題がクローズアップされ、残留農薬、カビ毒、発癌物質、環境汚染物質などの微量物質の化学分析の重要性が増してきました。食品の安全・安心に対する要求の高度化に対応して、アサヒビールグループ全体の商品の安全・安心に関わる技術開発を統括する組織として「食の安全研究所」を2007年に開設しました。当組織は、食の安全に関する分析技術開発の他、食品の機能性成分の評価に関する分析技術開発を担い、外部への技術の提供も視野に入れながら日本の食品会社をリードする安全・安心の技術力確保を目指しています。組織上におきましては、コーポレート研究開発本部の下に食の安全研究所を設けて、その中に安全評価技術部と機能性成分解析部、この2部が存在しています。安全評価技術部は、品質と安全を保証する最新分析技術を開発する部署であり、機能性成分解析部は、機能性成分の分析技術を開発する部署であります。

―ありがとうございます。皆さまの絶え間無いご研究のおかげで安全で美味しいビールが飲めるわけですね。さて本日は実際にご研究されている皆様にも集まっていただいております。よろしければ、お名前とどのような研究をされているかを簡単にご紹介お願いします。

須賀様(以下敬称略) - 須賀と申します。LC/MS/MSやGC/MSを用いて、残留農薬や動物用医薬品の一斉分析法を開発しています。

田村様(以下敬称略) - 田村と申します。アフラトキシンやオクラトキシン等のマイコトキシン(カビ毒)と製造工程中に生成されるアクリルアミド等の発癌物質の微量分析法の開発をしています。

―ということは、本日お集まりいただいた皆様は食の安全研究所の中の安全評価技術部の皆様ということになりますね。よろしくお願いします。食の安全といいますと、最近いろいろ問題がありまして、非常に社会の関心が高いところだと思うのですが、皆様は食の安全を守るための分析方法を作っているわけですね。ということは、皆さまにとって分析の質を向上させるということが重要な課題になっていることと思います。それに対して、皆様、もしくは研究所全体として、取り組まれている問題、例えばこういう点をもっと改善しなければいけないとか、ここのところが非常に重要だとか、そういったことがありましたら、ご紹介いただけますでしょうか。 

望月 - 実際に原料、製品のルーチン分析をする部門で、正確かつ迅速に行える分析方法を開発するということに重点的に取り組んでいます。こちらで開発された分析方法が、原料や製品の分析を行う他のラボで使用されています。

―そのためどこで誰が分析しても同じような結果が出ることが重要ということですね。

須賀 - 他の部署の者が手順書どおりに作業を行うことで正確な分析結果が出ることを目標に分析法の開発を行っています。

望月 - 特に最先端かつオーソライズされた分析方法を用いることを重視しています。

―あとは分析感度や信頼性、再現性などについて、非常に気にかかるところと思いますが、この辺に関してはどのように対応されていますでしょうか。

望月 - バリデーションが医薬品に準じて、厳しく適正に行なわれているということが重要です。更に、新しく開発した方法を日本食品衛生学会や日本分析化学会等の学会で発表し、オーソライズされることも大事であると考えています。

―他に分析法に重要なポイントがあれば教えてください。

望月 - やはりコスト、例えば前処理においてのコストはできるだけ低いこと、またカラムの耐久性は高いほどいいですね。分析機器については、メンテナンスの必要ができるだけ少なく、連続的に分析できることが望ましいと思います。

―前処理については使用する前処理デバイスや試薬、有機溶媒のコストだけではなく、前処理にかかる時間もコストになるかと思います。また、カラム耐久性や分析機器メンテナンスも分析コストに大きな影響を与えますね。私どもとしてはこのような目に見えにくいところのコストにも光をあてて製品および技術の開発をしておりますが、今後更なる努力を続けていきたいと思います。ところで、食の安全研究所様には非常にたくさん私どもの製品を使っていただいていますが、現在ご使用いただいている私どもの装置、カラム、前処理製品について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

須賀 - LCとしてはアライアンスとUPLC、四重極型MS/MS装置では Quattro micro APIQuattro PremierACQUITY TQD、TOF-MSは LCT Premier を使用しています。カラムもウォーターズのものを使っていて(笑)、XBridgeSunFireAtlantisXTerra。UPLC用には ACQUITY BEHカラム などを使っています。あと前処理用固相カートリッジとして Oasis HLB、MAX、MCX などを使っています。

―沢山使用していただきどうもありがとうございます。その中でUPLCについて伺いたいのですが、皆様はUPLCという技術に関して始めて耳にされたのはいつごろで、どのような機会かを教えていただければと思うのですが、いかがでしょう。

望月 - ちょうど5年ぐらい前ですか。いつぐらいに発売されました?

―発売したのは2004年になります。

田村 - 確か何年か前の分析展かなんかで大々的にこれやっていましたね。

―2004年の春にアメリカのピッツバーグカンファレンスで発表し、日本ではその年の秋の分析展で発表いたしました。液体クロマトグラフィー懇談会や他の学会での発表もそのころからです。では皆様がUPLCに初めて接したのは、学会や発表会でということですね。もし覚えていらっしゃれば、初めて聞かれたときの感想であるとか、あと印象ですね。その辺をお話しいただけますでしょうか。

望月 - とにかく、分析時間が短いというのが第一印象です。今まで普通に30分ぐらいかかっていた分析が5分でできる。ハイスループットには驚きました。

―それを聞かれたときに、本当にそうなるのかという、何か疑問であるとか、話だけじゃないかとか、そういったような感想はお持ちなりましたでしょうか。

田村 - 僕自身は特にそういうのはなかったのですが、うちの部署としては、分析法開発がメインとなるので、分析速度がすごく速くなるとどうしても前処理とかが律速になっていくのではないのかなと。逆にちょっと使いづらいのかなという感じもしました。

―その辺に関して、今現在も使っていただいているということですけれども。実際にはいかがですか。

田村 - やはり前処理に時間がかかってしまうので、分析全体のスピードを上げるためには前処理をどれだけ速くできるかというのが課題ではありますが、LC条件を検討する段階ではこういう条件で「ああ、だめだったら次」というように、時間を大幅に短縮できるようになってきたと感じています。

―結果が出るのが速いということですね。ほかの皆様はいかがですか。

望月 - 残留農薬の分析は対象成分が何百とあり、今までの分析装置では分析時間を短縮するためにできるだけ一つの分析メソッドで多くの成分を分析できるようにする必要がありました。UPLCでは、スピードが速く、複数の分析メソッドを実施しても従来よりも速く分析が完了し、すごいと感じています。

須賀 - 発表当時は製薬向けで、特にハイスループット用の装置と思い、食品分析には向かないのかなと思っていたのですが、現在は研究所で使用されているのを見ていますので、食品分析にも十分使える装置と思っています。

―実際、社内的にも初めは製薬の研究のお客様を真っ先に考えていたのですが、もちろんそちらに浸透するのは早かったのですが、思ったよりも早く食品であるとか、あと環境などの分野へも浸透していきまして、弊社にとってはうれしい驚きとなっております。先ほどちょっとカラムについてもお話しいただいたのですが、UPLCで主によく使っていらっしゃるカラムはどのタイプになりますでしょうか。

望月 - ACQUITY UPLCカラムBEH C18を使っています。基本的にC18でこと足りてしまうことが多く、ファーストチョイスにC18を使用しています。

―ありがとうございます。主に使われているカラムのサイズは、どのぐらいのサイズになりますか。

望月 - 2.1mm内径、50mm長カラムを使っています。5センチで、分離的にはほとんど十分です。

―それで、かなりスピードが速くなるということですね。実は今現在、このUPLC用のACQUITYカラムというのは、1.7μmのBEH充てん剤を使ったものが逆相としてC18とC18、Shield RP18、フェニル。あとHILICが新しく出まして5種類。あとは、後から追加された1.8μmのシリカを使ったHSS、これはHigh Strength Silicaの略で非常に強度の高いシリカゲルでできた充てん剤のものが3種類。通常のハイカーボンロードタイプのC18と極性化合物用に官能基結合密度を落としたHSS T3。あと一番新しいものでHSS SBと呼んでいるのですが、これはエンドキャッピングを全くしていないものを最近追加しました。通常、今までの逆相カラムというのは、エンドキャッピングを極力やって塩基性化合物との2次的インタラクションを抑えるという作り方をされているのですが、このSBカラムはエンドキャッピングしないことで、逆にシラノール基の活性を利用して塩基性化合物の選択性を大きく変えようというカラムになっています。使い方としては、酸性条件でシラノール基の活性は少し抑えながら、うまく利用するという使い方をします。ということは今現在私どものUPLC用カラムとしては、全部で8種類ありまして、UPLCのカラムも今までのHPCLカラムと同じように選択性の違いで選べるようになってきています。今後さらにもっと増やしてほしい官能基であるとか、そういったものがもしあれば、参考にさせていただきますが、いかがでしょうか。

田村 - 今聞いた話だと、僕はそれで十分かなと思います。

須賀 - 官能基自体は多分それぐらいでいいとは思うのですが。耐久性について、詰まりの問題などのほうを改良していただけるとありがたいと思います。

―今、詰まりやすさというお話がありましたが、UPLCカラムの詰まりについてどのような印象をお持ちでしょうか。

田村 - インラインフィルターが新品のときの圧力を確認しておき、分析を繰り返して圧が上がり、ちょっと詰まってきたかなという段階ですぐに交換するようにしています。

―というのは、インラインフィルターの段階で詰まっていることが多いということですよね。

田村 - 交換することによって、圧が下がるので、恐らくはフィルターに詰まっていると考えています。特に、サンプルを多く連続で打った場合に詰まることがあります。

―移動相だけを流している状態でもインラインフィルターが詰まっていくことはありますでしょうか。

田村 - それについては確かめていません。

―グラジエントを良く使われると思いますが、そのときに片方がバッファーか水で、片方がアセトニトリルなどの有機溶媒の場合、バッファーまたは水の方に全く有機溶媒が入っていない状態になっていることが多く、そういった状態で何日か同じ移動相を使った場合に、どうしてもバクテリアなどの菌が繁殖しやすくなります。それが詰まりの原因である場合が割と多く、これは例えばフィルターを交換した段階で、それを電顕で見ると菌体が確認されます。そういった場合には、グラジエント開始時の有機溶媒混合比が5%ぐらいから始まるのであれば、それをバッファーまたは水側に予め混合しておくことによりかなり回避できるというようなデータが出ております。
次に、先ほどお話にもありましたように、私どものMS/MSをたくさん使っていただいているのですが、特に食品分析において、こういった点が適しているということがありましたら教えていただけますでしょうか。

望月 - 耐久性が非常にいいということですね。あと、トラブル時のメンテナンス対応が非常にすぐれている。特にその2点です。

―耐久性が優れているということは、私どものMS装置はZスプレーという機能を持っており、これによってイオン源の汚れが少ないのですが、そういった意味での耐久性が高いということでしょうか。 

田村 - それ以外にも装置自体が頑丈であること。なかなか壊れないということ。そこが非常にいい点じゃないですかね。

―あとは緊急時のトラブルに対する対応がいいというのは、私どものサービスサポート体制が良いということでしょうか。

田村 - トラブル時には迅速に対応いただいているので、セールスとの連携を含んだサービス体制はすぐれていると思いますね。

―今、そのサービス体制というのは会社として力を入れていまして、サービスマンの数というのは年々どんどん増加しており、いち早くお客様のところへ行って問題を解決することを心がけています。MS分析装置の業界の中でも、体制としては整っているほうだと考えています。他に使い勝手であるとか、あとはソフトウェアの話などございますか。

須賀 - ポジネガの切り替えが早いので、その点はとても有用だと感じています。

―実際に食品分析においてポジネガ切り替えというのは、かなり使われる頻度は高いのでしょうか。

田村 - 多成分分析になってくると多いですね。

須賀 - 単一物質だったらそんなことはないのですが何種類か同時に分析する場合には、使っていますね。ポジネガ同時取り込みができない装置の場合はどうしてもメソッドが増えてしまうのですが、ポジネガ同時取り込みができるとメソッドの数を少なく抑えることができ、メソッド作成の際に、気を使わないで済むのが良いですね。そのポジネガ切り替えを、定量分析でも使用しています。

―ありがとうございます。ソフトウエアの使い勝手についてはいかがでしょうか。また何かご要望などございますか。

田村 - 解析自体はとても使いやすいので、多分MS解析ソフトとして一番使いやすいと思いますが、例えば温度設定などのいろいろな設定位置が、バージョンのよって若干変わったりすることがみられます。慣れれば「あ、ここにあるのか」「こっちはここにあるのか」とわかりますが、変わった直後は結構迷います。できれば基本的な入力場所をあまり変えてほしくないなというのはありますね。

―わかりました。開発担当者にご要望として挙げておきます。当然いつも同じような見た目の画面が出てくると使いやすいですよね。ほかに何かMS/MSに関して、ご要望でも結構ですのでございますか。

須賀 - イオンブロックの取り外しがより簡単にできるといいですね。後、プローブの位置を目盛りとかダイヤルで合わせられると便利かなと思います。

―ある程度、決められた場所があったほうがいいということですね。どちらかというと今、割と自由に。

須賀 - 自由に調整できることが良い場合もあるのですが、また前の状態に戻るときに苦労するので。

―はい、わかりました。ありがとうございます。こちらもご要望として開発陣にインプットさせていただきます。英国マンチェスターから弊社MS開発担当者をこちらにお連れしたことはございませんでしたでしょうか。

望月 - まだ、この守谷にお見えになったことはありません。ぜひ訪問していただきたい。若手の研究員にとって、よい刺激になります。

―マンチェスターの開発陣が日本に来た際にはこちらへお連れしたいと思います。日本のお客様のご要望には彼らもとても注目しておりますので、ぜひそれを反映させていきたいと思います。
前処理について教えていただきたいのですが、先ほどOasisをたくさんご使用いただいているというお話をいただき、ありがとうございました。Oasisというのはポリマーを使った逆相固相として1996年に上市され、既に10年以上となり食品分析分野へもかなり浸透し使っていただいておりますが、それ以前からある、例えばSep-Pak C18のような、主にシリカゲルをベースにした逆相固相と比較していかがですか。使い勝手でも性能に関してでも結構です。

田村 - Sep-Pakとの違いと言っていいのかわかりませんが、Oasisは詰まることがあまりないのかなという印象があります。他社の固相カラムの場合は基本的にマニホールドで減圧して使用することがほとんどなのですが、Oasisを使うときには、サンプルにもよるかもしれませんが、自然落下で通液させることが多いと思います。

―詰まりのかなりの部分は、微粒子が混在していて充てんベッドが目詰まりしてしまうためなのですが、Oasisの場合それが少ないということだと思います。粒子径だけを比べると、Oasisには2種類あり、通常使っていただいているのは30μmで、それの倍の60μmもありますが、これはむしろ今までのシリカベースの固相充てん剤より小さいんですね。粒径が小さいほど分離性能が良くなり、少ない溶媒で切れ良く溶出するのですが、細かい微粒子の混合が少ないということで詰まりも少なく通液特性も良くなっています。先ほどOasis MAXやMCXなどのミックスモード固相も使っていただいていると伺いましたが、この辺はどういった理由で使われているのか、その辺を教えていただけますでしょうか。

須賀 - 分析対象成分の物性によると思います。対象となる成分がイオン性の場合にミックスモードが欲しい。HLBの逆相の保持とイオン交換の保持の両方によりうまく抽出されることが多かったので、使っていますね。

―クリーンナップ効率に関してはいかがでしょうか。

須賀 - LC/MSのイオンサプレッションに関することでしょうか。

―そうですね。イオン化に影響を与えるマトリックスの除去率についてですね。

須賀 - 具体的にほかのものと一元的に比較した例というのは、自分ではまだ経験していないのですが、先ほど望月から話が出ていた“オーソライズされた方法”ということで結構ミックスモードOasisが使われている論文が多いですね。それらを参考にして使用しています。また対象成分の物性から考えて、ミックスモードを使ってみたらどうだろうかというように選択しています。

望月 - 最近前処理のファーストチョイスとしてOasisを使うというのが結構多くなっていますね。信頼性が高いことも理由の一つですね。最近ミックスモードも、食品公定法にどんどん入ってきまして、特に精製が難しいサンプルに対して使われている率が増えていますので、今後もっと食品分野にも入ってくると思っています。食品分野だと、夾雑物がその時々によって異なるので、できるだけ分析にかける前に精製したほうが有利です。その点では、ミックスモードなど多様な選択性が重要になってくるでしょう。

―ありがとうございます。最後に、今までも幾つかお話しありましたが、私どもウォーターズ全体に対して、ここは足りないからここをもう少し追加してほしいとか、何かそういったご要望はありますでしょうか。

望月 - 前処理から分析までトータルをやられているウォーターズのメリットを生かして、トータルのアプリケーションを多く開発していただけるとありがたいですね。前処理から機器分析まで一連の分析法が提示されていたら、ダイレクトに使用できていいですね。

田村 - あと、お客様相談窓口の人たちの対応も非常に早いですよね。

―カスタマサポートフリーダイヤルですね。

田村 - 非常にわかりやすく説明していただけるので、よく相談させていただいています。

―これも先ほどのサービスのサポート体制と一緒で、今とても力を入れているところです。お褒めいただきましてどうもありがとうございます。
あと、そうですね。今まで実際、製品の話を細かく聞いてきましたが、もう少し大まかに、私どもウォーターズという会社に対して、どのようなイメージを今までお持ちで、どう思われているかとか、そういったことがありましたら。

望月 - 古くは舶来品というか、HPLCにおいては高級品という様なイメージだったのですが、最近では日本のメーカーと比較しても値段とかは特に高いと言うわけでもなく、日本においても定着化してきていると思います。あと、LC-MS/MSからLC-TOFなどのMS技術をどんどん上げていったというとこは、やはりすばらしいと思います。特にMS/MSは食品分析でもなくてはならない装置になってきました。早くにMS/MSを開発されて、食品のアプリケーションも沢山出ているので、信用しています。

―ありがとうございます。今TOF MSのお話も出ましたが、食品分析でどういう用途に使われているか教えていただけますでしょうか。

望月 - 食品分析ではほとんど安全なものを分析するので、基本的には危険物が検出されることは無いのですが、もしも検出された場合にシングルの四重極型LC-MSよりはタンデム四重極型MS/MSのほうが選択性は高いですが、それでもまだ検出されたものが何かという同定をするときには不充分で、LC-TOFで精密質量まで分析するということは非常に重要なテクニックであり、併用しているということが非常に信頼性を高めることになります。あと、未知物質をある程度、推定するために非常に効力を発揮します。特に標準物質がない関連誘導体の分析には、有効です。

―実は、食品分析の分野でLC-TOFというのは、これから多分、普及がもっと進むものと思っているのですが。今後この食品、特に安全性確認ということではTOF MSの価値は非常に高いと考えていていいのでしょうか。

望月 - 食の安全に関する分析では、誤判定は大きな問題となります。原料取引先にも大きな迷惑を掛けますし、廃棄という経済的な損失も生じます。LC/MS/MS分析と異なる方法での確認が必要であり、LC-TOFは非常に効力を発揮します。誤判定を防ぐのに、必須な機器です。

―ありがとうございます。 最後に、今後、こちらの食の安全研究所で取り組んでいきたいテーマであるとか、もしくはもう少し大きく、食品分析全体のこれからの展望・メッセージがあれば、お願いいたします。

望月 - 現在、LC/MS/MSとGC/MSの組み合わせで、低分子領域であれば、大体のものが分析できるようになってきました。今後は高分子領域における食の安全もかなり深く研究していく必要性があります。そういった面でもLC/MS/MSとLC-TOFは有用なツールです。また、多変量解析も今後の食品分析で多用される解析ツールと考えます。安全性評価だけではなく機能性分野への進出にもその解析力は発揮できると考えます。

―最後に、食の安全研究所のPRがあれば、いただきたいのですが。

望月 - 食の安全研究所はグループの原料・製品に関する安全性の確認や食の安全を確保する為に、分析法を開発しています。そのために、世界の食の安全に関する最新情報を収集し、先端技術を導入しています。ウォーターズは前処理から装置まで最新の動向を踏まえた上で、新製品を開発されています。今後も研究のよきパートナーとして、お付き合い願えればと思っています。

―こちらこそ、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

 


担当者コメント:
私事ですがビールは大好きで毎晩飲んでいます。今回食の安全を最前線で守っていらっしゃるアサヒビール食の安全研究所様を訪問し、望月所長をはじめ皆様が開発される最先端の分析方法により安全で美味しいビールが飲めることを実感いたしました。そのご研究に私どもの製品と技術がお役にたっていることは大変光栄です。これからも更なるご活躍をお祈りしております。

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