陰イオン交換クロマトグラフィーによるヘパリンナトリウムの不純物混入評価
ヘパリンは、グリコサミノグリカンと呼ばれる直鎖陰イオン性のムコ多糖の鎖長の異なる成分から成る群で、抗凝血機能を有することを特徴とし、多数の重要な生体内作用に関与していることが知られています。ヘパリンおよびその誘導体である低分子量ヘパリン(LMWH)は、何十年も前から、手術および人工透析中の抗凝血剤として臨床で広く用いられてきました。
不純物の混入したヘパリンが関与した深刻な作用および死を取り上げた最新の報告書を受けて、米国薬局方(USP)が、ヘパリンナトリウムのモノグラフを改訂しました。好ましくない臨床の症例に関与していた不純物は、過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)です。第2弾のモノグラフ改訂は2009年10月に発表されました。モノグラフでの推奨事項を受けて、ウォーターズは、ヘパリンナトリウム中に混入した過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)分離に用いるイオン交換メソッドを開発しました。
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イオンペアLC/MSによるヘパリン由来のオリゴ糖分析
ヘパリンには、抗凝血機能以外にも、複数の生体内での働きがあります。たとえば、ヘパリンオリゴ糖構造は、炎症、アルツハイマー病、癌といった疾患を仲介する働きがあることがわかっており、新薬の開発で注目されています。ヘパリンは、その医学的・生物学的重要性にもかかわらず、化学的構造についてはまだあまり解析が進んでいません。ヘパリンには化学的ヘテロが存在し、構造が複雑であることが、構造特性の解明が立ち遅れている大きな原因と考えられます。
ヘパリンやヘパリンオリゴマーは、極性が高く構造が多様で、硫酸塩特有の不安定性があるために、これまでのクロマトグラフィーおよび質量分析テクニックでは、その分析には限界がありました。しかし、イオンペア逆相UPLCとエレクトロスプレーイオン化法による四重極飛行時間型質量分析(IPRP-UPLC / ESI-QTof MS)の組み合わせを用いた、ヘパリンオリゴ糖の迅速な分析メソッドが開発されました。このメソッドを用いれば、UPLC分離のパフォーマンス特性やMSデータの質を犠牲にすることなく、IPRP-UPLCとESI-MSの効率的なオンラインカップリングができます。
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