高温 GPC の代替としての HFIP 中のポリアミドの APC 分析
要約
このアプリケーションノートでは、Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)™ システムが、HFIP を使用したポリアミド GPC 分析で、従来の分離手法と比較して、より持続可能な代替手段であることが実証されています。
アプリケーションのメリット
- HFIP に可溶性のポリマーに対する、高温ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)アプリケーションに代わる分析アプローチ
- 1 サンプルの分析に 45 分間かかる従来の GPC と比較して、1 サンプルあたりの分析時間が 15 分に短縮
- 有害な廃液および有機溶媒消費量が低減されるポリアミド GPC オプション
- HFIP で長年にわたり一貫して正常に使用されてきた APC アイソクラティックソルベントマネージャー(ISM)システム
はじめに
ポリアミドは、その機能が発揮されているのを簡単に見ることはできませんが、日常生活に不可欠な要素です。ナイロン 6,6 は、6 炭素モノマーの出発原料である、アジピン酸およびヘキサメチルジアミンにその名前が由来する、役に立つポリアミドです。ナイロン製品の 2 つの例は自動車部品と電気配線であり、これらには耐熱性と耐薬品性が必要です1。ポリアミドの耐薬品性により、このポリマーを GPC 分析するために有機溶媒に溶解することは、困難な課題です。多くの製造者は、これらのナイロンポリマーの分子量分布の測定に高温 GPC(100 ℃超)を使用し、この分析では多くの場合、移動相として m-クレゾールまたは N-メチルピロリドンが使用されます2,3。
溶解しにくいポリアミドナイロン 6,6 の代替の GPC 分析では、移動相としてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)が使用されます。HFIP は、室温では粘性の高い溶媒です(20 ℃ で 1.65 cP)。移動相としての HFIP は、テトラヒドロフラン(25 ℃ で 0.48 cP)と比較して、分析時間が 45 分間で、非常に高価な溶媒をリットル単位で消費し、廃液が有害であり、LC システムでの動作パラメーターを考慮する必要があります4-7。
限界が 15,000 psi のアドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システムなどの高圧システムの移動相としての HFIP は、このルーチン分析に新しい利点をもたらします。この低拡散システムには、Waters BEH 小粒子カラムの高分離能を維持するように設計された、独自の機能があります。粘性の高い移動相を高圧で小粒子カラムを通すという困難な課題は想像できると思いますが、HFIP のこの物理的な制限を克服するために、追加の検討が必要です。多くの科学者は、UPLC の利点である効率的な分析法開発と分析時間の短縮を強い動機として認識しており、自身の実験での HFIP の使用に成功して、結果を発表しています8。
実験方法
この APC 分析では、塩添加剤が含まれている HFIP 移動相を使用して、さまざまなポリアミドのサイズベースの分離を行っています。装置パラメーターが LC 条件表にリストされています。サンプルは、シンチレーションバイアル中で一晩かけて HFIP 中に 1mg/mL 溶解し、装置バイアルに移しました。
LC 条件
システム: |
ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システム(ISM を搭載) |
ポンプ: |
アイソクラティック |
移動相: |
ヘキサフルオロ-2-プロパノール、0.1% トリフルオロ酢酸ナトリウム(NaTFA)含有 |
洗浄/パージ: |
ヘキサフルオロ-2-プロパノール |
シール洗浄溶媒: |
80:20 水/イソプロパノール |
シール洗浄速度: |
2.00 分間隔 |
流速: |
0.45 mL/分 |
実行時間: |
15 分 |
サンプル温度: |
20 ℃ |
シリンジ吸引速度: |
自動 |
サンプル濃度: |
1 mg/mL |
注入量: |
20 µL |
カラム温度: |
50 ℃ |
カラムセット: |
ACQUITY APC XT™: 900 Å、450 Å(2.5 µm、4.6 × 75mm)(製品番号:186007253) 200 Å(2.5 µm、4.6 × 150 mm)(製品番号:186007005) 125 Å(2.5 µm、4.6 × 75mm)(製品番号:186006998) 45 Å(1.7 µm、4.6 × 75mm)(製品番号:186006993) |
検出器: |
RI(50 ℃) |
カラムセットアセンブリー
5 本のカラムのカラムセットの選択に注意してください。これは、通常、長さ 150 mm のカラム 3 本に使用するスペース内で 5 本のカラムを管理する、創造的なソリューションです。図 1 に示されているカラムセットの例には、分子量範囲 3K ~ 70K ダルトンをカバーする 150 mm 200 Å のカラムがありません。カラムコンパートメントには、トレーサビリティーを可能にする 4 つの eCord™ 接続部があります。5 番目のカラムには e-cord マグネット用の接続部がないため、Empower™ ソフトウェアにキャプチャーできません。この 5 番目のカラムは、未知サンプルの分子量範囲のスクリーニングに役立ちます。範囲が決まると、カラムセットを 4 本のカラムに最適化できます。
ここに示されている写真は、4 本のカラムのセットの例です。示されている 900 Å カラムのスペース(長さ 150 mm)に長さ 75 mm のカラムを 2 本取り付けるには、プレカラムフィルターを取り外す必要があり、コネクターはカラムオーブンにぴったり収まるように成形されています。カラムセットを 4 本のカラムに対して最適化すると、プレカラムフィルターを再度取り付けることができます。
データ管理
装置制御並びにデータ取り込みと解析は、Empower 3 クロマトグラフィーデータシステム(FR5)を用いて行いました。
結果および考察
カラムセットと分析法を注入あたり 15 分に最適化した後、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のキャリブレーション標準試料を分析して、図 2 の分子量範囲と相対検量線(図 3)を確立しました9。
分子量が最も大きいポイントは検量線の曲がっている部分にあります。これは、短い分離経路および短いカラムの分離能が低いためですが、未知ポリアミドサンプルは曲線の直線範囲で溶出するため、その分析の質には影響しません。5 番目の曲線を使用して、最良の R2 値 0.998453 が得られました(図 3)。
未知のポリアミドサンプルは、PMMA 標準試料の相対検量線を使用して、波形解析および計算をしました(図 4)。
結論
上記の実験結果により、APC には、HFIP に溶解したポリアミドを、R2 値 0.9985 の検量線を使用して分析する能力があることが実証されました。
この分析法により、1 回の注入につき 15 分間の分析で、従来の GPC と比較して 3 倍の速さで結果が得られます。1 回の注入あたり 22 mL を超える HFIP 溶媒を使用する従来の GPC と比較して、この短い実行時間に使用される、1 回の注入あたりの HFIP 溶媒は 7 mL 未満です10。
まとめると、今回説明した分析法は、ラボのサンプルスループットを向上し、より持続可能でコスト効率の良い分離オプションを提供し、高温 GPC の実行可能な代替になる可能性があります。
参考文献
- Palmer, Robert J. (2001)."Polyamides, Plastics".Polyamides, Plastics.Encyclopedia Of Polymer Science and Technology (4th ed.).John Wiley & Sons, Inc. doi:10.1002/0471440264.pst251
- Beginners Guide to Size Exclusion Chromatography.
- Wudy, Katrin & Drummer, Dietmar.(2018).Aging Effects of Polyamide 12 in Selective Laser Sintering: Molecular Weight Distribution and Thermal Properties.Additive Manufacturing.25.10.1016/j.addma.2018.11.007.
- Chen, An-Liu & Wei, Kuan-liang & Jeng, Ru-Jong & Lin, Jiang-Jen & Dai, Shenghong.(2010).Well-Defined Polyamide Synthesis from Diisocyanates and Diacids Involving Hindered Carbodiimide Intermediates.Macromolecules.44.10.1021/ma1022378.
- APC System Chemical Compatibility Guide.
- Wikipedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Hexafluoro-2-propanol
- Sigma Aldrich.
- Christian Wold, Elena Uliyanchenko (LCGC Europe), Ultra-High Size-Exclusion Separations of Engineering Plastics: Challenges and Opportunities,
- Don Trinite, Waters Corp.,1360 N. Wood Dale Rd., Suite C, Wood Dale IL 60191.
- Richard Mendelsohn, Jennifer Gough, Fast, High-Resolution Analysis of Polydimethylsiloxanes in Toluene with Advanced Polymer Chromatography Coupled to Refractive Index Detection.Waters Application Note 2022, 720007658.
720007703JA、2022 年 8 月