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Andrew+ ピペッティングロボットを使用したヒト尿中の EtG および EtS の定量のための自動ハイスループットサンプル前処理および UPLC-MS/MS 分析

Andrew+ ピペッティングロボットを使用したヒト尿中の EtG および EtS の定量のための自動ハイスループットサンプル前処理および UPLC-MS/MS 分析

  • Sarah Dunne
  • Danielle Cullen
  • Waters Corporation

法中毒学目的のみに使用してください。




Andrew+ ピペッティングロボットについてもっと詳しく知りたいですか?

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要約

本研究では、Andrew Alliance の Andrew+ ピペッティングロボットを使用して、自動化された簡単な直接希釈注入によるサンプル前処理法を実証します。Andrew+ で開発したメソッドにより、バイオマーカーであるエチルグルクロニド(EtG)と硫酸水素エチル(EtS)をサンプル前処理します。実験実施時のプロトコルの各ステップで、Andrew+ は OneLab の指示を実行し、使用する実験器具および Bluetooth ピペットで必要なパラメーターを設定します。OneLab は、メソッドの作成と移管において非常に利用し易く、使用法も簡単です。

サンプルの同定と定量は、ACQUITY UPLC CSH Phenyl-Hexyl カラム(製品番号:186005408)を使用して、ACQUITY UPLC I-Class(FTN)システムおよび Xevo TQD 質量分析計で行います。

アプリケーションのメリット

  • 簡単な直接希釈注入によるサンプル前処理法
  • 自動化メソッドの移管性 – 手動前処理と同等の結果
  • 96 ウェルフォーマットでよりハイスループットに
  • 効率の向上 – 自動ピペッティングにより、分析者の時間を有効活用できるように
  • ヒューマンエラーの可能性を低減
  • OneLab ソフトウェアの簡単な操作でメソッドを作成・変更

はじめに

エチルグルクロニド(EtG)とエチル硫酸(EtS)は、アルコール摂取をモニターするための重要なバイオマーカーです。エタノール摂取のバイオマーカーとしての EtG および EtS の同定および定量が、さまざまな試験目的で行われています。アルコールの乱用は、多くの文化圏において広く蔓延しており、世界的に健康や社会問題における大きな負担の一因となっていることから、これらの代謝物の検出が有用であることが分かっています。その結果、エタノール使用の検出と同定に対するニーズが高まっています。

EtG および EtS は、検出可能な時間枠が長いことから、アルコール摂取の優れたマーカーとなっています。EtG および EtS は、エタノールの微量水溶性 II 代謝物で、エタノール摂取の後、最長 80 時間まで尿中に検出されます1

今回詳述するサンプル前処理法は、「直接希釈注入」形式に基づいています。この方法では、LC-MS システムに注入する前に、内部標準を含むサンプルを希釈します。

Andrew+ での EtG/EtS「直接希釈注入」法では、デッキ上で正確なピペッティングとサンプルの混合が行われます。これは単純なワークフローですが、特にサンプル数が多い場合など、ピペッティングが面倒な繰り返し作業になる場合があります。このワークフローを自動化することで、分析者の専門知識を他の作業に充てることができ、分析に必要なトレーニングも最小限に抑えることができます。クラウドネイティブソフトウェア OneLab では、必要な材料とデッキの設定を用いてプロトコルを実行する際に、ユーザーをガイドします。。Andrew+ により、すべての分析で再現性と一貫性のあるピペッティングができるようになり、手動でのサンプル前処理に見られるユーザーによるヒューマンエラーのリスクが低減します。

実験方法

Andrew+ では、ヒト尿中の EtG および EtS の自動「直接希釈注入」サンプル前処理用に 2 つのスクリプトが開発されています。

結果および考察

Andrew+ での自動「直接希釈注入」法のために 2 つのプロトコルが開発されました。いずれのプロトコルのメソッドでも、2 mL コレクションプレート(製品番号:186002482)の最初の 2 列に、(内部標準の代わりに)水で希釈した 8 つの品質管理用低濃度アリコートと 8 つの品質管理高濃度アリコートのセットを移しました。2 つの自動化メソッドの違いは、ウェル内での液体の混合の仕方でした。自動化メソッドの 1 つでは、ピペットによる混合を用い、もう 1 つのメソッドでは Microplate Shaker+ を使用して混合を行いました。サンプルをスムーズに移動できるように、ピペットのリキッドハンドリングパラメーターを調整しました。サンプルのピペット混合を行うプロトコルの開発時に、ピペット混合のパラメーターの調整を行いました。その一例として、完全な混合を確保するため、ピペット混合の速度を上げました。OneLab では、調整を簡単に変更できました。この最適化により、再現性と精度が向上しました。

両方のスクリプトにおける Andrew+ デッキ全体のレイアウトを図 1 と 2 に示します。

図 1. Andrew+ Microplate Shaker+ を使用して、ヒト尿中の EtG および EtS をサンプル前処理するための Andrew+ デッキのレイアウト 
図 2. ピペット混合用 Andrew+ ピペットを使用して、ヒト尿中の EtG および EtS をサンプル前処理するための Andrew+ デッキのレイアウト 

また、自動ワークフローと手動ワークフローの回収率と精度を比較するために、手動前処理も行いました。

サンプル前処理後、Waters アプリケーションノート 720006273 に記載されている以前に指定されたトランジションを使用して、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)を実施しました。EtG には 2 つのトランジションを使用し、EtS には 1 つのトランジションを使用しました。EtG では、品質管理濃度 EtG/EtS:500/250 ng/mL を用いて、目標とする定量イオン/定性イオンの比率を採用しました。

図 3 に、自動注入の結果を示します。結果は、Waters アプリケーションノート 720006273 に記載されている結果と同等です。許容基準には、ターゲットイオン比 +/- 20% が含まれています。

図 3.EtG:500 ng/mL(0.5 mg/mL)、EtS: 200 ng/mL(0.20 mg/mL)。 

すべてのメソッドの精度を、EtG(200、500 ng/mL)と EtS(800、2000 ng/mL)について 2 種類の濃度で評価しました。「直接希釈注入」法での自動アッセイの精度は、手動前処理ワークフローと同等です。EtS では、精度が若干向上していました。精度の結果は、表 1 に記載しています。

表 1. 精度データ

Andrew+ で実行される自動ワークフローと手動ワークフローの回収率の比較は、図 4 に記載されています。EtG および EtS の QC 低濃度および QC 高濃度サンプルについて、得られた結果の全体的な回収率(n=8)は、手動ワークフローとの比較で ± 2% です。

図 4. Andrew+ でのサンプル前処理法の回収率 

Andrew+ で開発した自動化メソッドはいずれも、手動の前処理ワークフローと同等のパフォーマンスを発揮しています。このため、ヒト尿中の EtG および EtS の定量には、自動化メソッドのいずれも使用できます。ハイスループット設定ワークフローでは、ピペット混合のオプションとして Shaker+ Microplate を使用することで効率が向上します。

使用する材料および LC-MS/MS メソッドの詳細については、レファレンスプロトコル 720006273 を参照してください。

結論

EtG および EtS の直接希釈注入サンプル前処理の自動化メソッドが、ハイスループット設定の Andrew+ ピペッティングロボットを使用して実証されています。Andrew+ は、Andrew+ でのピペット混合または Microplate Shaker+ のいずれかを使用することで、サンプル混合を行えることが分かりました。

開発されたメソッドは正確で精度が高く、バイオマーカーである EtG および EtS の同定および定量に関して、手動による前処理と同等であることが分かりました。

参考文献

  1. Ohouo, P. Y.; Dixon, N.; Lieu, A.; Zavery, Z.; Rosano, T. G. UPLC-MS/MS Method for Quantitation of EtG and EtS in Human Urine.Waters Application Note, 720006273, May 2018.

720007186JA、2021 年 3 月

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