ACQUITY™ RDa™ 検出器と RemoteAnalyzer® ソフトウェアを組み合わせることで、ウォークアップ環境においてシンプルかつ迅速で精密質量情報を獲得

このアプリケーションノートでは、ACQUITY RDa 検出器をブラウザーベースの RemoteAnalyzer ソフトウェア（SpectralWorks-Runcorn、UK）と組み合わせて使用することで、シンプルで直感的なプラットホームが実現でき、合成化学者がウォークアップ環境において精密質量測定を行えることを実証します。

アプリケーションのメリット

• 合成化学者が API（医薬品有効成分）および関連不純物の質量確認を行うための精密質量測定のルーチン利用が実現
• RDa Tof（時間飛行型）検出器の高速スキャンレートにより、定性的データを損なうことなく UPLC™ グラジエントを迅速化
• 電子メールで迅速に結果が得られ、反応結果に基づく意思決定が迅速かつ簡便に
• 必要に応じてユーザーの役割ごとに特定のアクセス権を付与するように、RemoteAnalyzer ソフトウェアを柔軟に設定可能

多くの有機化学者は、質量分析（MS）を、生成物および合成反応中に存在する不純物の簡便な確認ツールとして使用しています。

シングル四重極質量分析計ではノミナル質量データのみしか得られず、ターゲット化合物、分解物、不純物、または副反応生成物の誤割り当ての可能性を排除することができません。Tof 高分解能質量分析（HRMS）で得られる精密質量測定により、化合物の特性解析における信頼性が向上しますが、操作には高度な専門知識が求められる場合があります。

シンプルな自動セットアップが可能な ACQUITY RDa 検出器は、様々なレベルの化学者が精密質量の測定をより利用しやすいように設計されています。

直感的な「ポイントアンドクリック」ブラウザーベースの RemoteAnalyzer ソフトウェアにより、単一分析とバッチ分析の両方において、サンプル登録がさらにシンプルになります。

このアプローチのメリットを紹介するため、アンジオテンシン変換酵素（ACE）阻害薬であるラミプリル 2-[N-[(S)-1-エトキシカルボニル-3-フェニルプロピル]-ララニル]-(1S, 3S, 5S)-2-アザビシクロ[3.3.0]オクタン-3-カルボン酸（CAS 番号87333-19-5）に、4 種類の関連不純物（ラミプリルイソプロピルエステル、ラミプリルジケトピペラジン、ラミプリルメチルエステル、ヘキサヒドロラミプリル）を 0.1%（w/w）になるようにスパイクし、それぞれ A-D とラベル付けして ACQUITY RDa で分析しました。

（ACE）阻害薬は、高血圧を調節できる重要な治療薬のクラスを構成しています。

ラミプリルの化学構造およびその潜在的関連不純物を表 1 に示します。

サンプル登録と解析は RemoteAnalyzer ソフトウェアによって制御しました。データ取り込みは UNIFI で行い、取り込んだ生データは RemoteAnalyzer の処理とは別にそのまま残しました。

サンプルの説明

ラミプリルのサンプルに、4 種類の関連不純物（A ～ D）を 0.1% w/w の濃度になるようにスパイクしました。すべての標準試料はヨーロッパ薬局方の標準試料であり、Merck（英国、Dorset）から入手しました。

メタノール中にラミプリルの 1 mg/mL 溶液を調製し、不純物（A ～ D）を 200 µg/mL の濃度で個別に調製しました。980 µL のラミプリル溶液を各 5 µL の不純物溶液とともにバイアルに移し、API について 0.1%（w/w）の不純物溶液を調製しました。この溶液を 100 µL バイアルに移し、900 µL のメタノール：水（80：20）で希釈しました。

分析には ACQUITY UPLC I-Class PLUS バイナリーシステムを使用し、実行時間 4 分間のシンプルなグラジエントで行いました。図 1は、不純物をスパイクしたラミプリルサンプルの分析における、ワークフローにしたがった RemoteAnalyzer ブラウザーでの登録の概要です。

ACQUITY RDa 検出器は、検出器、自動チューニング、質量キャリブレーションを含めて、自動的にセットアップされました。このルーチンのセットアップの後、MS フルスキャンの精密質量データを、キャピラリー電圧 1.5 kV およびコーン電圧 30 V で取り込みました。

カラム温度 40 ℃ での初期のクロマトグラフィー条件では、保持時間約 2 分あたりに非常に広い共溶出ピークが見られました。プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒のどちらで実験しても、クロマトグラフィーの不良の程度は軽減しませんでしたが、カラム温度を 80 ℃ に上げると、検出されたすべての化合物のピーク形状と分離が大幅に向上しました。エチレン架橋型パーティクルカラムテクノロジーはこのような温度での動作が保証されており、これを選択しても、酸性条件下でのカラムの寿命に悪影響が及ぶことはありません¹。

サンプルを登録すると、分析リクエストが正常に受信されたことを確認する電子メールが送信されます。サンプル分析が完了すると、分析ワークフローの手順 1 ～ 6 が正常に完了したことを確認する電子メールが届きます。

電子メールで送信された結果には、提案されたすべての組成式を記載した PDF ドキュメントが含まれています（図 2）。また、電子メールにはハイパーリンク（強調表示）が含まれており、これをクリックすると、RemoteAnalyzer ソフトウェア内のサンプルレビューページに移動します。このページには、PDF のコピーと検出された個々の成分の .swrcファイル（RemoteAnalyzer 固有のファイル型式）へのリンクがあります。.swrc ファイルを選択すると、拡大可能な TIC（トータルイオンクロマトグラム）と EIC（抽出イオンクロマトグラム）および各分析種の抽出スペクトルが含まれるインタラクティブな結果ページが開きます（図 3）。

図 4 に、RemoteAnalyzer ソフトウェアと得られたクロマトグラフィーから取得した TIC（トータルイオンクロマトグラム）を示します。RemoteAnalyzer で生成されたレポートを表 2 にまとめており、すべての化合物について優れた ppm 誤差レベルであることがわかります（すべての化合物について -0.1 ～ 2 ppm）。

このクロマトグラフィーでは、イソプロピルエステル不純物と API がわずかに共溶出していますが、飛行時間型検出のフルスキャンが高速であるため、正確な定量的波形解析と近接して溶出するピークの正確な割り当てが可能です²。

ACQUITY RDa 検出器と RemoteAnalyzer ソフトウェアを組み合わせることで、合成化学者は精密質量測定をルーチン利用できます。
ラミプリルおよび 4 種類のスパイクした類縁物質がすべて、UPLC の実行時間 4 分で、2 ppm 以内という優れた質量精度で検出されました。
高速スキャンレート RDa 検出器では、定性的質量測定を損なうことなく、迅速な UPLC グラジエントを使用できるため、効率的で確実なサンプル処理時間が実現します。
RemoteAnalyzer ソフトウェアをベースにしたブラウザーによりサンプル登録と解析を制御することで、装置を制御する PC に戻る必要なく、どこからでもデータをリモートで読み出してレビューできます。

1. A Review of Waters Hybrid Particle Technology.Part 2: Ethylene Bridged [BEH Technology™] Hybrids and Their Use in Liquid Chromatography.
2. Alelyunas YW, Wrona MD, Cook K, McDonald S, Rainville P: Effect of MS Scan Speed on UPLC Peak Separation and Metabolite Identification: Time-of-Flight HRMS v Orbitrap.