付録:HPLC 用語


*以下から翻案した定義を表示しています : L.S. Ettre, Nomenclature for Chromatography, Pure Appl. Chem. 65: 819-872 [1993], © 1993 IUPAC; an updfated version of this comprehensive report is available in the Orange Book, Chapter 9: Separations [1997] at: https://www.iupac.org/publications/analytical_compendium.

 

アルミナ(Alumina)
順相吸着クロマトグラフィーの固定相として使用される、酸化アルミナ[Al2O3]の多孔質微粒子。アルミナは高活性な塩基性表面をもち、10%の水系スラリーのpHは約10です。中性および酸性表面は連続的に強酸で洗浄して作製します。[各スラリーpH=7.5、4]アルミナはシリカよりも吸湿性が高くなります。その活性は、水分含有量に対してBrockmann†スケールにしたがって測定されます。例えば、活性度Ⅰは 1%の水分含有量を示します。
†H. Brockmann and H. Schodder, Ber. 74: 73 (1941).

 

ベースライン*
カラムに移動相のみを流して得られる検出器反応を記録したクロマトグラムの一部。

 

カートリッジ
カラムの一種で、エンドフィッティングのない充てん剤が両端のフリットで保持されている単純な開管。SPEカートリッジは真空マニホールドで複数同時に操作することができます。HPLCカートリッジはカートリッジホルダーに入れて両端を流路に接続します。カートリッジカラムは交換が簡単で、エンドフィッティング付きの従来カラムよりも低コストで便利です。

 

クロマトグラム*
溶出液量または溶出時間に対するサンプル溶液中の分析対象成分の濃度測定に使用される、検出器反応やその他の数量を図示したもの。平面クロマトグラフィー[例:薄層クロマトグラフィーまたはペーパークロマトグラフィー]では、クロマトグラムは分離した部分を含む紙または層を参照します。

 

クロマトグラフィー*
分離される成分が、片方は静止[固定相]、もう片方は固定相に対して移動[移動相]している2相間で分配される力学的、物理化学的な分離手法。

 

カラム容積* [Vc]
充てん剤を含むカラム管の幾何学的容積。[管の内部断面積×充てんベッドの長さL]カラムの粒子間容積は、隙間容積とも呼ばれ、充てん剤の粒子の間を移動相が占める容積です。ボイドボリューム[V0]は移動相が占める全容積、すなわち、隙間容積と粒子内部容積[ポア容積とも呼ばれる]の合計です。

 

検出器*[感度を参照してください]
物理的または化学的特性を測定することによって溶離液の成分変化を表示する装置。[例:UV/VIS吸光度、示差屈折率、蛍光強度、伝導率]検出器でのレスポンスが試料濃度に対して比例するのであれば、標準試料を用いた適切な較正によって、成分量を定量することができます。 2種類の異なる検出器を連結して使用すると効果的な場合があります。これにより、サンプル分析対象成分についてより多くの確証や詳細な情報が得られる可能性があります。電気化学検出器やMS検出器のような破壊型検出器もあります。すなわち、これらはサンプル成分に化学的変化をもたらします。このタイプの検出器を非破壊型検出器と共に使用する場合は、通常流路の2番目に設置します。

 

ディスプレイ
検出器の電気的応答をクロマトグラムの形式でコンピュータ画面上に記録する装置。最新のデータ記録システムは、精巧なアルゴリズムを使用して、ピーク面積の積分、ベースライン補正、スペクトルマッチング、化合物の定量、標準品ライブラリとの比較による未知試料の同定などの計算も行います。

 

カラム効率[H、段数、分離度、感度、スピードを参照してください]
充てん剤ベッドを通り抜ける時のサンプルバンドの分散を抑えるカラム性能を測定したもの。効率の良いカラムはバンド拡散を最小限に抑えます。複雑な混合サンプルにおける類似成分を効率的に分離し、高感度で同定するためには、より高いカラム効率が重要になります。
ノーベル賞受賞者のMartinとSyngeは、蒸留との類似性によって、クロマトグラフィー効率の測定およびカラム性能を比較する手段として、段高[HまたはH.E.T.P.、理論段高]の概念を導入しました。† 彼らは、HPLCおよびUPLC技術の予測として、出来る限り小さな粒子径[より高圧が必要]を充てんした均一なベッドが最大効率を得るためのかぎとなることを認めました。
バンド拡散に影響を与える、カラムと分離システムパラメータの関係は、後にvan Deemterの方程式で説明されました。††
分析者は多くの場合、クロマトグラムの測定値から簡単かつ直接計算できる数値、すなわち段数[N]をカラム効率として参照します。段高はカラム長さとNの比で決定します。[H = L/N;クロマトグラムからNを計算する方法は図Uを参照してください]この方法を使用して計算されたNまたはHの値は、アイソクラティック条件にのみ適用し、グラジエント分離に適用できないことに注意が必要です。
†A.J.P. Martin and R.M. Synge, Biochem. J. 35: 1358-1368 [1941]
††J.J. van Deemter, F. J. Zuiderweg and A. Klinkenberg, Chem. Eng. Sci. 5: 271-289 [1956]

 

溶出液
カラム出口から出てくる溶離液の一部で、分析対象成分を含む溶液。分析HPLCでは、溶出液中の分析対象成分の濃度や量は検出器を用いて検査します。分取HPLCでは、溶出液は一定時間または容量の間隔で一定分量を連続的に回収、または目的成分ピークが検出された時にのみ不規則に回収されます。その後、これらのフラクションから精製化合物を得るための処理を行います。

 

溶離液
移動相[溶離クロマトグラフィーを参照してください]

 

溶離力系列
標準的な充てん剤に保持している特定の分析対象成分に関して、溶離力の強さの順に並べた溶媒リスト。これはアイソクラティックおよびグラジエント溶離メソッドの両方の開発に有用です。 Trappeは、溶媒の極性を増加させていくことによって、アルミナに保持している脂質を分離することが出来ることを証明し、この用語を作りました。†
後に、Snyderはさまざまな順相LC充てん剤を用いて、広範囲にわたる溶媒の溶媒強度パラメータを測定し、結果を表にしました。††
Neherは、TLC分離の選択性を最適化するために選択できる、順相溶媒の等溶離力[一定の溶離強度]混合液について非常に有用なノモグラム(計算図表)を作成しました。†††
典型的な順相溶離力系列は、最も弱いペンタンやヘキサンのような非極性の脂肪族炭化水素から始まり、ベンゼン[芳香族炭化水素]、ジクロロメタン[塩化炭化水素]、ジエチルエーテル、酢酸エチル[エステル]、アセトン[ケトン]と続き、最終的にメタノール[アルコール]が最も強くなります。[図R-1参照してください]
†W. Trappe, Biochem. Z. 305: 150 [1940]
††L. R. Snyder, Principles of Adsorption Chromatography, Marcel Dekker [1968], pp. 192-197
†††R. Neher in G.B. Marini-Bettòlo, ed., Thin-Layer Chromatography, Elsevier [1964] pp. 75-86.

 

溶離*[動詞]
溶離クロマトグラフィーによるクロマトグラフ。薄層またはペーパークロマトグラフィーでは全てのサンプル成分がクロマトグラフィーベッド上に残っている状態で溶離を止め、カラムクロマトグラフィーではクロマトグラフィーベッドから成分が出てしまうまで溶離を続けます。
注意:溶離という用語は、展開(開発)[平面クロマトグラフィーで使用される用語]よりも好んで使用されます。分離システム[移動相と固定相の組み合わせ]を特定の分離のために最適化を行う分析法開発との混同を避けるためです。

 

溶離クロマトグラフィー*
クロマトグラフィーベッドに移動相を連続的に通液するクロマトグラフィー分離手法。 HPLCでは、検出器ベースラインが安定し、分離システムが平衡に達した状態で、サンプルを通液中の移動相の中に注入します。目的対象成分が検出器を通り過ぎるまで溶離を続けます。

 

溶離力
固定相への分析対象成分の親和力に対する溶媒の親和力の大きさ。弱溶媒は分析対象成分を固定相に強く保持させるため、分析対象成分を引き離すことができません。強溶媒は全ての分析対象成分を完全に引き離し、カラム内を移動させます。効率的な分離と適当な溶出ボリュームのバランスを保つため、多くの場合、溶媒を混合して適切な相互作用を作り出します。それによって、特定の分析対象成分の選択性および分析時間の両方を最適化します。[選択性を参照してください]
双極子モーメント、比誘電率、水素結合、分子サイズおよび形状、表面張力は溶離力の目安になります。また、溶離力は分離モードによって決定されます。溶媒の溶離力系列は、吸着または順相条件下での強度が一方向に増加する順に並べられています。逆相分配条件下では、この順番はほぼ反対になります。[図R-1参照してください]

 

蛍光検出器
蛍光検出器は特定の光の波長を用いてサンプルを励起させます。これにより、ある化合物がより高い波長で蛍光を発して発光します。特定の発光波長に設定し、励起光源によって妨げられないようにシャッターを付けられたセンサーは、放出された光のみを集光します。自然蛍光を持たない分析対象成分は、多くの場合この種の検出で高い感度と選択性を得るために誘導体化します。[例:アミノ酸のAccQ・Tag誘導体化]

 

流量*
一定時間内にカラムを通り抜ける移動相容量。 HPLCシステムでは、流量は溶媒送液システム[ポンプ]のコントローラで設定します。流量精度は、カラム出口からの溶出液を一定時間回収して測定することで確認できます。温度によって溶媒密度が変化するため、較正や流量測定を行う場合はこの変数を考慮する必要があります。可能であれば、精密測定は容量ではなく重量で行います。
流量の均一性[精度]および再現性は多くのLC技術に重要です。特に、保持時間が分析対象成分の同定のかぎとなる分離、または保持時間の較正および相関関係がポリマーの正確な分子量分布測定に必要となるゲル浸透クロマトグラフィーにおいて重要になります。
多くの場合、分離条件は流量ではなく線速度を用いて比較されます。線速度は流量をカラムの断面積で割って計算します。流量は容積/時間[例:mL/分]で表されますが、線速度はカラム長さ/時間[例:mm/秒]で測定されます。

 

ゲル浸透クロマトグラフィー*
主に分子サイズや形状の違いによる排除効果に基づく分離。ゲル浸透クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーは固定相に膨潤ゲルを用います。両方ともサイズ排除クロマトグラフィーです。 PorathとFlodinは、生体分子のサイズに基づく分離にデキストランゲルと水系移動相を使用することでゲルろ過について最初に説明しました。† Mooreはサイズに基づく有機ポリマーの分離に、多孔性のポリスチレンジビニルベンゼン重合体ゲルと有機溶媒移動相を使用して同様の原理を適用しました。 ††
†J. Porath, P. Flodin, Nature 183: 1657-1659 [1959]
††J.C. Moore, U.S. Patent 3,326,875 [filed Jan. 1963; issued June 1967]

 

グラジエント
移動相を構成する2種類[もしくはそれ以上]の混和性のある溶媒組成の濃度を、時間と共に変更して溶離力を上げる方法。ステップグラジエントは一般的に固相抽出で使用されます。各ステップにおいて、溶離液組成を急激に弱移動相から強移動相に変更します。さらに、各ステップ間でSPE充てん剤ベッドを乾燥させることにより、ある溶媒から混和性のない別の溶媒に変更することができます。
連続グラジエントは、通常低圧または高圧ミキシングシステム[図J-2とJ-3を参照してください]を用いて、一定時間内での初期溶媒Aに対する強溶媒Bの濃度を表す所定の曲線[直線または非直線]に従って生成されます。連続グラジエントの任意の時間点に一定のアイソクラティック組成を維持するようにプログラムすることができます。分離終了後、初期移動相組成に戻し、次のサンプル注入に備えてカラムの平衡化を行うようなグラジエントプログラムを設定することもできます。高性能なHPLCシステムは4種類以上の溶媒[または混合溶媒]を混合して連続グラジエントを行うことができます。

 

インジェクタ[オートサンプラ、サンプルマネジャ]
所定量のサンプル溶液を送液されている移動相の流れの中に正確かつ精密に導入[注入]する装置。インジェクタは簡単なマニュアル装置、または配列された各バイアルやウェルから所定の順番で多数のサンプルを無人で注入できる高性能オートサンプラがあります。これらのシステムのサンプルコンパートメントは、何時間もの操作でもサンプルの完全性を維持するために温度制御することができます。
多くの最新式インジェクタは、マルチポートバルブでオンラインまたはオフラインの切り替えが可能な、何らかの形式のシリンジ充てんサンプルループを組み込んでいます。うまく設計された内部容量が最小量の注入システムは、できるだけカラム入口近くに設置されサンプルバンド拡散を最小にします。また、キャリーオーバー[前のサンプルによる現在のサンプルの汚染]を防ぐため、サンプル注入間に移動相または洗浄溶媒によって不要物を洗い流すこともできます。
サンプルは可能であれば移動相で溶解し、注入に最適な状態に調製します。これによって分離および検出の問題を防ぐことができます。異なる溶媒を使用しなければならない場合は、その溶離力を移動相と同等もしくはより小さくすることが必要です。少量のサンプル溶液を移動相に混ぜて、分離を損なう可能性のある沈殿や混和性の問題を試験することができます。

 

インレット(カラム入口)
移動相およびサンプルが入るカラムベッドの末端部分。多孔性で不活性なフリットが充てん剤を保持し、微粒子による汚染から充てん剤ベッド入口を保護しています。良好なHPLC分析には、微粒子を含まないサンプルと移動相が必要です。小さな粒子を用いたカラムでは、インレットがより詰まりやすくなるためこれは非常に重要です。カラムベッド入口が詰まり、通常よりも背圧が高くなった場合、逆方向に液を流し溶出物を廃液することにより、フリット上にあるサンプル残存物を除去し洗い流せることもあります。残存物がフリットを通り抜けてベッド自体の入口側に留まっている場合は、おそらくそのカラムの有効寿命は終わっています。

 

イオン交換クロマトグラフィー*[電荷に基づく分離を参照してください]
この分離モードは、主にサンプル成分のイオン交換アフィニティの違いに基づいています。水または緩衝液を用いた水系移動相中の主な無機イオンを、表面が多孔性の小さな粒子で高性能なイオン交換カラムで分離し、電気伝導度または電気化学検出器で検出する方法をイオンクロマトグラフィー[IC]と呼びます。

 

アイソクラティック溶離*
移動相の組成が溶離プロセスの間一定のままである手法。

 

液体クロマトグラフィー*[LC]
移動相に液体を用いる分離技術。液体クロマトグラフィーはカラム内部、または平面上[TLCやペーパークロマトグラフィー]で行われます。より小さな粒子およびより高い注入圧を使用した現代の液体クロマトグラフィーは、1970年にHigh-performance (or high-pressure) liquid chromatography[HPLC]と呼ばれるようになりました。 2004年、Ultra-performance liquid chromatography[UPLC]はLCの性能を新しい領域へと劇的に引き上げました。[UPLCテクノロジーを参照してください]

 

移動相*[溶出液、溶離液を参照してください]
固定相充てん剤ベッドを通って一定方向流れる流動体。移動相は液体[液体クロマトグラフィー]、気体[ガスクロマトグラフィー]、または超臨界流体[超臨界クロマトグラフィー]です。ガスクロマトグラフィーでは、移動相をキャリアーガスと表現します。溶離クロマトグラフィーでは、移動相を溶離液と呼び、充てん剤ベッドを通過した分析対象成分を含む移動相の一部を溶出液と定義します。

 

順相クロマトグラフィー*
固定相が移動相よりも極性の高い溶離方法。この用語は液体クロマトグラフィーにおいて逆相クロマトグラフィーとの対比を強調するために使用されています。

 

ピーク*[段数を参照してください]
カラムから単一成分が溶出した時の検出器反応を記録した差クロマトグラムの一部。分離が不完全な場合、2つ以上の成分が1つの未分離ピークとして溶出されます。厳密に充てんされた効率的なカラムとバンド拡散を最小化したシステムを用いて、最適条件下で溶出されたピークはガウス分布の形状に近くなります。通常はピーク面積[ベースラインとピーク曲線で囲まれた部分]を測定することによって定量を行います。ピーク高さ[ピーク頂点からベースラインまでの距離]が定量に用いられることはあまりありません。この手順では、ピーク幅およびピーク形状の両方が一定であることが必要です。

 

段数*[N、カラム効率を参照してください]
カラム性能を表す数値。[機械的な分離能力または分離効率で、理論段数とも呼ばれます]ピークの保持の大きさはその幅[分散またはバンド拡散]に関係します。段数を計算する手段として、ピークをガウス分布[統計学のベル曲線]によって表すことができると考えられています。変曲点[ピーク高さの60.7%]において、ガウス曲線の幅はその中間点[ピーク頂点]の標準偏差[σ]の2倍になります。図Uに示されるように、ピーク高さを他の分画で測定したガウス曲線のピーク幅は、正確に定義されたσの倍数で表されます。無次元数のNを計算するため、ピークの保持[保持容量VRまたは保持時間tR]およびピーク幅は同じ単位で表示しなければなりません。 5シグマ法はカラム均一性と性能より厳しく測定しますが、実際はピーク対称性の影響を非常に受けます。コンピュータデータステーションは、自動的にそれぞれの分離ピークのクロマトグラムを表示し、それらに対応する段数を計算することができます。

 

分取クロマトグラフィー
更なる実験または用途に十分な量と純度の化合物を分離するために、液体クロマトグラフィーを利用する手法。医薬品またはバイオテクノロジーテクノロジーによる精製プロセスでは、数キログラムの原料を精製するために直径が数フィートのカラムを使用します。数マイクログラムしかない貴重な天然物の精製には、分析用のHPLCカラムで十分です。スケールは異なりますが、両方とも分取クロマトグラフィーのアプローチです。[HPLCスケールの表Aを参照してください]

 

分離度*[Rs、選択性を参照してください]
2つのピークの分離は、それぞれの保持時間の差を平均ピーク幅で割った値で表されます。Rs=1.25は、幅が等しい2つのピークがベースライン分離していることを示します。 Rs=0.6の場合、クロマトグラム上に2つのピークが存在することを示す唯一の視覚的な兆候は、ピーク頂点付近の小さな谷間です。より高効率なカラムはよりシャープなピークを与え、難しい分離を改善します。しかしながら、分離度はNの平方根でしか増大しません。分離度を増大する最も効果的な方法は、クロマトグラフィー分離に使用する移動相/固定相の組み合わせを変更することによって選択性を増大させることです。[化学的分離力の項を参照してください]

 

保持係数*[k]
サンプル成分が移動相に存在する時間に相対する固定相に存在する時間。サンプル成分が移動相の速度でカラムを通り抜けるよりも、固定相によってどれだけ長く遅らせられるかを表します。数学的には、調整保持時間[容量]とホールドアップ時間[容量]の比になります。k=tR'/tM[保持時間および選択性を参照してください]
注:過去には、この用語は分配比、容量比、容量係数、質量分布比とも表現され、記号k'で表されました。


保持時間* [tR]
溶出開始[通常HPLCでは注入またはサンプル導入時]とピーク頂点の間の時間。調整保持時間tR'は、tRからホールドアップ時間[tM、全く保持しない分析対象成分の注入からピーク頂点の溶出までの時間]を引き算して計算されます。

 

逆相クロマトグラフィー*
移動相が固定相よりも非常に極性の高い液体クロマトグラフィーを用いた溶離方法。固定相の例として、表面にアルキル鎖を化学結合した多孔性シリカベース充てん剤があります。注:逆相の間違った表現は避けてください。[逆相分離のメカニズムにおける新しい考え方は参考文献4を参照してください]

 

選択性[分離係数、σ
分離システムを構成する移動相と固定相に対する、2つの分析対象成分の相対的な熱力学的親和力の違いの大きさを説明するための用語。適切な用語は分離係数[σ]です。保持係数の比、K2/K1[保持係数を参照してください]に等しく、定義上常に≥ 1になります。 σ=1の場合、2つのピークは共溶出し分離は得られません。これは分取クロマトグラフィーにおいてサンプル負荷量とスループットを最大化するために重要です。[化学的分離力の項を参照してください] 

 

感度* [S]
検出器に入る移動相中の物質の単位濃度または単位質量あたりのシグナル出力、例えば検量線の傾き。[検出器を参照してください]濃度感応性の検出器[例:UV/VIS吸収]では、感度はピーク高さ対ピークに含まれる分析対象成分濃度の比率です。質量流量感応性の検出器では、感度はピーク高さ対単一質量の比率です。感度が唯一の性能特性となる場合は、倍率ではなく化学測定プロセスのみに依存しなければなりません。分析対象成分の検出[同定]または測定[定量]する能力は、多くの機器および化学要因で決定されます。優れた検出器感度および特異性と同様に、高効率カラム[最大ピーク高さでピーク幅が狭く良好な対称性]を用いてピークを十分に分離[最大の選択性]して溶出することが理想的です。最大感度を得るためには、分離システムの干渉および電気・電子機器ノイズを最小にすることも必要です。

 

固相抽出[SPE]
小規模なクロマトグラフィーベッドを使用し、LCの原理を用いて分析対象成分を複雑なマトリックスから分離、濃縮、精製するサンプル前処理技術。オフラインSPEでは、大きな粒子を充てんしたプラスチックカートリッジやマイクロエリューションプレートのウェルに、加圧または減圧吸引を使用して溶液を流します。[マニュアルまたは自動]オンラインSPEでは、より高い圧力で小さな粒子を充てんした小型のHPLCカラムを使用し、必要に応じてSPEカラムから分析用HPLCカラムをオンラインに、または廃液のためにオフラインにバルブで切り替えます。 SPEメソッドは、充てん剤のコンディショニング、サンプルロード、洗浄、脱離ステップを行うためにステップグラジエント[グラジエントを参照してください]を使用します。通常、サンプルは重要な分析対象成分のk値ができるだけ高くなる条件でロードされるため、ロードおよび洗浄ステップの間は完全に保持されています。その後、より強い溶媒混合液に切り替えて脱離を行います。[溶離力を参照してください]目標は、マトリックス干渉を除去し、分析対象物をその後の分析に適した溶液中に濃縮した状態で分離することです。

 

スピード[カラム効率、流量、分離度を参照してください]
小容量で小さな粒子の分析カラム、または大容量で大きな粒子の分取カラムを用いて高線速度でLC分離を行う利点。 1972年に10μm粒子および6000psiで正確な移動相送液が可能なポンプ、1976年に500mL/分で使用可能な75-μm分取カラム、2004年にUPLCテクノロジーテクノロジー15000psiで使用可能な1.7μm粒子カラムの導入により、LCスピードは大きく進歩しました。 †
高速分析LCシステムは、送液中の高圧に適応するだけではいけません。短い注入サイクル時間、サンプル間におけるグラジエントミキサー内の迅速置換、溶出液成分のごくわずかな変化に迅速に反応する検出器センサー、幅の狭いピークの正確なプロットおよび定量に必要な毎秒12ポイントを取ることができるデータシステムが必要です。
より高い分離能、スピード、効率は更なるハイスループットを実現します。一日の就業時間内により多くのサンプルを分析することができます。 1分析または1プロセスあたり、より大量の化合物を精製できます。
†詳細は前述の参考文献リスト#3を参照してください。

 

固定相*
クロマトグラフィーシステムを構成する2つの相の1つ。固体、ゲル、または液体を使用します。液体の場合は固体に分布させます。この固体は分離プロセスに寄与する場合としない場合があります。また、液体は固体に化学結合[結合相]、または固体に固定[固定化相]されることもあります。
クロマトグラフィーベッドまたは充てん剤という表現は、固定相に使用されるさまざまな形式の何れかを示す一般的な用語として使用されています。
LCの移動相を示す用語として液相を使用することは推奨しません。これは固定相を液相と呼ぶガスクロマトグラフィーとの混同をさけるためです。[ほとんどの場合、液体が固体担体をコーティングしています]オープンカラム液液分配クロマトグラフィー[LLC]はHPLCにうまく移行することができず、官能基結合型充てん剤に取って代わられました。 LLCは、固定相の液体コーティングが固体担体からブリードし、それによって混和性のない液体移動相を汚染する問題があるため、最新の検出器に適合しないことが分かっています。

 

UPLC® テクノロジー
2μm以下の粒子および非常に高い使用圧力に適応するようにトータル設計された高効率LCシステムは、ultra-performance liquid chromatography[UPLC]と呼ばれます。† このテクノロジーの主要な利点は、HPLCを上回る分離能の向上、または既存のHPLC分析と同じ分離能で分析時間を短縮できることです。
†詳細はこちら: https://www.waters.com/uplc

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