LC-MS/MS を用いて植物ベースの食品およびはちみつ中のさまざまなピロリジジンアルカロイドを測定するための分析法の開発およびバリデーション
要約
ピロリジジンアルカロイド(PA)は、植物によって生合成される毒素です。PA により遺伝毒性と発がん性の両方の特性が発現しており、食品、ハーブティー、茶の PA による汚染レベルが比較的高いことを明らかにした報告が増えています。このアプリケーションノートでは、さまざまな植物由来食品(茶、ハーブ、スパイス、クミンの種などのボタニカル)およびはちみつ中の PA を測定するための分析法について説明します。サンプルは硫酸溶液で抽出し、Oasis MCX SPE カートリッジを使用してクリーンアップした後、濃縮および再懸濁してから LC-MS/MS を行いました。この試験では、異性体のクリティカルペアのクロマトグラフィー分離を行いました。この分析法は単一ラボバリデーション用の CEN 標準試料の許容基準に準拠しており、良好な回収率と優れた再現性が得られました。個々の化合物に対する定量限界は 0.6 µg/Kg で、規制規準よりも厳しい限界を達成できたことが示されたため、この分析法は乳児や幼児向けの食品にも適用できます。
アプリケーションのメリット
- 規制準拠を確認するのに適した植物性食品およびはちみつ中の 35 種の EU 規制対象ピロリジジンアルカロイド分析向けのバリデーション済み定量法
- Oasis MCX SPE クリーンアップを用いた主要共抽出物の除去による同重体干渉物量の削減
- Xevo™ タンデム四重極の独自の機能である RADAR を使用して、頑健な分析法開発を簡素化および加速
- 単一ラボバリデーション用の CEN 標準試料の許容基準に準拠した、良好な分析法の回収率と優れた再現性を実現
- 定量限界が非常に低くできることから、ピロリジジンアルカロイドの合計最大値が 75 μg/kg と低い可能性のある乳児や幼児向けの製品中の PA の分析に、この分析法が採用できる可能性を実証
はじめに
PA は、植物のみによって生合成される毒素であり、草食動物に対抗するための典型的な植物二次代謝物です。約 6,000 種の植物(全ての顕花植物の 2%)が、PA を産生できると推定されています1。 現在まで、600 種を超える植物に PA の存在が確認されており、そのほとんどはAsteraceae(キク科)、Boraginaceae、および Fabaceae(マメ科)科に属します。近年、いわゆる「PA 含有植物」から製造したものではない食品、ハーブティー、茶に比較的高レベルの PA 汚染があることを明らかにした報告が増加していますが、この汚染は主に収穫時の二次汚染によるものです2。
PA は、その遺伝毒性および発癌性により、食品および飼料中に含まれる望ましくない物質と見なされており、そのため 2011 年に EFSA 意見の対象になりました3。 さまざまなリスク評価の結果に基づき、茶/ハーブティーおよびその他の食品にかなりの量の PA が含まれる可能性があるという事実は、重要な食品安全性上の問題とみなす必要があります。2017 年、EFSA は、はちみつ、茶、ハーブティー、および栄養補助食品中の PA の存在に関連するヒトの健康に対するリスクに関する声明を発表しました4。 CONTAM パネルは、1 日あたり 237 μg/kg(体重あたり)という新しい基準点を設定して PA の発癌リスクを評価し、PA への曝露に関連するヒト(特に、茶やハーブティーを頻繁かつ多量に摂取する人)の健康に対する懸念が存在すると結論付けました。これらの試験に基づいて、欧州委員会は、ハーブ、スパイス、茶、ハーブティー、花粉製品などの特定の食品に PA の最大レベルを設定しました。最大レベルとは、35 種の PA の合計の「下限」を指し、2022 年 7 月 1 日から施行された EC 規制(EU)2020/20405 および(EC)1881/2006 改正案に定められています。例えば、茶の大半における PA の最大レベルは 150 μg/kg で、クミンの値は 400 μg/kg に設定されています。
PA にはヒトの健康にリスクを及ぼすため、食品検査を行うラボでは、PA の定量測定に適した確認法を開発し、バリデーションする必要があります。現在、質量分析検出を用いる分析法のみが、食品および飼料中の微量レベルの PA を分析できる要件になっています。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)と、食品および飼料中のマイコトキシンおよび植物毒素に関する EU レファレンスラボ(EURL-MP)は、植物性の食品および飼料物質およびはちみつ中の特定の PA 群を測定するためのバリデーション済みの分析法を発表しました6-8。 ただし、BfR 法には、規制にリストされているすべての PA は含まれておらず、異性体化合物のさまざまな共溶出が示されています。一方、EURL-MP 法では、逆相 SPE クリーンアップ前の中和ステップと二重条件クロマトグラフィー(酸性および塩基性)を利用して、特定の異性体化合物の分離が改善されています。この分析の主な課題は間違いなく同一の MRM トランジションを示す多数の異性体が存在する点であり、これをクロマトグラフィーの次元で解決することは極めて困難です。
この試験では、UPLC-MS/MS を用いて植物性の食品およびはちみつ中の 35 種の EU 規制対象 PA を定量するための簡素化したアプローチを説明し、単一のクロマトグラフィー分析で多数の異性体を分離することに成功しています。提案している分析法は、社内でバリデーションされ、真度や精度などの性能パラメーターが評価されています。さらに、Oasis MCX SPE を使用したクリーンアッププロトコルの選択性向上が、MRM とフルスキャン MS の両方を同時に取り込む取り込みモードである RADAR を使用することで実証されました。これにより、このプロトコルは、ルーチン定量分析時のマトリックス干渉をモニターし、分析法開発を最適化するための Xevo タンデム四重極の有用な機能になります9。
実験方法
溶液および標準試料
ピロリジジンアルカロイド分析用標準試料は、PhytoPlan(ドイツ、ハイデルベルク)から購入しました。個々のストック溶液(2,500 μg/mL)は、各化合物 10 mg を 4 mL のメタノールに溶解して調製しました。35 種の PA すべてのストック混合液(15 μg/mL)は、H2O:メタノール 95:5(v/v)中に調製しました。マトリックスマッチドキャリブラントは、各サンプル種類のサンプルブランク抽出物を使用して、ストック混合液の連続希釈によって調製しました。ストック溶液は -20 ℃ で保存しました。
サンプルの説明および前処理
検査サンプルは、最寄りの店で購入した緑茶、カモミールとルイボスのハーブティー、オレガノ、クミンの種、はちみつです。サンプルの種類ごとにプールしたサンプルを作成し、回収率の実験およびマトリックスマッチド検量線に使用しました。抽出前に、植物性食料品はインパクトミル(IKA、英国オックスフォード)を使用して粉砕・均質化し、はちみつサンプルは撹拌してから遠心チューブ中に秤量しました。
サンプル抽出およびクリーンアップ
植物性食品
茶、ハーブ、スパイス、ハーブティー用のサンプル前処理メソッドは、Kwon Y. ら(2021)10 および Jeong S. H. ら (2021) が使用したメソッドに基づいています11。均質化したサンプルの一部(1 ±0.01 g)を 50 mL のプラスチック遠心分離チューブ中に秤量しました。サンプルは、50 mM 硫酸の H2O:MeOH 1:1(v/v)溶液 20 mL を用いて自動ボルテックスで 10 分間抽出しました。チューブは 5,000 g で 10 分間遠心分離機にかけた後、2 mL の上清を、事前に 3 mL の MeOH でコンディショニングし、3 mL の H2O で平衡化した Oasis MCX カートリッジ(6 cc、150 mg、製品番号:186000256)にロードしました。このカートリッジを 4 mL の H2O および 4 mL の MeOH で洗浄しました。PA は、2.5% NH4OH 含有 MeOH 4 mL で、シランで処理したガラスチューブ中に溶出しました(最大流速はすべての段階で 1 滴/秒)。次に、精製した抽出物を、50 ℃ の穏やかな窒素流で蒸発乾固し、500 μL の H2O:MeOH 95:5(v/v)に再溶解しました。この抽出物を、直径 13 mm の 1.2 μm グラスファイバーシリンジフィルターを用いて、分析用 TruView™ LCMS 認定マキシマムリカバリーバイアル(製品番号:186005662CV)中にろ過しました。全体的なサンプル希釈率は 5 倍でした。
はちみつ
はちみつのサンプル前処理メソッドは、Kowalczyk E. ら (2018) が使用したメソッドに基づいています12。 均質化したはちみつサンプル(2 ± 0.01 g)を 50 mL プラスチック遠心チューブ中に秤量しました。このサンプルを、20 mL の 50 mM 硫酸に完全に溶解するまでチューブを振とうし、続いて 10 分間自動ボルテックスして抽出しました。チューブは 5,000 g で 10 分間遠心分離機にかけた後、2 mL の上清を事前に 3 mL の MeOH でコンディショニングし、3 mL の H2O で平衡化した Oasis MCX カートリッジ(6 cc、150 mg、製品番号:186000256)にロードしました。このカートリッジを 6 mLの H2O および 6 mL の MeOH で洗浄しました。PA は、1% NH4OH および 1% トリエチルアミンを含む酢酸エチル:メタノール:アセトニトリル(80:10:10、v/v/v)からなる 6 mL の溶媒混合液で、シランで処理したガラスチューブ中に溶出しました(最大流速はすべての段階で 1 滴/秒)。次に、精製した抽出物を、50 ℃ の穏やかな窒素流で蒸発乾固し、1 mL の H2O:MeOH 95:5(v/v)に再溶解しました。抽出物は、TruView LCMS 認定バイアル(製品番号:186005666CV)に移して分析しました。全体的なサンプル希釈率は 5 倍でした。
LC 条件
クロマトグラフィーシステム: |
ACQUITY™ UPLC I-Class PLUS システム(カラムマネージャーを搭載) |
オートサンプラーおよびインジェクター: |
フロースルーニードルインジェクター(FTN)、15 µL ニードル |
カラム: |
ACQUITY UPLC BEH™ C8(2.1 × 100 mm、粒子径 1.7 μm、ポアサイズ 130 Å、製品番号 186002878) |
水系移動相: |
5 mM ギ酸アンモニウム水溶液 + 0.1% ギ酸(v/v) |
有機移動相: |
アセトニトリル溶液(v/v)+ 0.1% ギ酸(v/v) |
ニードル洗浄溶媒: |
水:メタノール:アセトニトリル:イソプロパノール 20:40:20:20 + 0.5% ギ酸(体積比) |
シール洗浄溶媒: |
水:メタノール 80:20(v/v) |
カラム温度: |
40 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
5 µL |
流速: |
0.30 mL/分 |
MS 条件
MS システム: |
Xevo TQ-S micro |
イオン化モード: |
ESI+ |
取り込みモード: |
マルチプルリアクションモニタリング(MRM) |
キャピラリー電圧: |
+0.75 kV |
コーンガス流量: |
50 L/時間 |
脱溶媒温度: |
600 ℃ |
脱溶媒ガス流量: |
850 L/時間 |
イオン源温度: |
150 ℃ |
分解能: |
MS1 ユニット、MS2 ユニット |
ソフトウェア: |
定量用 waters_connect™(v. 1.0.)データ取り込みおよび解析用 |
化合物の最適化
10 μg/mL の個別の化合物溶液を 5 μL/分で注入し、0.3 mL/分の移動相(1:1 水系:有機)と合わせました。最適化ツールを使用して、最適なプリカーサーイオン -> プロダクトイオン MRM トランジション、コーン電圧、およびコリジョンエネルギーを自動的に取得しました。ソース電圧、ガス流量、温度は、最も感度の低い化合物に基づいて最適化しました。
最適化ツールは、各分析種の最適な MRM パラメーターを 1 分未満で返します。必要とされるのは、モニターする化合物の名前、モノアイソトピック質量または分子式、および付加イオンの指定のみです。出力内容として、ツールでは相対強度ごとに並べ替えた MRM のリストが生成され、これによって双方向プロットを使用してコーン電圧とコリジョンエネルギーを手作業で微調整することができます(図 2)。
分析法のバリデーション
この分析法の真度を、緑茶、カモミール茶とルイボス茶、オレガノ、クミンの種、およびはちみつのブランクサンプルに 35 種の PA 混合物を 3 つの濃度レベル(1 μg/kg を 3 回繰り返し、20 μg/kg を 6 回繰り返し、250 μg/kg を 3 回繰り返し)でスバイクして評価しました(濃度はそれぞれの個別の化合物濃度)。次に、前のセクションで説明したように、ブランク試料およびスパイク済みサンプルを抽出して分析しました。分析法の再現性は、標準偏差および %RSDr によって評価しました。
この分析法の性能を、マイコトキシン分析法の単一ラボバリデーションに関するドキュメント CEN/TR 16059:2010 に記載されている基準を用いて評価しました13。
結果および考察
クロマトグラフィー
現在の分析法の開発において、35 種の PA すべてを良好にクロマトグラフィー分離することが最大の課題であることは間違いありません。35 種の化合物中 28 種に 10 組の異性体があり、そのうち 14 種は逆相・順相両方の液体クロマトグラフィーで共溶出することが知られているためです。実際、ベースライン分離の困難さはよく知られており、これは、EU 規制において、個々の化合物に限度を設定するのではなく、PA の合計に対して最大限度が設定された理由の 1 つでした。
分析法開発の段階において、異性体のクリティカルペアの分離を向上させる目的で、一連の異なる条件を試験しました。
BEH C8 2.1 × 100 mm(1.7 μm p.s)は、単一の方法ですべての化合物にわたってクロマトグラフィー分離の優れた妥協策となったため、このカラムを分析法のバリデーション用に選択しました。最適化した LC 条件を実験方法のセクションに記載します。35 種の PA をスパイクした茶の抽出物の代表的なクロマトグラムを図 3 に示します。異性体化合物であるヘリオスピン/エチミジン、スパルチオイジン N-オキシド/セネシフィリン N-オキシド、インテゲリミン/セネシベルニン/セネシオニン、スパルチオイジン/セネシフィリン、ウサラミン N-オキシド/レトロルシン N-オキシド(図 4 の例を参照)においてベースライン分離が得られました。一方、リコプサミン + インジシン(RT = 3.99 分)、リンデリン + エチナチン(RT = 4.09 分)、インテルメジン N-オキシド + インジシン N-オキシド(RT = 4.87 分)、およびインテゲリミン N-オキシド + セネシベルニン N-オキシド(RT = 10.65 分)の 4 対の共溶出異性体は、それぞれの合計として定量しました。保持時間の精度は優れており、それぞれの分析バッチ内で保持時間のシフトは ± 0.03 分未満でした。
直線性および定量限界
二次近似と重み付け係数(1/x)を使用して、マトリックスマッチド検量線を作成しました。分析法の直線範囲は、さまざまなサンプル種類にわたるすべての化合物について 0.6~250 μg/kg でしたが、例外を表 3 に示します。検量線の決定係数(R2)は > 0.9900 で、残差はすべての化合物にわたって ±20% 以内でした。装置検出限界(i-LOD)14 を溶媒標準試料について計算したところ(LOD レベルでシグナル対ノイズ比 3 以上)、個別の PA について 0.001 ~ 0.02 ng/mL(オンカラムで 5 ~ 100 fg に相当)の範囲でした。分析法の定量限界(m-LOQ)は、キャリブレーション範囲の最低レベル(シグナル対ノイズ比 10 以上の場合)を採用しました。共溶出する異性体の m-LOQ(合計で表示)は 1.2 μg/kg で、個別の PA の m-LOQ は 0.6 μg/kg でした。表 3 に、緑茶、カモミール茶、ルイボス茶、オレガノ、クミンの種、はちみつの i-LOD、m-LOD、m-LOQ、および直線性範囲を示します。この分析法の直線性の範囲により、試験した食品の通常レベルの規制検査で見つかるピロリジジンアルカロイドの測定が可能になりました。試験したすべてのサンプルのイオン比は、同じシーケンスのキャリブレーション標準で計算された平均イオン比の ±30% 以内でした。
真度と再現性
ブランクサンプルへの 3 濃度レベルでのスパイクを行った回収率実験によって真度を評価しました。PA のパネル全体を考えた場合、すべてのスパイクレベルにわたる平均回収率は、緑茶で 85 ± 10%、カモミール茶で 91 ± 8%、ルイボス茶で 92 ± 10%、オレガノで 87 ± 10%、クミンの種で 103 ± 6%、はちみつで 77 ± 10% でした。植物由来サンプル中のすべての PA についての回収率は 62% 以上でしたが、はちみつのエチナチン N-オキシド、オイロピン N-オキシド、リコプサミン N-オキシド、およびリンデリン N-オキシドでは、回収率は 50% ~ 60% でした。ただし、すべての化合物の再現性条件における RSD% は、すべてのスパイクレベルにわたって 10% 未満であり、回収率の補正係数を適用しても精度が損なわれないため、補正係数の適用が可能です。また、はちみつの場合は、手続き上のキャリブレーションを使用して回収率の低下を補正することもできます。再現性は良好で、ほとんどの場合 RSDr%は 10% 未満で、いずれの場合も 20% を超えることはありませんでした。回収率は表 4 および図 5 に示しています。
クリーンアップとマトリックス効果の影響
ハーブやスパイスなどの植物由来のサンプルの大半には、望ましくない物質が高濃度で存在するため、ある程度の抽出後クリーンアップが必要です。この試験では、分析法の性能を低下させ、システムを汚染する可能性があるマトリックス共抽出物の一部を Oasis MCX SPE を使用して除去しました。ここで採用した SPE プロトコルは、標準的なロード-洗浄-溶離法に基づいており、酸性条件下でプロトン化した塩基性化合物(アルカロイドなど)に対して陽イオン交換メカニズムを利用しています。洗浄ステップの後、カートリッジからすべての PA を選択的に回収するには、塩基性溶媒で溶出することが不可欠です。
SPE クリーンアップの利点を説明するため、濃縮および再溶解の前に SPE クリーンアップを実施または実施しないで抽出を行った 35 種の PA をスパイクした茶サンプルのクロマトグラムを取得しました。この試験では、MRM とフルスキャン MS を同時に取り込む RADAR という取り込みモードを使用しました。2 つのモード間の切り替えがわずか 5 ミリ秒で行われるため、デューティーサイクル時間を最小限に抑えつつ、ピーク全体にわたるデータポイントの数を最大化できます。図 6 では、粗抽出物のフルスキャンクロマトグラムにクリーンアップ済み抽出物のフルスキャンクロマトグラムを重ね描きしています。精製済み抽出物のトータルイオンカレント(TIC)のシグナルが、粗抽出物と比較して大幅に減少していることが明らかです。これには、LC-MS/MS に導入されるマトリックス共抽出物の量を大幅に低減し、同重体干渉の可能性とシステムの汚染を低減する効果があります。
複雑なマトリックス中の PA の正確な定量は ESI のマトリックス効果の影響を受け、シグナル抑制またはシグナル増強が引き起こされる可能性があります。はちみつや茶などの異なる食料品や、同じ種類の個々のサンプルの間には、マトリックス効果の程度に差があることが予想されます。
そこで、クリーンアップ済み抽出物ごとに、正味のマトリックス効果を以下の式で計算しました。
%ME =(bM/bS-1)* 100
ここで、bM および bS は、それぞれマトリックスマッチド検量線および溶媒検量線の勾配です。正味のマトリックス効果は -76 ~ +282% の範囲となりました(図 7 参照)。負の値はマトリックスによるシグナル抑制、正の値はシグナル増強を表します。つまり、SPE クリーンアップには正の効果があるものの、マトリックスマッチド検量線を使用する必要があることが実証されます。
結論
さまざまな植物性食料品およびはちみつにわたる 6 種類のマトリックス中の 35 種のピロリジジンアルカロイドすべての定量測定について、適切な UPLC-MS/MS 法を開発し、バリデーションしました。
この規制の範囲内に複数の特定の異性体がリストされているため、従来のクロマトグラフィー条件下では、1 つの完全な分析法を使用して分離することは非常に困難です。35 種の分析種のうち、27 種をベースライン分離することができました。一方、4 組の共溶出する異性体、つまりリコプサミン + インジシン、リンデリン + エチナチン、インテルメジン N-オキシド + インジシン N-オキシド、およびインテゲルリミン N-オキシド + セネシベルニン N-オキシドは合計として定量しました。
Oasis MCX SPE クリーンアップを使用した、最適化されたサンプル前処理手順は、PA と共溶出する可能性のある干渉物を低減するのに非常に有効であることがわかりました。
分析法の性能を、検出および定量の真度、再現性、直線性、および限界を評価することによって確立することができました。調査したすべてのマトリックスにわたり、LOD/LOQ が、EU 規制で定められている最大限界値を大幅に下回っています。したがって、この分析法は、PA の合計の最大レベルが 75 μg/kg と定められている乳児および幼児向けの食品の検査に使用できることが示されました。
参考文献
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