• アプリケーションノート

Empower™ サンプルセットジェネレーターを用いた ACQUITY™ QDa 検出器による分析用クロマトグラフィーメソッドの自動作成

Empower™ サンプルセットジェネレーターを用いた ACQUITY™ QDa 検出器による分析用クロマトグラフィーメソッドの自動作成

  • Margaret Maziarz
  • Paul D. Rainville
  • Waters Corporation

要約

シグナルを強化するためにイオン源-質量分析(MS)パラメーターを最適化するには、さまざまなイオン化変動要因にわたって複数のクロマトグラフィーメソッドを作成する必要があります。このテクノロジーブリーフでは、Empower™ サンプルセットジェネレーターソフトウェアを使用して、ACQUITY QDa 質量検出器での分析のためのクロマトグラフィーメソッドを自動的に作成し、プローブ温度およびコーン電圧が塩酸メマンチンの感度に及ぼす影響について調査します。

アプリケーションのメリット

  • Empower サンプルセットジェネレーターを使用し、クロマトグラフィーパラメーターを変更して Empower 装置メソッド、メソッドセット、サンプルセットメソッドを自動的に迅速に作成
  • Waters ACQUITY LC 装置、光学検出器、および ACQUITY QDa 質量検出器用のクロマトグラフィーメソッドの生成

はじめに

MS イオン源のイオン化パラメーターの最適化は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)で高感度分析を行う上で重要な役割を果たします。MS シグナルを改善し、ターゲット分析種に対して低い検出限界を達成するために、多くの場合イオン化パラメーター(イオン化モード、コーン電圧、プローブ温度など)を調査します。さまざまなイオン化パラメーターとその範囲が感度に及ぼす影響を試験するには、一連の変動要因にわたって複数のクロマトグラフィーメソッドを慎重に作成する必要があります。これらのメソッドを手作業で作成および検証すると、時間がかかり、エラーが発生しやすくなります。

Empower サンプルセットジェネレーター(SSG)機能により、クロマトグラフィーパラメーターを変更して、装置メソッド、メソッドセット、サンプルセットメソッドを自動的に作成できます。Empower メソッドセットと装置メソッドは、すぐに行える注入シーケンスとして、実験計画に従ってサンプルセットメソッドで自動的に作成され、構造化されます。クロマトグラフィーメソッドの作成を自動化することで、手作業のプロセスで発生する可能性のある転記ミスが低減され、メソッドの生成に費やす時間が短縮されます。

このテクノロジーブリーフでは、Empower SSG を使用して、ACQUITY QDa 質量検出器と Arc™ Premier システムの組み合わせを用いた分析のための、クロマトグラフィーメソッドを自動的に作成する方法について説明しています。ACQUITY QDa は、多くの場合アルツハイマー病に関連する認知症の治療に一般的に使用される薬剤である非発色団の塩酸メマンチンの検出に使用されます1。QDa イオン化パラメーター(プローブ温度とコーン電圧)がメマンチンの分析でのメソッドの感度に及ぼす影響が調査されています。

結果および考察

塩酸メマンチンには UV 検出に必要な発色団がありませんが、ACQUITY QDa 質量検出器を使用すると、頑健な MS シグナルが生成されます2。この研究で使用した分析条件は、表 1 に要約されています。メタノール中濃度 1 mg/mL の濃縮ストック溶液から 90:10 水/メタノール中濃度 10 ng/mL の標準溶液を調製し、MS 検出による感度試験に使用しました。

塩酸メマンチン分析の分析条件

システム:

Arc Premier システム、2998 PDA および ACQUITY QDa

カラム:

CORTECS™ C18+、2.7 µm、3 mm × 75 mm (製品番号:186007401)

カラム温度:

45 ℃

移動相:

A:0.1% ギ酸水溶液

B:0.1% ギ酸アセトニトリル溶液

注入量:

3.0 µL

MS 検出:

ACQUITY QDa 質量検出器(拡張性能)

•イオン化モード:ESI+

•シングルイオンレコーディング(SIR):180.2 Da

•プローブ温度:600 ℃

•コーン電圧:15 V

•キャピラリー電圧:0.8 kV

•データ:セントロイド

洗浄溶媒:

パージ/サンプル洗浄溶媒:50:50 水/メタノール

シール洗浄溶媒:90:10 水/アセトニトリル

グラジエントテーブル

クロマトグラフィーメソッドは Empower SSG を使用して自動作成され、プローブ温度(600、500、400 ℃)およびコーン電圧(5、10、15、20 V)が塩酸メマンチンの感度に及ぼす影響を、以下に説明されている手順に従って試験しました。 

  • QDa 変動要因が含まれているカンマ区切り値(CSV)ファイルを Empower SSG にインポートしました(図 1)。実験計画には、さまざまなプローブ温度とコーン電圧の MS 条件の組み合わせを含めました。
  • メソッドセットと、この分析のためのシステム構成の装置メソッドが含まれているベースサンプルセットメソッドを、Empower プロジェクトから Empower SSG にロードしました。
  • 被験要因であるプローブ温度とコーン電圧を、Empower の設定と関連付けました(図 2)。
  • サンプルセットメソッドの生成を完了する前に、最終設定(注入パネル、平衡化時間、メソッド名)を定義しました(図 3)。

上記の手順を完了した後、Empower SSG によって、すぐに実行できる注入シーケンスとしての実験計画に従って、サンプルセットメソッドが自動的に作成されました(図 4)。Empower 装置メソッドとメソッドセットが自動的に作成され、サンプルセットメソッドに組み込まれました。サンプルセットメソッドには、実験名と、さまざまなプローブ温度とコーン電圧の 12 のメソッドセットが含まれました。ユーザーの指示に従って、平衡化ステップとブランク試料の注入が、分析開始時に追加されました。Empower SSG を使用しない場合、ユーザーは 12 の装置メソッドとメソッドセットを手動作成する必要があり、これは時間がかかり、エラーが発生しやすいプロセスです。Empower SSG による自動生成を使用することで、時間が節約され、転記ミスが低減され、すべてのクロマトグラフィー分析が適切に作成されたメソッドで完了したことの確信が得られました。ACQUITY QDa 検出器を使用して取り込んだ Empower データが、図 5 に示されています。複数の実験分析にわたるピークのデータにより、プローブ温度 600 ℃ およびコーン電圧 15 V で、塩酸メマンチンの最高の感度が達成され、シグナル対ノイズ(s/n)値が最高になることが、示されました(図 5A)。

図 1.  Empower SSG を使用したクロマトグラフィーメソッドの作成。CSV ファイル(A)をインポートし、実験計画(B)をレビューします。 
図 2.  Empower SSG。要因または装置変数を Empower 設定に関連付けます。
図 3.  メソッド生成のための Empower SSG の最終設定
図 4.  Empower SSG を使用して生成されたサンプルセットメソッド
図 5.  Empower データ。複数の実験分析にわたるピークデータ(A)およびメマンチン標準溶液の代表的クロマトグラム(B)

結論

Empower サンプルセットジェネレーターを使用して、ACQUITY QDa 質量検出器で分析するためのクロマトグラフィーメソッドが自動的に作成され、イオン化パラメーター(プローブ温度とコーン電圧)が塩酸メマンチンの感度に及ぼす影響を調査しました。Empower 装置メソッドおよびメソッドセットが自動的に作成され、すぐに実行できる注入シーケンスとしてサンプルセットメソッドに組み込まれました。メソッド生成の自動化によって、手動プロセスに伴う転記ミスとかかる時間が低減されました。

Empower サンプルセットジェネレーターにより、Waters ACQUITY LC システムおよび検出器で行うメソッド開発およびバリデーションなどの、幅広いアプリケーションのクロマトグラフィーメソッドの作成が自動化されます。

参考文献

  1. https://www.webmd.com/drugs/2/drug-77932-377/memantine-oral/memantine-oral/details.
  2. Maziarz M, Wrona M, McCarthy SM.Benefits of Using QDa Mass Detection for Quantitative Analysis of Non-Chromophoric Memantine HCl in Tablet Formulation.Waters Application Note, 720005179, 2014.

720007775JA、2022 年 11 月

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