1.液晶ディスプレイの仕組み
液晶とは、液体でありながら結晶性有する有機材料です。液体と固体の相転移における中間的な状態で、流動性を有し、同時に、結晶性(分子の向き・位置)の秩序を有しています。テレビや携帯電話などの液晶ディスプレイ(LCD)の表示材料として利用されています。
液晶ディスプレイに使われる液晶材料は細長い棒状の分子構造で,光学異方性(複屈折),誘電率異方性などの異方性を有しています。この液晶を,細かい溝のある2枚の配向膜で挟むと,液晶分子は配向膜の溝に沿って並びます。この2枚の配向膜の溝が直交するように配置すると、液晶分子はねじれるように配列します。
液晶パネルでは,配向膜で挟まれた液晶層が、透過光の振動方向の異なる2枚のPVA偏光フィルムで挟まれています。バックライトからの光は360°全方向に振動していますが、偏光フィルムを通過することにより、一定方向の光のみが液晶層に入射されます。
液晶分子は90°ねじれて配列している状態では、入射光もそれに沿って徐々にねじれるため、2枚目の偏光フィルムを透過することができます。それに対し、液晶分子に電圧を印加すると,液晶分子は向きを変え、電界方向に沿って配列します。そのため、入射光は直進し、2枚目の偏光フィルムで遮断されます。このように電圧のオン/オフにより、液晶材料の配向が制御され、バックライトからの光のオン/オフによる表示の切り替えが可能となります。
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2. 液晶材料の事例
液晶材料は、棒状や円盤状の形状で、分子の長軸が同一方向に揃った構造を有しています。単一成分では、室温下で固体の材料を混合し、凝固点効果により液状化させるため、混合する原料の組合せや比率などが供給メーカーのノウハウとなっています。また、液晶ディスプレイでは、エステル系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系などの母材に複数の別の液晶材料を混合して性能の向上が計られています。
- 電圧 駆動電圧を小さくし消費電力を減少させる
- 温度 低温から高温まで安定して使用できる温度範囲を広げる
- 粘度 動画用など応答性の向上
- 屈折率 色調を調整して、鮮やかな白を得る
- 弾性 電圧を掛けた際の立ち上がり特性を改善し、高いコントラストを得る
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液晶材料の構造事例
3. 液晶材料の品質評価
ディスプレイ製造または、開発において、液晶材料の品質管理、長寿命化、安全性などの観点から材料中の不純物の把握および管理、さらには、加速劣化試験において生成する劣化要因成分の特定および管理は極めて重要です。液晶材料の品質管理、分析には、その目的や材料に応じて、HPLCおよびGCが一般的に用いられています。しかしながら、材料の沸点などの問題から、GC法では分離の鍵となるカラム選択の幅が狭く、異性体分離などに課題があります。また、HPLC法では、GC法に比べ、分離能が低く、微小成分の見落としなどが懸念されます。
分離能の高いUPLCのテクノロジーと高分解能質量分析計Xevo G2-XS QTof MSを用いることにより、より高品質な液晶材料の分離分析が可能になります。UPLCテクノロジーは、短時間で主となる複数の液晶材料の分離を可能とし、さらには、微小成分をも分離します。さらに、網羅的な高感度検出を特長とする飛行時間型質量分析計と併用することにより、加速劣化試験前後において、微小な差異成分を視覚的に容易に特定し、さらに、その差異成分の組成式の情報が得られます。さらにMS/MSスペクトルから、断片構造(プロダクトイオン)の組成解析を実行し、構造を推定し、MassFragmentソフトウェアにより推定構造を検証します。
- UV照射による加速劣化試験
- 加熱による加速劣化試験
- 電気抵抗に関わる試験
機器分析による品質評価へのアプローチ
加速劣化前後における差異分析
不純物プロファイリング
→UPLC H-Class/Xevo G2-XS Qtof MS
- 高速高分離測定
- スキャンスピード
- 分解能
- 長時間の精密質量安定性
- ESCiプローブ
→UPC2
→分取SFC
- 異性体分離
- 目的化合物の工業レベルでの分取、精製
- 微量不純物の大量分取
- エバポレーション作業の効率化
4. UPLC/Xevo G2-XS Qtof MSを用いた液晶材料の分析事例
液晶材料の分離分析事例
UPLCテクノロジーを活用することで、類似構造の液晶材料を短時間で高分離に測定できます。合成不純物や劣化生成物などの複雑なサンプルにおいても高いスループットでの分析を可能にします。
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液晶材料における組成解析結果の事例
ウォーターズ独自の組成解析機能を用いたMSスペクトルからの組成演算結果。極めて高い精密質量精度と安定同位体のスペクトル情報を利用したi-Fit(ウォーターズ独自のアルゴリズム)により、検出スペクトルから信頼性の高い組成候補を導き出します。
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液晶材料のMS/MSスペクトルの事例
Xevo G2-XS QTofシステムによるMS/MS測定では、分子構造に由来したプロダクトイオンを高精度かつ高感度に測定することが可能です。プロダクトイオンスペクトルについても精密質量と安定同位体のスペクトル情報から信頼性の高い組成解析結果を得ることができます。
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MS/MSスペクトルにおけるプロダクトイオンの組成解析事例
Xevo G2-XS QTofシステムによるMS/MS測定では、分子構造に由来したプロダクトイオンを高精度かつ高感度に測定することが可MS/MSスペクトルでは、プロダクトイオンについて一斉に組成演算を実施できます。これにより主要なプロダクトイオン間でどのような脱離が起きているのかを視覚的に確認することができるため、構造解析において有効です。
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構造支援ソフトウェアMassFragmentの事例
MassFragmentソフトウェアにより、MS/MSスペクトルにおける推定構造について検証することが可能となります。推定構造の断片構造の帰属に矛盾がある場合には、官能基などの構造位置や、骨格を見直し、修正した上で、再度MassFragmentによる検証を行います。
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液晶材料の研究開発、プロセス管理におけるウォーターズのソリューション 
UPLC/Xevo G2-XS QTof MS (UPLC/四重極・飛行時間型質量分析計)
- IntelliStartによるオートキャリブレーション機能
- LockSpray機能による長時間高精度精密質量測定
- i-Fitによる高精度の組成解析
- 超高速高分離LCに最適
- Quan Tofテクノロジーによる高選択性定量
- ESCi,APCI/APPI,ASAP,APGCに対応
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