株式会社テクノスルガ・ラボ様



株式会社テクノスルガ・ラボ様 
技術部課長 工学博士 國弘 忠生 様にお話を
伺いました。

 

―本日はお忙しい中ありがとうございます。まず、國弘様のお仕事内容についてお聞かせください。

國弘様(以下敬称略):普段私がやっているのは微生物の同定のためのバイオマーカーの測定や腸内環境分析として、胆汁酸や短鎖脂肪酸の分析を進めています。あとはお客様の要望に応えて、新しい測定メソッドを開発し、受託分析も行っています。

―どういったお客様からの依頼が多いですか。

國弘:今は大学の先生や病院の先生、一般企業様です。

 

―特定の分野からの依頼が多いということはありますか。

 國弘:今は腸内環境に関係した依頼が多く2015年に比べると、3倍ぐらいに増えています。 腸内フローラブームと併せて、腸内の代謝物の測定も増えている状態です。

 

―お客様は御社のどのような点を強みと考えて分析を依頼されるのでしょう?

國弘:当社だと糞便の検体を送っていただくだけで、腸内フローラの構造解析とその代謝物の両方の分析結果を出すことができます。他社だと、腸内フローラの構造だけ、もしくは代謝物の測定のみという所が多いですが、同時に受託分析しているところが強みです。

 

―今回、キノンの分析に弊社の製品を使用していただいているということですが、まずはキノン分析の背景を簡単にお聞かせください。

國弘:今回分析するキノンですが、キノンは腸内細菌の代謝物であると同時に腸内細菌の構成物質の一つとなっていて、一般的にビタミンKと呼ばれるものを含みます。そのキノンを分析することで、腸内細菌の働きを評価することを目的としています。

今までだと微生物の定性的な群集構造解析のためにキノンプロファイルを使用してきましたが、今回の腸内環境の評価に向けたキノンの分析は、定量的な測定を行うことで腸内フローラと人の健康の関係に関する今後の研究の発展につながるように進めています。

私自身も学生時代からキノンを指標とした微生物の群集構造解析の経験があり、それを腸内環境の分析に応用する形で、昔からの情報と知識、経験を生かしています。Tof (Xevo G2-S) を使用してキノン分析の検討を開始した際にCORTECS T3カラムを紹介されました。BEH C18 でも測れるのは前から分かっていましたが、極性が高く、保持時間が短い化合物の分離に課題がありました。このカラムは極性化合物の保持が強みということで採用してみました。

 

―ありがとうございます。
T3カラムは、官能基はC18 ですが、官能基密度や結合方法、エンドキャッピングを工夫することで高極性化合物の保持に適したデザインになっています。今回の分析のように高極性から低極性まで幅広い極性の化合物を分析するのに採用される方も多いです。

國弘:そうですね、環境サンプルなどの未知のサンプルだと何が含まれているのか推定するのが難く、網羅的に測りたいといったときに、やはり分離が重要になってきます。夾雑物との分離がPDA 検出では絶対に必要ですし、MS で測るときもなるべく他の夾雑物由来のピークは排除したいというのもあります。長らく他社カラムを使用していたのですが、今回CORTECS T3 が分離の向上や背圧の低減、分析時間の短縮につながるかと思い検討してみたところです。

 

―ありがとうございます。
CORTECS T3 は粒子の表面のみに細孔が存在する、表面多孔性の充塡剤を採用しており、分離度の向上や分析の高速化のために設計されたカラムです。実際に使用してみて、いかがでしたでしょうか?

國弘:実際のところ、課題としていた前半部分の夾雑物との分離も改善でき、今後の条件検討でさらに良い結果が期待できるといったところです。後半のピーク形状や保持時間も改善でき、流速も上げられるということで、さらなる改善の可能性があると感じています。他社からもいろいろな分離カラム、陽イオン交換のカラム、マルチモードカラムなどが出ている中で、感度を上げつつ、分離もよくしたいという要望に対して、このCORTECS T3 は良いチョイスだったと思っています。

―ありがとうございます。
逆相カラムですと、弊社ではファーストチョイスとしてBEH C18 を紹介していますが、BEH C18 と今使用していただいているCORTECS T3 の使い分けはございますでしょうか。

 

國弘:今のところ使い分けはしていません。
ただ、胆汁酸の分析は今、BEHのC18 を使用しているのですが、そちらの分離が一部不十分なところがあります。今回CORTECS T3 を採用することで分離が改善したので、この分析にも試してみたいと考えています。水系100%でも使えるので、恐らく胆汁酸の分析でも使えると思います。そういう意味でT3 のカラムに代えると、もっとよくなりそうだなという感触があります。

―ありがとうございます。T3 カラムは水系100%の移動相条件でもDewetting が少なく、安定して分析することができます。またBEH はどちらかというと、意図的に保持をあまり強くしていないタイプのカラムなので、保持が必要なものはT3 が得意です。ただT3 とBEH C18 では分離パターンが異なり、BEH は幅広いpH レンジでの分析にも適用できます。

―Xevo G2-S をお使いいただいていますが、使用感についてはいかがでしょう?

國弘:堅牢で非常にメンテナンスが楽だと感じています。

 

―装置開発において感度向上は常に重視しているのですが、ぎりぎりの感度を追い求めて他を犠牲にするよりも他の良いところを伸ばすほうがお客さんにとってメリットが大きいとも考えています。例えば、ウォーターズでは汚れにくさを重視しており、その場で良いデータが出ても、すぐ汚れるのでは日常的にメンテナンスが大変になるので、今使用されている高性能MS も小型のMS も、全て汚れに強いことを重視しています。

國弘:メンテナンスが少ないことのメリットは大きいです。受託分析をしていると、装置を止めなければならないというのは、クライアントへの報告を考えると大きな課題の一つです。LC だけではなくGC も使ってはいるのですが、注入口のメンテナンスをしようとすると、1回システムを落とさなくてはいけなく、落とすとリークチェックに数時間、場合によっては1日かかってしまいます。そういったメンテナンスがウォーターズのシステムだとサンプルコーンの洗浄ぐらいで運用でき、そのサンプルコーンも頻度高く洗浄せずとも運用できているという事を考えると大変有難いシステムです。実際、胆汁酸の分析をした後に、そのまま別のサンプルを注入して試験を行っても問題なく活用出来ています。

 

―そのご意見はうれしい限りですね。

國弘:学会等でも時々話をするのですが、御社のStepWave の構造が汚れに強く、堅牢だという話はよく聞きます。

 

―StepWave は、イオン化されたイオンのみを検出器まで持っていこうという事を考えられたイオン輸送系デバイスです。StepWave の前段において、ZSpray イオン源により堅牢性を維持できる構造になっていますが、StepWave 自体でもイオンになっていないものは、質量分析計内部を汚さないよう廃棄される仕組みで、より高感度に分析できるように工夫されたデザインです。

國弘:なので、私はXevo ファミリーのXevo G2-S QTof もXevo TQ-XS も気に入って活用しています。

 

―ありがとうございます。メンテナンスを頻繁に行うのは大変ですし、頻度が少ないという事は様々なコスト削減にもつながると思います。

國弘:そうですね。装置のメンテナンスに時間がかかってしまうと、それだけ受託分析ができなくなるのでその分マイナスになります。よって、メンテナンスフリーで測定を続けられるのは非常に助かります。今後も同じ装置を買いたいと思います。

―ありがとうございます。

國弘:また、今回のようにカラムセレクターが付いている装置だと、こういった検討をするとき、帰る前にカラムセレクターのプログラムをしかけて帰るだけですので、そこは楽で非常に助かっています。

 

―システムをフル活用していただいており、私たちもうれしいです。

國弘:ウォーターズ製品のマニュアルに推奨パラメーターの記載がありますが、あれも助かります。今、装置を扱っている人員が少なく、他の装置もあるのでなかなかQTof やタンデム四重極型MS まではいかないです。特に検討となったときに、高価な装置なので、皆さん壊れることを恐れています。「このパラメーターで分析して」と言ったら大丈夫ですが、パラメーターの検討となると抵抗があります。トレーニングのときも、「このパラメーターはこちらがお勧めですよ」というアドバイスもしてくれているので、それがいまだに役立っています。その辺りのきめ細かいサポートは本当に助かっています。今回の条件の下半分の設定は、お勧めの設定で分析しているぐらいです。

―ご活用ありがとうございます。

國弘:今の新型MS システムには、新イオン源のUniSpray を活用できると伺っていますが?


―ESI、APCI、APPI のどのイオン化よりも概ね優れたイオン化効率を生み出してくれるのがUniSpray で、分析法開発には
お奨めです。

 

國弘:受託分析の状況に応じて、適応できるサンプルも想定できるので、今後検討をしようかと考えています。

 

―その他にカラムに関して何かコメントなどございますか?

國弘:ウォーターズ製のカラムだと、eCord を便利だと感じています。カラムに取り付けられており、インジェクション回数等の情報が記入されているので助かります。

―ありがとうございます。eCord にはカラムの使用状況や、製造時の品質管理情報などが保存されており、複数の装置で同じカラムを使用する際の使用履歴の管理にeCord が便利という話はよく聞きます。

 

國弘:eCord があれば、注入回数を記録しなくてよいですが、普通のカラムを使っていると、毎回書かないといけなくなります。ウォーターズ製ですとeCord をUPLC に接続するだけで履歴が残ります。何回打ったかが分かれば、交換頻度も決められるし、交換頻度が分かれば、それを原価計算に乗せることもできます。

 

―ありがとうございます。そのような面でもご活用いただき嬉しいです。

國弘:ソフトウェアのMassLynx について、解析のソフトウェアの部分で、インポート、エクスポートがもう少し簡単にできないかと考えています。

―それは、分析化合物のリストをお作りになっていて、それをMassLynx のサンプルリストに入れて実行すると言ったようなこと
でしょうか。

國弘:はい、そうです。今はそれを手入力しています。TargetLynx 上の設定のところにタグが幾つもあり、それを切り替えて入力しています。化合物の数が増えれば増えるほど大変な作業になるので、インポートが楽になれば助かります。

―数が少ない分析にはあまり問題はないかもしれませんが、数が多い時は課題になりますよね。ソフトウェアで解決できますので、お時間のあるときに設定の機会を下さいますようお願いします。

 

―今後の戦略や方針についてお聞かせください。
腸内の微生物同定とその代謝物分析が強みとのことでしたが、今後その分野をどのように伸ばしていこうと考えていますか?

國弘:今のところ、バクテリアの腸内フローラ解析と代謝物解析という2つの分析がそれぞれ独立して動いています。これらを将来的には統合していきたいと考えています。そういった解析等は一部の企業では進められているとは思いますが、結局のところ腸内フローラは、バクテリアが出した代謝物が人に吸収されることで人の健康に影響を与えています。その代謝物とバクテリアをもう少しつなげていくのが重要になってきます。

結局そこにバクテリアが存在すると言っても、どういった能力を持っているのか分からないことも多いです。キノン遺伝子を見れば、少しは分かりますが、実際に産生された代謝物自身も重要になってきます。ただ、代謝物だけを測ってもどこから出てきたのかわからないので、エビデンスとしてはバクテリアの存在と代謝物の両方を見ていくことにより確実性が上がるというところで、両方を組み合わせた解析等を進めていきたいと思っています。

 

―複雑で精密な分析になると思いますが、やはりある程度の装置を持っているかどうかが重要な部分もありますか?

國弘:そうですね。他にもノウハウ等も必要になってくると思います。群集構造の解析と代謝物分析の両方をやっている会社もありますが、当社だと微生物の同定がベースになるので、解析した後この微生物を分離したいという要望があればそれに向けて注力することもできます。また、解析した結果、こういう微生物が出てきた、どういったバックグラウンドの情報があるのかと言われたときに、更なる情報を提供することもできます。

 

―弊社にお手伝いできることがございましたら是非ともご相談ください。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 


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