このアプリケーションノートでは、チリオレオレジン中の一般的なスーダン色素の測定に適した固相抽出(SPE)ベースの分析法を紹介します。また、このアプリケーションノートでは、2.7 µm の粒子を充塡したソリッドコア分析カラムを使用した液体クロマトグラフィーについても紹介します。この種類のカラムは、より低い背圧で効率的な分離が可能であり、HPLC および UPLC システムの両方に互換性があります。
スーダン色素は、ロウ、オイル、溶剤、プラスチックに色を付けるために使用される、水不溶性のジアゾ複合体の一種です。これらの色素の多くは、単独でまたは混合することで、赤トウガラシに見られる天然の有色化合物と非常によく似た色を呈します(2 つの重要なトウガラシの色化合物の構造を図 1 に示しています)。残念なことに、トウガラシベースの製品の色を強めるために、発がん性の可能性があるスーダン色素が使用されることがあります。このような使用は法律で禁止されており、食品中にスーダン色素が存在することは、量の多寡を問わず、許可されていません。そのため、一般的なトウガラシ製品中のスーダン色素を測定するための、高感度で再現性の高い分析法が開発されました。ただし、チリオレオレジンは、新鮮なトウガラシやトウガラシ粉末と比較して、はるかに複雑なサンプルマトリックスです。チリオレオレジンは、トウガラシから抽出された天然油と樹脂の高濃縮混合物です。食品業界では、強力な香味剤および強力な着色剤としての両方の用途で使用されています。また、医薬品やペッパースプレー中のカプサイシン源としても使用されます。オレオレジンは食品着色剤として使用されるため、この製品中の違法色素を検出するための効果的な分析法が必要になります。このアプリケーションノートでは、チリオレオレジン中の一般的なスーダン色素の測定に適した固相抽出(SPE)ベースの分析法を紹介します。また、このアプリケーションノートでは、2.7 µm の粒子を充塡したソリッドコア分析カラムを使用した液体クロマトグラフィーについても紹介します。この種類のカラムは、より低い背圧で効率的な分離が可能であり、HPLC および UPLC システムの両方に互換性があります。この試験で使用した色素の構造を図 2 に示します。
チリオレオレジン(トウガラシ)は市販品を入手しました。このオレオジンサンプル 0.1 g を 1 mL のヘキサンに溶解しました。Sep-Pak シリカカートリッジ(6 cc、500 mg、製品番号 WAT043400)を 3 mL のヘキサンでプレコンディショニングして、希釈したサンプルをロードしました。カートリッジを 2 mL のヘキサンで洗浄してから、2 mL の 5:95 アセトニトリル/ジクロロメタンで溶出しました。溶出液を蒸発乾固させて、150 µL のメタノールに再溶解しました。固相抽出(SPE)には真空マニホールドを使用し、すべてのステップにおいて、最低限の真空を用いて流速 2 mL/分でカートリッジを通過させました。
LC システム: |
ACQUITY UPLC H-Class |
カラム: |
CORTECS C18、2.7 µm、2.1 × 100 mm(製品番号 186007400) |
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸含有メタノール溶液 |
注入量: |
5 µL |
注入モード: |
パーシャルループ注入 |
カラム温度: |
45 ℃ |
弱ニードル洗浄溶媒: |
10:90 メタノール:水(600 µL) |
強ニードル洗浄溶媒: |
メタノール(200 µL) |
シール洗浄溶媒: |
10:90 アセトニトリル:水 |
流速: |
0.40 mL/分 |
時間 |
%A |
%B |
%C |
---|---|---|---|
初期条件 |
80 |
10 |
10 |
0.5 |
40 |
30 |
30 |
5.0 |
0 |
50 |
50 |
9.0 |
0 |
50 |
50 |
9.1 |
80 |
10 |
10 |
12.0 |
80 |
10 |
10 |
質量分析計: |
Xevo TQD |
イオン化モード: |
エレクトロスプレーポジティブ |
イオン源温度: |
150 ℃ |
脱溶媒温度: |
500 ℃ |
脱溶媒ガス流量: |
1,000 L/時間 |
コーンガス流量: |
30 L/時間 |
コリジョンガス流量: |
0.15 mL/分 |
データ管理: |
MassLynx v4.1 |
結果は表 2 に示されています。この試験で測定したスーダン色素には、フェノール類(スーダン I など)、ポリフェノール類(スーダンオレンジ G)、アミン類(スーダンブラックなど)が含まれます。Sep-Pak シリカカートリッジは 10 種類の対象分析種の色素すべてを効果的に保持できるため、固相抽出(SPE)クリーンアップ用に Sep-Pak シリカカートリッジを選択しました。回収率は一般的に 75 ~ 100% の範囲でしたが、ポリフェノール類のスーダンオレンジ G の回収率は約 50% でした。この化合物は、他の色素と比較して、シリカ固相抽出(SPE)カートリッジにより強く保持されます。溶出量を増やすか、溶出溶媒中のアセトニトリルの割合を増やすと、この化合物の回収率が改善されます。ただし、これらのステップのいずれでも、クリーンアップが大幅に低下し、高度に着色したマトリックス化合物が最終抽出物中に多く見られるようになりました。図 3 に、得られたクリーンアップを示します。左のバイアルは、固相抽出(SPE)前のヘキサンに溶解した 1.0 mL サンプルの 150 µL のアリコートを示しています。右のバイアルは、固相抽出(SPE)後に 150 µL のメタノールに再溶解したものを示しています。固相抽出(SPE)プロトコルにより、抽出物が明らかにきれいになるだけでなく、抽出物が約 7 倍濃縮されました。
CORTECS 2.7 µm ソリッドコアパーティクルカラムにより、優れたクロマトグラフィー性能が得られ、サンプルマトリックス中での 200 回を超える注入にわたって、性能が一貫していました。図 4 は、100 ng/g(ppb)になるようにスパイクしたサンプルの代表的な分析を示しています。分析は ACQUITY UPLC H-Class システムで実行しました。このシステムは、UPLC の圧力および流速の面だけでなく、この試験で使用した HPLC 条件下でも優れた性能が発揮できるように設計されています。この試験で観察されたカラム背圧は約 3100 psi であったため、圧力上限が 4000 psi 以上である従来の HPLC 装置でこの分析を問題なく行うことができます。真の UPLC 性能を求める場合は、CORTECS C18、1.6 µm ソリッドコアカラムに分離を移管できます。
720005070JA、2014 年 6 月