田辺三菱製薬株式会社
研究本部 薬物動態研究所の
加藤望様にお話を伺いました。
―今日は ACQUITY UPLC についてお話を聞かせていただきます。よろしくお願いします。
よろしくお願いします
―まず、加藤様のほうでACQUITY UPLCという製品名・技術名をお聞きになった時の事をお伺いしたいのですが。どのようにしてお知りになったのでしょうか?
MSユーザーズフォーラムに参加したときに、UPLCについて知りました。その時点ですでにウォーターズ製品(Quattro micro とQ-Tof)を持っていたので、おお!いいじゃないかと。
―UPLCは、ほとんどMSインレットとしてお使いだと思うのですが、PDA検出器もよくお使いになりますか?代謝物を分離分析する時に使っています。代謝物がたくさんでき、分離が必要な場合に単独でMSとは繋がずに、一度LCのみで実施してUVで確認するというような形にしています。
―UPLCをお選びになった理由はやはりサンプル処理数がたくさんこなせることだったのでしょうか?それとも感度ですか?両方といえば両方ですけれども、ピークはシャープになりますし感度が上昇するというところにいちばん惹かれました。スピードはMS/MSを使う場合は、流速を上げるとある程度の高速化が可能なので、そんなに重きを置いておりません。むしろその分離能の高さと感度の上昇を狙ってということです。
―薬物動態のご研究ということなので、基本的には定量が多いのでしょうか?そうですね。他に代謝物の分離分析があります。
―使用頻度と検体処理数はどれくらいですか?使用頻度は、ほぼ毎日使わせていただいています。96wellプレートではなく バイアル で実施しています。そういう意味ではあまり数をこなしておらず、いわゆるUPLCのスピードを上手く活用できていないのですが、今ちょうど検討しようとしています。導入時は96wellも検討しようと思い、ゴムシートの使用を検討しましたが使えませんでした。その当時、ステンレスニードルがまだ出ていなかったので。確認なのですが、サンプルオーガナイザを使えばスループットは当然あがりますよね?
―そうですね。サンプルオーガナイザを使えば更に多検体の連続分析が可能ですね。
自動的にプレートを変えてくれるのですか?
―何番はどのプレートっていうのをソフトウェアのほうで設定して、それを選んで、そのプレートの何番のどれを何回打つっていうのをプログラムしていくだけです。
ありがとうございます。
―もう少しUPLCの良いと思われる点を教えていただけますか?私は分離能だと思っていますね。スピードを保ちつつ分離能が出せる、高圧に耐えられる所がいちばん良いところだと思います。代謝物を分離する仕事が結構多いので、その時に普通のLCだと30分~40分の分析時間が必要な時もありますが、UPLCを使えば長くても10分くらいで同等以上の分離が可能となりますので、その辺はかなりありがたいなと思っています。他のユーザーの方もですが、この装置(UPLC)を使ってしまうと、もとの装置には戻れないと皆が言いますね。
―それは私も同感です。現在、主に使っていらっしゃるカラムはどのサイズですか?
基本的にはBEHのC18、2.1×5cmと10cmですが、代謝物の分離は10cmを用いています。あと、僕は個人的に好きなのは、CYP代謝物関連のものを計る時に用いるHSSのT3ですね。
―その場合、極性化合物をちゃんと保持しますか?
そうですね。この前も他のユーザーさんとお話をしましたが、きちんとアセトアミノフェンを保持してくれます。培地中のサンプルを分析する場合、アセトアミノフェンの分子量は、夾雑ピークと重なり易く、イオンサプレッションの影響を受けてしまいます。しかし,HSS T3を用いれば、きちんと保持して分離が出来るという点で、すごく重宝しています。
―以前使われていたLCのカラムとピークの順番が変わったりすることはありますか?
CYP関連に関してはそんなことはありませんでした。CYP関連は結局Atlantisで測定していたものを同様の性質を持つHSS T3 に替えましたので、あんまり変わらないのだと思います。
―ちなみにシステム圧力は今どの位の高さで運転されているかご存知ですか?
流速は0.5mL/分で5cmであれば、おおよそ5000 ~ 6000 psi位の間かなと思っていますが。
―10cmだともっと高いですよね?
高いです。10cmだと最初の時点でおおよそ8000psi位ですかね。
―例えば従来のLCやアライアンスなどは5000psi位が限界なわけですよね。それをいきなり12000とか15000psiでも運転するので、それに対して不安に思われたりすることはないのかなと。
それは、ないとは言えません。ただ、以前は結構 (フェラルを) 力いっぱい締めていましたが、UPLCの場合は、そんなことを気にしなくてよいという嬉しさがあります。
―UPLCにはHPLCカラムをつけてHPLCとして使えるのですが、お使いになることはありますか?
ありましたね。特にHSS T3 が出る前は、コンベンショナルなAtlantisを使っていました。他のカラムを使う事もありましたが、最初のうちだけでしたね。今はほとんどUPLC専用カラムを使っています。
―現在カラムの品揃えではC18とRPとC8、PhenylとHSSとHILICがあるんですけど、それ以外にもこれがあったらとかいうカラムはありますか?
いまの所は不自由していません。色々種類があった方が良いとは思いますが、薬物動態の定量分析であれば問題なくやっています。個人的に僕は満足しています。
―今お使いなのは2.1mm内径ですよね?細くなるとその分濃縮されるので、1mm径を使ってLC/MS/MSで更なる高感度化は必要ないですか?
やろうと思っています。
―ソフトウェアとMSのお話もお聞きしたいのですが、まず Empowerソフトウェア について何かコメントはありますか?
他社の装置も同様であると思いますが、解析履歴および変更履歴が残り、GLP対応である点は良いと思います。データの解析は、MassLynx と比べると複雑な所はありますが、他社と比べると非常に使いやすいと思っています。
― Quattro Premier (ウォーターズのタンデム四重極型MS) のここが良いなと思うところありますか?
スキャンスピードが速いのが他社と区別出来るところとかなと思っています。カクテルで分析をすることが結構あるので、ふつう数が5、6種だと思いますが、Quattro Premierだと10種類の同時分析が容易であると思っています。そういう意味ではスループットが上がりますし、分析時間も速くなります。かつ分離にUPLCを用いればイオンサプレッションも起こりにくいので、僕は満足しています。ちょっと褒めすぎかもしれませんが。さらに言えばサービスの方の迅速かつ手厚いケアが、僕のウォーターズを薦めている一番の理由です。
―ありがとうございます。ポジネガ切り替えはお使いになりますか?
使っていますね。それはCYP代謝物で測定するときはネガティブでしかイオン化しないものがありますので、1回で分析したいというときに有用だと思います。スキャンスピードの速さが、このことを可能にしていますね。
―あと、UPLCのハード、ソフト、カラム全部含めて、こうなったらいいなとかこれが足りないとかそういうことはありますか?
現状で、すでに出来るのかもしれませんが、カラムスイッチングが出来ればと。
―先日お問い合わせいただいたので今日資料を持ってきました。20,000PSIの高耐圧バルブをつけて使うことができます。LCポンプを接続した構成をご紹介しますね。あとは何かございますか?
そうですね、後は装置というよりも部品。96wellプレートで容量が350uLまでのものはありますが,さらに用量の少ないウェルプレートで、微量サンプルでもちゃんと吸えるような径のプレートがあればいいな、と。
―ウエル容量そのものは大きくなるのですが最小残存量がより少ないプレートが出ています。あとはクロマトメーカーとかMSメーカーに今後期待することとか、こんな風になったら良いなとか、ご要望はございますか?
今は現状に満足しています。定性に関しては、各質量分析メーカーが新規装置を続々と出されており、非常に期待しております。御社(ウォーターズ)は SYNAPT HDMS を出されており、他社とは違ってUPLCとともに、目的物質の分離技術において先んじておられる点が、非常に興味をそそられています。一つ希望するならば、SYNAPTの定量器が出ればなあと思っております。話は重なりますが、定量って言う意味であればZ-spray(汚れにくい)でかつより高感度なMS/MS製品がウォーターズから出ればいいなって、ウォーターズを好きな方達は思っていると思います。
―今日はお忙しいところどうもありがとうございました。
担当者コメント:
製薬の薬物動態研究のお客様には広くお使いいただいている ACQUITY UPLC ですが、今年はウォーターズだけでなく他メーカーのMS検出器にもインレットとしてご利用いただくケースがとても増えました。UPLCテクノロジーはMS検出器の性能を生かし、高感度化や高速化に貢献します。加藤様にはさらなる高感度化とあわせて高分離能化にも取り組んでいただけるのではないかと期待させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。