VanGuard™ FIT(完全統合テクノロジー)カラム:HPLC カラムを保護するための実用的で信頼性の高いソリューション
要約
アプリケーションによっては、HPLC カラムにおいて、粒子状物質や吸着性の強い物質がカラムにトラップされ、カラム圧が上昇して性能が低下することがあります。この問題に対する最も信頼性の高い解決策は、ガードカラムを使用して、粒子状物質や吸着性の強い物質が分析カラムに到達するのを防ぐことです。ガードカラムは定期的に交換するように設計されており、これにより、分離性能が回復します。ガードカラムを使用すると、カラムの汚れの問題は解決されますが、カラム効率の低下とカラム外拡散の増加により、ピークのテーリングが増加するというマイナス面が生じる可能性があります。VanGuard FIT カラムでは、その設計によりカラム外拡散が低く抑えられるため、分離性能を犠牲にすることなく、ガードカラムのメリットを活用することができます。
アプリケーションのメリット
- VanGuard FIT カラムでは、従来のガードカラム構成と比較してカラム外拡散が低減
- 追加の接続を行う必要がないため、リークのリスクが低減
- 接続の一貫性が向上し、より一貫した結果が得られる
はじめに
HPLC カラムの寿命は多くの要因に依存し、そのうちの 1 つは、粒子状物質や吸着性の強い物質の蓄積による汚染の程度です。このような汚染は、移動相(微生物やバッファーの沈殿物など)、HPLC システム、サンプルなど、いくつかのソースに由来します。カラムは非常に効率の良いフィルターであるため、流路内に存在する粒子状物質やカラムに注入された粒子状物質はすべてトラップされる可能性があります。時間の経過とともに、これによりカラム圧の上昇や性能の低下につながることがあります。この問題に対する最も信頼性の高い解決策は、ガードカラムまたはカートリッジを使用することで、これにより、粒子状物質や吸着性の強い物質が分析カラムに到達するのを防げます1。ただし、ガードカラムを使用するとカラム外拡散が増加し、効率の低下やピークのテーリング増加を引き起こします。この問題の程度は、ガードカラムの設計、特に分析カラムへの接続の仕方によって異なります。カラム効率が重要な一部のアプリケーションでは、ガードカラムにメリットがあっても、カラム寿命の削減と高い運用コストという選択を余儀なくされる場合があります。
このアプリケーションノートでは、XP VanGuard カートリッジおよびホルダーを取り付けた 2.1 mm XP BEH™ C18 2.5 µm カラム(図 1a)、ACQUITY™ VanGuard プレカラムを取り付けた 2.1 mm ACQUITY BEH C18 1.7 µm カラム(図 1b)、および MaxPeak™ Premier 2.1 mm BEH C18 1.7 µm FIT カラム(図 1c)の性能を、ガードなしの同等のカラムと比較します。
結果および考察
使いやすさ
VanGuard FIT カラムについてユーザーが最初に気付くことは、その使いやすさです。設計から接続チューブが除かれ、カートリッジはカラムインレットに直接接続されます。交換用カートリッジは、レンチを 1/4 回転させて、カートリッジをカラムインレットに適切に密封接続するだけで、簡単に取り付けられます。フェラルが緩く不適切にセットされることがなく、液漏れの可能性は極めて低く抑えられています。
一方、従来の VanGuard カートリッジとホルダーの組み立ては複雑で、カラムに正常に取り付けるには、手の器用さがある程度必要です。フェラルをセットする際、2 本のレンチを用いて同時に下向きの圧力をかけ、接続チューブがカラムインレットに完全にはまるようにする必要があります。接続チューブの不適切な飛び出しによりボイドスペースが生じると、カラム外拡散が増加します。
取り付けの複雑さがカラムの性能にどのように影響するかを説明するために、ユーザー 3 名に XP VanGuard カートリッジとホルダーを 2.1 × 100 mm XP BEH C18 カラムに取り付けるよう頼みました。表 1 に、USP カラム効率および USP テーリング係数のレスポンスに及ぼす影響(%)を示します。ここで、影響(%)は次のように計算します。
取り付け前に設置手順 2,3 を参照していないユーザーもいました。A さんと C さんは、ホルダーをカラムに正しく取り付けてから、カートリッジを取り付けました。B さんは、まずカートリッジをホルダーに取り付け、次に組み立てたユニットをカラムに取り付けました。取り付け方法が異なると、ユーザー間でカラム性能に許容できないほどの差が生じることがあります。
分析カラムの性能に対する影響
VanGuard FIT ガードカラムカートリッジの主なメリットは、カラム効率への影響が非常に小さいことです。設計から接続チューブが除かれているため、通常のガードカラムと比較してカラム外拡散が大幅に低減しています。カートリッジがカラムインレットに直接に密閉接続されるため、一貫性と信頼性が高く、リークのない性能が得られます。
ACQUITY VanGuard プレカラムとホルダー付き XP VanGuard カートリッジの影響を調べるため、2 セットの 18 種のカラムに 1.7 µm BEH C18 の充塡剤または 2.5 µm BEH C18 充塡剤を詰めました。構成/粒子径の組み合わせごとに 6 本ずつのカラムを試験に含めました。
まず各カラムの USP カラム効率と USP テーリング係数を測定し、次に、VanGuard プレカラム(1.7 µm)またはホルダー付き VanGuard カートリッジ(2.5 µm)を取り付けてから再試験し、影響(%)を計算しました。カラム効率は、保持係数約 2.1 の中性低分子分析種について、アイソクラティック逆相条件下で測定しました。すべてのケースで、同じガードカラムを 1 つのカラムから次のカラムに移すのではなく、新品のプレカラムまたはホルダー付きカートリッジを取り付けています。図 4 のデータから、BEH C18 1.7 µm VanGuard FIT カラムでは効率がガードなしのカラムと同等ですが、従来のガードカラム構成ではカラム効率が約 10% 低下していることがわかります。
VanGuard FIT カラムは Waters™ Operations によって組み立て済みで試験されているため、VanGuard FIT カラムの効率を、ガードカラムなしの同等のカラムと直接比較することができます。BEH/CSH™/HSS 2 µm 以下のケミストリーの数千ものデータポイントをレビューしたところ、2.1 mm カラムの場合、VanGuard FIT カラムの効率は、同等のサイズのガードなしカラムと比較して、わずか平均 3.2% 低いだけであることがわかりました(図 5 参照)。これは、ACQUITY UPLC カラムに取り付けた VanGuard プレカラム(各ケミストリーについて n=3)について測定された効果の平均 10.5% の 3 分の 1 を下回る値です。
結論
VanGuard FIT カラムは、取り付けが容易で、カラム効率に対する悪影響がほとんどないため、ガードカラムの使用が役立つアプリケーションに最適です。VanGuard FITカラムは、粒子状物質がベッドにトラップされることによる性能低下から分析カラムを効果的に保護しますが4、同等のガードなしカラムと比較した場合のカラム性能に対する影響が大幅に低減しています。VanGuard FIT カラムでは、従来のガードカラムで発生する可能性のある変動要因を排除することにより、ユーザー間での結果の一貫性も向上します。
参考文献
- Berthelette KD, Alden BA, et al. Extending Column Lifetime using VanGuard™ Fully Integrated Technology (FIT) Column Protection.Waters Application Note 720007713.2022)。
- VanGuard Column Protection Care and Use Manual.720005317.
- ACQUITY UPLC and ACQUITY Premier BEH Columns Care and Use Manual. 715001371 Rev. K. 2021.
- Shiner S, DeLano M, et al. VanGuard FIT: A Breakthrough in Guard Column Performance for Challenging Chromatographic Separations.Waters Application Note 720006500.2019.
ソリューション提供製品
720007832JA、2022 年 12 月