Andrew+ ピペッティングロボットを使用した、残留農薬分析のためのマトリックス添加標準溶液の自動調製
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要約
Andrew+ ピペッティングロボットおよびクラウドネイティブ OneLab ソフトウェアプラットホームを、LC-MS/MS による残留農薬分析のためのマトリックス添加標準溶液の調製の自動化に関して評価したところ、良好な結果が得られています。その性能は、マトリックス抽出物ですら、標準溶液の調製に関する要件に適合していることがわかりました。マトリックス添加標準溶液を自動的に調製すると、キャリブレーショングラフの特性が改善されました。この重要な分析ステップを自動化することで、時間が節約され、反復性ストレス障害のリスクが低減され、ミスの可能性が最小限に抑えられ、技術スタッフが他の業務に解放されるとともに、完全なトレーサビリティーが確保されます。
アプリケーションのメリット
- 手動操作による介入なしで 14 分未満で完了できる、完全に自動化されたプロセス
- 最小限のトレーニングで簡単に使用可能
- 一貫したピペッティングの結果により、正確で精密な定量が実現
- 反復性ストレス障害の原因になることがある繰り返しピペッティングの必要性が低減されます
はじめに
一般に農薬と呼ばれる植物保護製品は、農産物の収穫量を増やすために世界中で広く使用されています。国には通常、市場に出される食品が残留農薬の法的制限を順守していることを保証するための管理を行う義務があります。これらの規制の順守は、食品業界が実施する輸入管理および検査の頻度の増加によってサポートされる、国または地域レベルの公的管理プログラムを使用してチェックされます。多成分残留物分析法を使用して農産物、動物由来製品、加工食品中の残留農薬を分析するために、利用可能なさまざまなアプローチがあります。これには、オランダの mini-Luke、スウェーデンの酢酸エチルおよび Quick、Easy、Cheap、Effective、Rugged、Safe(QuEChERS)などがあり、さらに限られた数の単一残留物分析法によってサポートされています1。 多成分残留物法では多くの場合、クリーンアップが省略されており、このためマトリックス効果が一般的な懸念であり、LC-MS/MS や GC-MS/MS を使用する際に、残留農薬の検出および定量が損なわれることがあります。これを軽減する解決策の 1 つは、分析対象商品の適切な量のブランク抽出物中で、すべての標準溶液を調製することです(マトリックス添加キャリブレーション)。このプロセスは、定量残留物試験の不可欠な部分であり、正確、精密、追跡可能な方法で実施する必要があります。このため、このプロセスを自動化することによって、ミスが最小限に抑えられ、傷害(ピペッティングによる反復性ストレス障害)のリスクが低減され、ラボの分析者が他のタスクに集中することが可能になります。
Andrew+ ピペッティングロボットにより、完全に自動化されたピペッティングが実現し、様々なドミノアクセサリーおよび Andrew Alliance 電子ピペットによってサポートされる複雑な操作が提供されます。これは OneLab プロトコルを実行し、手間のかかる手動手順から、ミスのないロボットワークフローへの迅速な移行を可能にします。このプラットホームは、セットアップが簡単で、ラボのスペースをあまり占有しません。2 列のドミノをすべて使用しても(マイクロプレート 7 枚またはファルコンチューブ 56 本またはマイクロチューブ 168 本を使用可能)、ロボットが占有する奥行はわずか約 60 cm です。以前のホワイトペーパーで、自動リキッドハンドリングテクノロジーの革新によって、導入の障壁が低くなったことが説明されており、ラボの効率を向上させるために自動化システムを試行するプロセスが紹介されています2。
ここでは、残留農薬分析用の一連のマトリックス添加キャリブラントの調製を自動化する、2 種類のアプローチのうちの 1 つ目について、OneLab ソフトウェアによってコントロールする Andrew+ ピペッティングロボットの使用での簡単な評価と合わせて紹介します。
結果および考察
この評価では、通常の LC-MS/MS 分析法を使用して分析した、リンゴの QuEChERS 抽出物に含まれる 20 種類の代表的な農薬について、一連のマトリックス添加標準溶液(5 レベル)の調製の自動化に焦点を合わせました3。 標準溶液は、水/アセトニトリル(9:1)中に 2 回繰り返し調製し、早く溶出する化合物のクロマトグラフィーピーク形状を改善するために、最初の移動相条件とマッチさせました。次に、2 セットの標準溶液を分析し、データからブラケットキャリブレーションを作成しました。この評価の範囲は、キャリブレーショングラフの特性を評価基準として使用し、この作業にかかる時間を判定することも目的として、ピペッティングロボットの性能を評価するために設計しました。次に結果を、経験豊富な分析者による手動でのプロセスの繰り返しと比較します。
評価では、OneLab ソフトウェアのユーザーインターフェースは直感的なグラフィック設計であるため、ピペッティングプロトコルを設計するのにかかった時間は 30 分未満で、このプロトコルは必要に応じてプログラミングを行わずに実行できました。OneLab ソフトウェアを使用することで、実験設計からプロトコル実行までのすべてのステップを追跡できます。設定は、特定の実験のニーズに適合するようにカスタマイズできます。例えば、水性溶媒と有機溶媒では、異なる吸引速度が必要です。アセトニトリルなどの有機溶媒を取り扱う場合は、「ボトムエアクッション」を使用して滴下を防止するオプションがあります。自動化プラットホームでは、操作手順がスクリプトとして記録されるため、トレーサビリティーのメリットが追加され、トラブルシューティングが必要な場合に、標準溶液がどのように調製されたかを正確に確認できました。
キャリブレーショングラフは、1/x 重み付け直線回帰を使用して、2 セットのマトリックス添加標準溶液のそれぞれの分析から作成しました。定量の許容基準には、多くの場合決定係数(r2)および残差の値が引用されます。残差は、真の値と近似線の方程式によって予測される値との差であり、その線がデータをどの程度近似しているかの指標になります。自動調製された標準溶液からのグラフと手動調整からのグラフの r2 値に大きな差はありませんでした(r2 はそれぞれ 0.998 および 0.996)。Andrew+ ピペッティングロボットによって作成された 2 つの標準溶液の分析で得られた検量線グラフの残差により、手動で作成した標準溶液の分析と比較して、改善されている(特に低濃度で)ことが示されています。キャリブレーショングラフの一部の例については図 3 を、特性のサマリーについては表 1 を参照してください。
Andrew+ ピペッティングロボットは、6 レベルのマトリックス添加標準溶液を 2 回ずつ調製する作業を、手動操作で 14 分未満で完了しました。これに対し、シングルチャンネルピペットを使用して手動で同じ一連の標準溶液を調製するには 35 分以上かかりました。Andrew+ ピペッティングロボットを使用することで、分析を繰り返す必要から生じる人的ミスの可能性も低減されます。
結論
Andrew+ ピペッティングロボットの開発された自動メソッドは、手動ピペッティングと同等の結果が得られることが実証され、LC-MS/MS を使用する残留農薬分析用のマトリックス添加標準溶液の調製に適しています。自動化により、担当者が飽き飽きする繰り返しの手作業に費やす時間が減少し、好ましくない繰り返し分析の結果として生じる人的ミスの影響も排除され、かなりの時間を節約できます。正確度と精度を評価し、その適用範囲をその他の溶媒組成や商品の組成に拡張するためのさらなる作業が予定されています。
参考文献
- EURL-FV.Validation of MRM Pesticides from the Working Document SANCO/12745/2013 using Three Multiresidue Methods (QuEChERS, Swedish, ethyl acetate, and Dutch mini-Luke).2019.
- Ross E, Meruva N M, Skinner N. Improving Method Reproducibility and Efficiency in Food Testing: How Can Liquid Handling Automation Help? Waters White Paper 720007332EN.August 2021.
- Shah D, Wood J, Fujimoto G, McCall E, Hird S, Hancock P. Multiresidue Method for the Quantification of Pesticides in Fruits, Vegetables, Cereals and Black Tea using UPLC-MS/MS.Waters Application Note 720006886EN.February 2021.
720007433JA、2021 年 11 月