イムノアフィニティークロマトグラフィーと Arc™ HPLC システムを用いたトウモロコシおよびピーナッツ中のアフラトキシンの分析
要約
アフラトキシンは、菌類によって産生される発がん性化合物であり、食品や飼料中の最大レベルなどの規制により、世界中で管理されています。このアプリケーションノートでは、蛍光検出器を搭載した Waters Arc HPLC システムを使用した既存の AOAC 分析法の改良について説明します。AflaTest™ WB イムノアフィニティークロマトグラフィー(IAC)を使用して、効果的なサンプルクリーンアップステップが実現しました。トウモロコシやピーナッツ中の回収率が 90% を超え、EU の基準を満たしています。この分析法は、規制限界への準拠の確認に適していることが実証されています。
アプリケーションのメリット
- ウォーターズの新しい Arc HPLC システムは、アフラトキシンの分析に正常に使用でき、以前に AOAC 分析法で使用していた条件を満たすまたは上回る
- Arc HPLC システムはより高流速で実行できるため、実行時間が短縮し、フォトケミカルリアクターを使用しないという選択肢が可能になる
- AflaTest イムノアフィニティーカラムのクリーンアップに使用された元のプロトコルが改良され、サンプル前処理にかかる時間が短縮し、アフラトキシンの回収率が規制当局の許容基準を満たした
- 本研究の Arc HPLC 条件を使用して、ベビーフードなどの他の種類の食品や飼料中のアフラトキシンを分析できる
はじめに
アフラトキシンは、Aspergillus の複数の菌株によって産生される一群の真菌代謝物で、シリアル、スパイス、ナッツ、ドライフルーツなどの多くの食品に含まれています1-3。 菌類は、収穫前および収穫後の状態の生の農産物に混入することもあれば、最終食品製品中に存在することもあります。アフラトキシンは、ヒトおよび他の哺乳動物において毒性および発がん性の原因になり、これらはアフラトキシン症と呼ばれます。関心が持たれているアフラトキシン類として主に B1、B2、G1、G2 が知られています1。 アフラトキシン B1 は、このグループの中で最も存在量が多い毒性化合物であり、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関によって、グループ 1 の発がん物質にランク付けされています。
食品や飼料中のアフラトキシン汚染が原因で発生するヒトと動物の健康への影響に対する懸念から、多くの国で、アフラトキシンの最大許容レベルを含む、アフラトキシンのレベルを管理する規制が公布されています4。この分野で現在発表されている論文についての最近のレビューで、ヒトが消費する食品の規制限界である 20 µg/kg(米国)および 4 µg/kg(欧州連合)を超えるレベルでの、食品中アフラトキシン汚染が多数発生していることが示されています5。このことから、田畑から消費者までのあらゆる段階でマイコトキシンの予防、管理、定期モニタリングを効果的に行うための戦略として、分析試験を増やすことの必要性が強調されます。
蛍光検出器(FLD)搭載高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、液液抽出および IAC クリーンアップ後に、食品や飼料中のアフラトキシン濃度を測定するのに使用される重要な分析手法です。HPLC(Alliance)と UPLC(ACQUITY)のプラットホームおよび蛍光検出を使用し、HPLC のポストカラム誘導体化で補助する分析が以前に実証されています6。Arc HPLC は、クオータナリーベースの LC システムで、これを使用することで、キャリーオーバーの最小化、耐背圧性能の上昇、プライムおよびシステムの準備の自動化などのメリットにより、既存の分析法の性能を改善することができます7,8。Arc HPLC システムの優れた耐圧性能によって、より小さな粒子を充塡したカラムによる高流速条件での分析が可能となり、分析時間の短縮と移動相消費量の削減が実現します。
本研究の目的は、アフラトキシン分析向けの既存の AOAC 分析法を新しい Arc HPLC システムに移管し、食品や飼料中のアフラトキシンの規制限度への準拠の確認に必要な非常に低濃度での分析法の性能の改善を確立することでした。
実験方法
サンプルの詳細情報と前処理
トウモロコシおよびピーナッツは市販品を入手し、粉砕してから抽出を行いました。
この試験では、公式の AOAC 分析法 991.31 を改変したバージョンを使用しました9。AflaTest WB(VICAM カタログ番号G1024)は、アフラトキシン分析を加速するように設計された IAC クリーンアップカラムで、AOAC 公式分析法 991.31 のアフラトキシンイムノアフィニティーカラムの要件を満たしています。サンプル抽出およびアフラトキシンのクリーンアップの詳細の概要を図 1 に示します。粉砕したトウモロコシまたはピーナッツのホモジネートを、塩化ナトリウム(NaCl)およびメタノール(MeOH)と水(H2O)の混合液と混合しました。希釈後、抽出液をアフラトキシンに対する特異抗体を含む AflaTest WB IAC カラムにかけ、洗浄した後、アフラトキシンを溶出しました。この後の分析は、FLD 搭載 Arc HPLC を使用して行いました。AflaTest WBカラムの詳細については、https://www.vicam.com/products/aflatest-wb をご覧ください。
アフラトキシン B1、B2、G1、G2 をそれぞれ 1、0.3、1、0.3 µg/mL の濃度で含むアフラトキシン標準試料は、Sigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入しました。さまざまな濃度のアフラトキシン標準試料を、メタノール:水(50:50、v/v)中に毎日調製しました。
LC 条件
LC システム: |
Arc HPLC |
検出: |
PhCR フォトケミカルリアクター(VICAM 製品番号:600001222)および 2475 蛍光(FLR)検出器 励起 360 nm、蛍光 440 nm |
バイアル: |
不活性アンバーガラス 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(2 mL)(製品番号:186000846DV) |
カラム: |
XSelect HSS T3 カラム、100 Å、3.5 µm、4.6 × 150 mm(製品番号:186004786) |
カラム温度: |
40 ℃ |
サンプル温度: |
15 ℃ |
注入量: |
50 µL |
流速: |
1 mL/分 |
移動相: |
アイソクラティック(水系(水):有機(メタノール)55:45(v/v)) |
分析時間: |
12 分 |
データ管理
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower 3 (CDS) |
シグナル対ノイズ比(S/N)は、Empower Personal System Suitability を使用して計算しました。検出限界と定量限界は、S/N が 3 および 10 とそれぞれ推定しました。コーンミールまたはピーナッツのホモジネートに、トータルアフラトキシン(アフラトキシン B1:B2:G1:G2 の比が 1:0.3:1:0.3)を濃度 0.5、4、50 µg/kg になるように、各濃度につき 3 回繰り返しで添加しました。ブランクと同じ手順を使用して、アフラトキシンをスパイクしていないコーンミールまたはピーナッツのホモジネート中のアフラトキシンを分析しました。アフラトキシンの回収率は、(スパイクサンプルの計算濃度 - ブランクサンプルの計算濃度)/スパイク濃度)*100 として計算しました。アフラトキシンの濃度は、溶媒中の標準曲線を使用して計算しました。分散分析(ANOVA)を使用して、各アフラトキシンの回収率の違いを調べました。統計検定は、SAS(Version 9.4、SAS Institute Inc. Cary、ノースカロライナ州ケーリー)を使用して、有意レベル α= 0.05 を用いて行いました。
結果および考察
Arc HPLC への分析法移管
アフラトキシン分析向けの元の AOAC 分析法 991.31 を、アフラトキシンの誘導体化のためのフォトケミカルリアクターを用い、カラムの選択を更新して、Arc HPLC に移管しました。流速 1 mL/分を用いてアフラトキシンが十分に分離され(分離度 > 1.5)、ピークは 6 ~ 11 分で溶出しました(図 2)。ただし、Arc HPLC の耐圧性能は古い HPLC システムよりも優れているため(最大 9500 psi7)、圧力限界に達することなく流速を増加させることができます。流速を 1.5 mL/分に上げると、分離度が大きく低下することなく、アフラトキシンのピークが早く溶出し(分離度 > 1.5)、分析時間を短縮することができます(図 3)。
検出限界および定量限界
食品中の規制限度が低く、アフラトキシン B1 および G1 が発する蛍光が低いことから、フォトケミカルリアクター(PhCR)システムを使用して得られるポストカラム誘導体化を使用して、アフラトキシンの分析を改善することができます。この設定を使用した場合、流速 1 mL/分で、アフラトキシン B1、B2、G1、G2 の検出限界はそれぞれサンプル中 0.01、0.006、0.02、0.008 µg/kg、アフラトキシン B1、B2、G1、G2 の定量限界はそれぞれサンプル中 0.03、0.02、0.05、0.02 µg/kg でした。システムからフォトケミカル検出器をはずして、分析を行うこともできます。図 4 に、ポストカラム誘導体化していないアフラトキシンの相対レスポンスを示します。PhCR を使用しない場合、流速 1 mL/分でのアフラトキシン B1、B2、G1、G2 の検出限界は、それぞれサンプル中で 0.10、0.005、0.12、0.005 µg/kg に相当しました。
イムノアフィニティーカラムと HPLC を使用してベビーフードのアフラトキシン B1 を分析する AOAC 公式分析法 2000.16 では、ベビーフード中のアフラトキシン B1 の検出限界は 0.1 µg/kg です10。 また、EU では、シリアルベースの加工食品、乳幼児用のベビーフード、特に乳児用の特殊医療目的の食品中のアフラトキシン B1 の最大検出レベルを 0.1 µg/kg に設定しています11。 EU では、ピーナッツ、木の実、およびその他のオイルシーズに含まれる合計 B1、B2、G1、G2 最大レベルは 4 µg/kg です。今回記載したポストカラム誘導体化を使用した分析法は、0.1 µg/kg を大幅に下回る定量限界を示し、ベビーフード中のアフラトキシンを分析するための要件を満たしています。
直線性
元のサンプルにおける分析法の直線性範囲は、0.5 ~ 300 µg/kg(トータルアフラトキシン)の範囲でした。標準曲線の直線性は、検量線の回帰近似からの決定係数(r2)によって決まりますが、すべての化合物について 0.99 を超えていました。
規制によって設定されたアフラトキシンの最大レベルはさまざまです。例えば、EU によって設定された規制食品中のアフラトキシン B1 の最大レベルは、0.1 ~ 12 µg/kg の範囲であり、EU によって設定された規制食品中のトータルアフラトキシンの最大レベルは 4 ~ 15 µg/kg です11。米国食品医薬品局(FDA)によって設定された食品中の最大トータルアフラトキシンレベルは 20 µg/kg 未満で、別の飼料中の最大トータルアフラトキシンレベルは 20、100、200、300 µg/kg です12,13。これらのアフラトキシン値はすべて、この分析法におけるアフラトキシンの標準曲線の直線性範囲内にあります。
アフラトキシンの回収率と再現性
トウモロコシまたはピーナッツの分析で得られたアフラトキシンの回収率の値を、表 1、図 5 および図 6 に示します。ブランクのトウモロコシやブランクのピーナッツからは、アフラトキシンは検出されませんでした。トウモロコシやピーナッツ中のアフラトキシン B1、B2、G1、G2 の回収率の平均値は、3 つのスパイクレベルで 90% を超えていました。トウモロコシとピーナッツの間、または異なるスパイクレベルの間で回収率に若干のばらつきがありますが、アフラトキシン B1、B2、G1、G2 の回収率は、2 種類の食品の間や 3 種類のスパイクレベルの間で有意差がありませんでした(Two-Way ANOVA(2 元配置分散分析)、N=18、P >0.05)。全体として、アフラトキシンの回収率は、すべてのアフラトキシンおよびすべてのスパイクレベルにわたって 90% を超え、回収率の標準偏差(n=9)は 7% 以下でした(表 1)。本研究でのアフラトキシンの回収率は、欧州委員会の勧告値(1.0 µg/kg 未満のトータルアフラトキシンで 50 ~ 120%、1 ~ 10 µg/kg のトータルアフラトキシンで 70 ~ 110%、10 µg/kg 超のトータルアフラトキシンで 80 ~ 110% の回収率)を満たしています14。
結論
アフラトキシン分析向けの AOAC 分析法が Arc HPLC に正常に移管されました。粒子径 3.5 µm のカラムを使用することで分析法が改善され、クロマトグラフィー効率が向上し、分析時間が短縮しました。Arc HPLC は、粒子径の小さいカラムにおける高い背圧に十分に対応できます。さらに本研究により、イムノアフィニティーカラムクロマトグラフィー(AflaTest WB)の抽出液のボリュームを減らし、十分な感度を維持しつつクリーンアップに必要な時間を短縮することが可能であることが実証されました。この新しい分析法により、良好な検出限界および定量限界、適切な直線性範囲、良好な回収率、低い回収率の標準偏差が得られました。これらはすべて、ベビーフードなどの食品や飼料中のアフラトキシンの分析の規制要件を満たすのに必要な条件です。
参考文献
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謝辞
Ting Sun および Nance Collet は、Waters | VICAM と提携しています
720007843JA、2023 年 1 月