Extraction+ コネクテッドデバイスと Andrew™+ ピペッティングロボットを併用した全自動固相抽出サンプル前処理
要約
以下の研究は、OneLab ソフトウェアで制御する Extraction+ コネクテッドデバイスと組み合わせた Andrew+ ピペッティングロボットが、カートリッジ型式およびプレート固相抽出(SPE)型式での全自動 SPE 前処理において、新しい機能および柔軟性を発揮することを実証しています。
アプリケーションのメリット
- Andrew+ ピペッティングロボットおよび Extraction+ コネクテッドデバイスを用いた全自動 SPE サンプル抽出により、ユーザー操作が不要に
- 自動化における SPE プレート型式およびカートリッジ型式との互換性
- プレート、チューブ、ボトルへの回収における液体移送の柔軟性
- 完全にプログラム可能な真空圧プロファイルで、抽出性能のばらつきを低減
- サンプル前処理および抽出の自動化により効率が向上し、分析者の介入が不要に
- 使いやすい OneLab ソフトウェアでの移管可能な分析法により、異なるユーザー間およびラボ間で同じ前処理手順の実施が可能に
はじめに
液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)でのバイオアナリシス用 SPE サンプル前処理は複雑で時間がかかり、しばしば LC-MS バイオアナリシスワークフローの「ボトルネック」と見なされます。これは、さまざまな生体マトリックスからターゲット分析種を正確かつ高い信頼性で分離・精製するには、多くのプロトコルのステップが必要であるためです。全自動 SPE サンプル前処理を導入することで、分析ワークフローが大幅に簡素化し、人的ミスが低減し、分析法の(日間、ユーザー間、ラボ間の)再現性が改善し、分析者は他の作業を行うことができます。
今回紹介する研究では、Andrew+ ピペッティングロボット(Andrew+)および新規導入された Extraction+ コネクテッドデバイス(Extraction+)を使用し、OneLab ソフトウェアで制御する全自動サンプル前処理および SPE 抽出ソリューション(図 1)により、正確かつ信頼性の高い頑健な SPE サンプル前処理が行えることを実証しています。
実験方法
LC-MS 条件
LC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class(FL)、カラムマネージャー(CMA)を搭載 |
移動相 A: |
0.1% FA 水溶液 |
移動相 B: |
0.1% FA アセトニトリル溶液 |
カラム/吸着剤: |
HSS PFP 1.8 µm、2.1 mm × 50 mm カラム(製品番号:186005965) |
カラム温度: |
35 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
5 µL |
WNW: |
9:10 水:アセトニトリル |
SNW: |
25:25:25:25 水:メタノール:アセトニトリル:水 |
MS システム: |
Xevo™ TQ-XS |
キャピラリー(kv): |
3.0 |
コーン電圧: |
30 V |
脱溶媒温度: |
500 ℃ |
脱溶媒流量: |
1100 L/時間 |
コーンガス流量: |
150 L/時間 |
LC グラジエント
MS 設定
イオン化モード: |
ESI+ |
取り込み範囲: |
MRM |
キャピラリー電圧: |
2.00 kV |
コーン電圧: |
60 V |
脱溶媒温度: |
500 ℃ |
脱溶媒流量: |
1000 L/時間 |
コーンガス流量: |
150 L/時間 |
コリジョンガス流量: |
0.2 mL/分 |
ネブライザーガス流量: |
7 Bar |
データ管理
装置コントロールソフトウェア: |
MassLynx™(v4.2) |
定量ソフトウェア: |
TargetLynx™ |
サンプル前処理と SPE 抽出
個別の濃度 1.0 mg/mL の分析種のストック溶液から、低分子医薬品(10 µg/mL)混合物を含むストック溶液をメタノール中に調製しました。次に、この溶液を使用して 100 ng/mL の作業用分析種ストック水溶液を調製し、自動および手動の逆相(RP)SPE 分析性能の評価に使用しました。1、3、6 cc Oasis HLB SPE カートリッジ並びに µElution および macro 96 ウェル Oasis HLB SPE プレート(SPE 型式ごとに N = 4)中で 100 ng/mL の分析種の作業混合溶液を用い、単純な 3 ステップ SPE プロトコル(ロード、洗浄、溶出)を使用して、ニート回収実験を実施しました。基本的な RP SPE 手順に関する情報は Waters SPE ウォールチャート(製品番号:720001981)に示されています。簡単に説明すると、4% リン酸水溶液を SPE プレートまたはカートリッジに直接ロードした後、100 ng/mL の分析種溶液をスパイクし、6 回のピペット混合ステップで混合しました。生体マトリックスタンパク質由来のターゲット分析種が十分に切断されるように、4% リン酸水溶液がしばしば用いられます。前処理したサンプルを SPE カートリッジまたはプレートにロードしました。サンプルをロードした後、SPE デバイスを 5% メタノール溶液で洗浄し、次にメタノール溶液を使用して、適切な回収容器に溶出しました。次に、初期の LC 条件との適合性を確保するため、サンプルを水で希釈しました。サンプル前処理、SPE 抽出、サンプル希釈それぞれに使用した注入量を表 1 に示します。SPE 抽出後、得られたサンプルにスクリューキャップまたは 96 ウェルキャップマットを被せ、ボルテックス混合しました。続いて、ACQUITY UPLC I-Class システムに Xevo TQ-XS 質量分析計を組み合わせて使用し、抽出したサンプルの LC-MS/MS 検出および分析を行いました。完全な LC-MS 条件は「実験方法」セクションに記載されており、表 2 に記載されている MS MRM パラメーターを使用して、医薬品の検出および分析を行いました。
SPE 自動抽出
OneLab ソフトウェアで制御される Extraction+ を装備した Andrew+ を使用して、全自動 SPE の評価を実施しました(図 2 参照)。OneLab ソフトウェアで制御する段階的な圧力ランプを使用した負の真空を SPE ステップに適用しました。OneLab プロトコルで定義された代表的な圧力プロファイルを図 3 に示します。SPE カートリッジおよびプレートでの Extraction+ の性能評価に用いた OneLab プロトコルを図 4 ~ 8 に示します(Andrew Alliance OneLab ライブラリーからダウンロード可能)。これらのプロトコルは、さまざまな SPE カートリッジ型式およびプレート型式について、表 1 の SPE 条件を使用して作成されたものです。これらの図には、自動化されたメソッドの簡単な導入および Extraction+ による実行のための OneLab プロトコルおよびプロトコルの図示とドラッグアンドドロップでのメソッド作成、システムコンポーネント(ドミノ、コネクテッドデバイス、ピペット、ピペットチップ、ボトル、チューブなど)、ラボの消耗品、Andrew+ のデッキレイアウトなどの重要な情報が含まれています。
OneLab プロトコル 1 | Oasis RP-HLB 1 cc カートリッジ SPE
図 4. Extraction+ と構成した Andrew+ およびプロトコルの図解、システムコンポーネントの確認、Andrew+ のデッキレイアウトOneLab プロトコル 2 | Oasis RP-HLB 3 cc カートリッジ SPE
図 5. Extraction+ と構成した Andrew+ およびプロトコルの図解、システムコンポーネントの確認、Andrew+ のデッキレイアウトOneLab プロトコル 3 | Oasis RP-HLB 6 cc カートリッジ SPE
図 6. Extraction+ と構成した Andrew+ およびプロトコルの図解、システムコンポーネントの確認、Andrew+ のデッキレイアウトOneLab プロトコル 4 | Oasis RP-HLB 96 ウェル Macro プレート SPE
図 7. Extraction+ と構成した Andrew+ およびプロトコルの図解、システムコンポーネントの確認、Andrew+ のデッキレイアウトOneLab プロトコル 5 | Oasis RP-HLB 96 µElution プレート SPE
図 8. Extraction+ と構成した Andrew+ およびプロトコルの図解、システムコンポーネントの確認、Andrew+ のデッキレイアウト結果および考察
Extraction+ は、Andrew+ と組み合わせて使用する新型の全自動化が可能な SPE システムソリューションで、SPE のサンプル前処理および抽出時のユーザー操作が不要になります。Extraction+ デバイスは、SPE マニホールドおよび真空ポンプという 2 つのモジュールで構成されており、いずれも OneLab ソフトウェアで制御されます。Extraction+ を装備した Andrew+ の画像を図 2 に示します。Extraction+ の主な特長は以下の通りです。
- カートリッジ型式およびプレート型式の両方で SPE を実施できる互換性
- プレート、チューブ、またはボトルへの液体の分注、回収、排出
- フロースルー廃液回収
- SPE メソッド実行時の液体除去のための OneLab プロトコル内で定義された完全真空圧コントロール(図 3)
Andrew+ に取り付けられた実験器具グリッパーにより、Extraction+ 真空マニホールドとの間を行き来する廃液とサンプル回収容器の移動が容易になります。また、Extraction+ マニホールドのカラーリフターにより、SPE デバイスと抽出マニホールドカラーが、実験器具グリッパーが付いた真空マニホールドへの回収容器の挿入時に、「パーキングスポット」(アイドル位置)に移動します。
Andrew+ および Extraction+ の両方が、使いやすいクラウドベースの OneLab ソフトウェアで制御されます。Extraction+ は、Andrew+ と共に使用すると、リキッドハンドリングおよびサンプル抽出を全自動(手動操作なし)で実施でき、ユーザー介入が不要なサンプル前処理が可能になるとともに、ラボ間、日間、ユーザー間での頑健かつ信頼性の高いサンプル前処理が確実に行えます。
図 9 のパネル A ~ D から、Extraction+ を装備した Andrew+ で、1、3、6 cc RP Oasis HLB カートリッジおよび 96 ウェル Macro プレートを使用した場合、手動で実施した SPE と同等の SPE 抽出性能が得られることがわかります。さらに、1 cc Oasis HLB カートリッジが頑健で再現性の高い自動 SPE 性能を示すことが表 3 および表 4 からわかり、1 桁台のアッセイ内/アッセイ間性能(平均回収率および RSD)を示しています。図 10 に、同じ吸着剤ベッドサイズ(30 mg)を使用したカートリッジ型式および 96 ウェルプレート型式において、Oasis HLB 自動 SPE 抽出性能が同等であることを示しています。まとめると、これらの結果から、Extraction+ コネクテッドデバイスと Andrew+ ピペッティングロボットの組み合わせを用い、OneLab ソフトウェアで作成した SPE プロトコルを用いて、カートリッジおよびプレートの両方で、非常に柔軟で再現性の高い Oasis HLB SPE サンプル前処理ができることが実証されました。
結論
このアプリケーションでは、Andrew+ および新規導入されたコネクテッドデバイス Extraction+ の機能を活用した、カートリッジ型式およびプレート型式での全自動 SPE サンプル前処理を紹介しています。ソフトウェアで完全に制御されるピペッティング、真空ポンプ制御、回収プレート、チューブ、ボトルへの液体移送に加えて、Extraction+ での固定コアグリッパーの使用により抽出マニホールドとの間の移動が容易になり、SPE サンプル前処理時のユーザーの操作が不要になります。
説明した SPE カートリッジ型式およびプレート型式での OneLab プロトコルは、OneLab ライブラリーからダウンロード可能です。これにより、使用が簡単になり、Andrew+ システム間の移管が可能になり、同じラボまたは複数のコネクテッドラボにおいて、複数のユーザー間で、同じ前処理手順が簡単に導入できます。Extraction+ と Andrew+ の組み合わせにより、サンプル前処理および抽出の手順が簡素化かつ合理化され、生産性が最大化するとともに、ミスが削減され、通常のバイオアナリシス LC-MS ワークフローにおける全体的な分析性能が確保されます。
720007711JA、2022 年 9 月