• アプリケーションノート

SEC/GPC 用アドバンスドポリマークロマトグラフィーを使用した、さまざまな粉砕再生材含有の産業用ポリアミドギヤの迅速な識別

SEC/GPC 用アドバンスドポリマークロマトグラフィーを使用した、さまざまな粉砕再生材含有の産業用ポリアミドギヤの迅速な識別

  • Donald A. Trinite
  • Jennifer Gough
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションノートでは、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶媒として用いて粉砕再生材をさまざまな比率で混合したポリアミドの、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)/ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析に、Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)™システムを使用する利点が実証されています。

アプリケーションのメリット

  • 1 サンプルの分析に 45 分間かかる従来の GPC と比較して、1 サンプルあたりの分析時間が 15 分に短縮
  • 溶媒の使用量が少なく有害廃液の生成が少ない、ポリアミド GPC 分析のオプション
  • APC アイソクラティックソルベントマネージャー(ISM)システムの、HFIP を含むさまざまな溶媒を使用した場合のポリマーサンプルの分析における実証済みの性能

はじめに

GPC は、再生(粉砕再生)材含有のポリマーの特性解析に使用される分析手法です。原材料として使用される再生ポリマーが許容されるのは、元のリサイクルされていないポリマーと同様に機能する場合のみです。このため、最終製品の特性が維持されるために、モル質量分布、モル質量平均、分散度などのポリマー特性が維持される必要があります。ポリマーを再処理すると、鎖長の低下が発生し、元の出発材料と特性が異なることがあるため、このことは重要です。 

ナイロン 6,6 などのポリアミドは耐薬品性があるため、GPC を使用する分析のためにこのポリマーを有機溶媒に溶解することは困難な課題です1。 工業製造者は、高温(HT)GPC(> 100 ℃)を使用してこれらのナイロンポリマーの分子量分布を測定し、この分析には多くの場合、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、トリクロロベンゼン(TCB)、m-クレゾール、または N-メチルピロリドン(NMP)が移動相として、従来のスチレンジビニルベンゼン(SDVB)GPC カラムと共に使用されます。ただし、この手法では大量の溶媒が消費され、有害廃液に関わるコストが大きくなり、分析時間が 45 分もかかります2-4

この試験では、ポリアミド(ナイロン 6,6 など)の HT-GPC 分析に対する代替のアプローチを、HFIP 移動相および APC システムを用いて採用しました。

実験方法

この APC 分析では、添加剤として塩を加えた HFIP 移動相を用いて、さまざまなポリアミドのサイズベースの分離を行いました(表 1)。未使用材料およびさまざまな比率の粉砕再生材が含まれているポリアミドギアのサンプルは、リヒテンシュタインの Thyssenkrupp Presta AG から入手しました。サンプルは、シンチレーションバイアル中で一晩かけて 1 mg/mL になるように HFIP で溶解し、装置バイアルに移しました。

LC の実験条件

システム:

APC™(ISM を搭載)

ポンプ:

アイソクラティック

移動相:

ヘキサフルオロ-2-プロパノール、0.1% トリフルオロ酢酸ナトリウム(NaTFA)含有

洗浄/パージ:

ヘキサフルオロ-2-プロパノール

シール洗浄溶媒:

80:20 水/イソプロパノール

シール洗浄速度:

2 分間隔

流速:

0.45 mL/分

実行時間:

15 分

サンプル温度:

20 ℃

シリンジ吸引速度:

自動

サンプル濃度:

1 mg/mL

注入量:

20 µL

カラム温度:

50 ℃

カラムセット:

ACQUITY APC XT™:

450 Å(2.5 µm、4.6 × 75 mm)、製品番号 186007253

125 Å(2.5 µm、4.6 × 75 mm)、製品番号 186006998

45 Å(1.7 µm、4.6 × 75 mm)、製品番号 186006993

検出器:

RI(50 ℃)

データ管理

装置制御およびデータ取り込み、解析、レポート作成は、Empower™ 3 クロマトグラフィーデータシステムを用いて行いました。

結果および考察

ギアサンプルを分析する前にまず、ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)のキャリブレーション標準試料を分析して、相対検量線を確立しました(図 1)。分子量が最も大きいポイントは検量線の曲がっている部分にあります。これは、分離経路が短いカラムは分解能が低いためですが、未知ポリアミドサンプルは曲線の直線範囲で溶出するため、その分析の品質には影響しません。5 番目の曲線を使用して、優れた R2 値 0.9996 が得られました(図 1)。

図 1.  Empower で計算した PMMA の検量線

未知のポリアミドギアサンプルを波形解析し、PMMA 相対検量線を使用して計算し、重ね描きしてピーク形状およびピーク高さの違いを示しました(図 2)。サンプルは、まったく同じように調製して注入しました。このため、ピークの差は、一定の比率で添加された再生材に基づくものです。再生(粉砕再生)材の添加量が多いと、ピークの保持時間が長く、わずかに高さが低く、幅広い形状になります。この形状の変化は、分子量が小さく、分子量分布が広いことを示します。ポリマーの分子量および分布の変化は、耐熱性と耐衝撃性が低いことを示している可能性があり、このことは多くの場合、示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析によって確認されます8

図 2.  未使用材料に 0% から 100% の再生材を添加した 5 種類のポリアミドサンプルの Empower クロマトグラフィー重ね描きおよび z プロットの挿入図

ピークの重ね描きではピーク形状に大きな違いがないように見えますが、計算分子量では 0% のピークと 100% のピークに 24% の差があります。再生ナイロンの含有率が 0% のギアはピーク最大(MP)分子量が 127 k Da であるのに対し、再生ポリマー 100% のギアは 97 k Da です。ピーク値の違いは、表 4 の重量平均(Mw)、数平均(Mn)、z-平均、分散度指数(PDI)にも見られます。これらのさまざまな値のそれぞれの変化は、ポリマーの強度、溶融流動性、柔軟性の特性に影響を与える可能性があります。

表 1.  再生ポリアミド 0% ~ 100% のギアサンプルの GPC サンプルの分析結果

高圧で動作する ACQUITY APC XT™ カラムセットを備えた APC システムでは、HT システムや HPLC システムと比較して、15 分でポリアミドの HFIP サイズ分離を完了できます。APC XT カラムは、高圧機能に加えて、溶媒の膨張への耐性があります。HT GPC と比較した場合の APC オプションを使用する利点は、時間が 3 倍節約され、溶媒消費量が 6 倍削減されることです。溶媒消費量が少ないことは有害廃液が少ないことであり、持続可能性の向上に寄与します(表 3)9

表 2.  HT GPC、従来の GPC、APC の合計分析時間および溶媒使用量の比較

結論

上記の実験の結果から、APC には、さまざまな比率の粉砕再生材が含まれている(ここでは再生とみなす) HFIP に溶解したポリアミドを、R2 値 0.9996 の検量線を使用して識別する機能があることが実証されています。

この分析法により、1 回の注入につき 15 分間の分析で、従来の GPC と比較して 3 倍の速さで結果が得られます。1 回の注入あたり 22 mL を超える HFIP 溶媒を使用する従来の GPC と比較して、この短い実行時間に使用される、1 回の注入あたりの HFIP 溶媒は 7 mL 未満です

ここに説明した分析法には、ラボのサンプルスループットを高め、より持続可能でコスト効率の良い分離オプションを提供し、高温 GPC に対する実行可能な代替になる可能性があります。 

参考文献

  1. Palmer, Robert J. (2001)."Polyamides, Plastics".Polyamides, Plastics.Encyclopedia of Polymer Science and Technology (4th ed.).John Wiley & Sons, Inc. doi:10.1002/0471440264.pst251.
  2. Beginners Guide to Size Exclusion Chromatography.
  3. Wudy, Katrin & Drummer, Dietmar.(2018).Aging effects of Polyamide 12 in Selective Laser Sintering: Molecular Weight Distribution and Thermal Properties.Additive Manufacturing.25.10.1016/j.addma.2018.11.007.
  4. Chen, An-Liu & Wei, Kuan-liang & Jeng, Ru-Jong & Lin, Jiang-Jen & Dai, Shenghong.(2010).Well-Defined Polyamide Synthesis from Diisocyanates and Diacids Involving Hindered Carbodiimide Intermediates.Macromolecules.44.10.1021/ma1022378.
  5. APC System Chemical Compatibility Guide.
  6. Christian Wold, Elena Uliyanchenko (LCGC Europe), Ultra-High Size-Exclusion Separations of Engineering Plastics: Challenges and Opportunities, https://www.waters.com/webassets/cms/library/docs/lcgc_uliyanchenko_engineering_plastics_with_uhpsec.pdf.
  7. Don Trinite, Waters Corp., 1360 N. Wood Dale Rd., Suite C, Wood Dale IL 60191.
  8. Browne J., TA Instruments Application of Polyamides Containing Recyclates, New Castle, DE, December 2022.
  9. Richard Mendelsohn, Jennifer Gough, Fast, High-Resolution Analysis of Polydimethylsiloxanes in Toluene With Advanced Polymer Chromatography Coupled to Refractive Index Detection.Waters Application Note.2022. 720007658.

720007824JA、2022 年 12 月

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