• アプリケーションノート

Atlantis™ Premier BEH™ C18 AX カラムを搭載した LC-MS/MS を使用した食品中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩の測定

Atlantis™ Premier BEH™ C18 AX カラムを搭載した LC-MS/MS を使用した食品中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩の測定

  • Ofure Idialu
  • Peter Hancock
  • Simon Hird
  • Eimear Trivedi
  • Euan Ross
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションノートでは、Atlantis Premier BEH C18 AX カラムを搭載し、Xevo™ TQ Absolute MS システムに接続された ACQUITY™ Premier UPLC™ システムを使用して、植物および動物由来の食品中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩を分析するための効率的な分析法について説明します。

アプリケーションのメリット

  • 代表的な食品中の主要なオキソアニオンについて、欧州の規制要件を満たす優れた分析法の性能が、5 分間の分析サイクル内で達成された
  • 低濃度(0.1 µg/kg 以下)での優れた感度により、サンプルの希釈やサンプルの注入量を減らす必要がある場合に、分析法の柔軟性を実感できる

はじめに

塩素酸塩および過塩素酸塩は、食品中に検出される遍在する汚染物質です1,2。 塩素酸塩は、食品製造または食品と接触する表面の洗浄に使用する水の消毒工程の副産物として生成し、過塩素酸塩は肥料を使用する際に検出されます3,4。 塩素酸塩および過塩素酸塩は、ヨウ素の取り込み阻害により、人の健康(特に乳児や小児)に対して高いリスクをもたらし、臭素酸塩は発がん性の可能性がある物質に分類されています1,4,5。 過塩素酸塩および塩素酸塩への曝露の主な経路は、食事からの摂取であると報告されています6。 したがって、欧州の規制要件に準拠するには、食品中の微量レベルのこれらの化合物をルーチンにモニターすることが重要です。

欧州では、食品中の塩素酸塩の最大残留基準(MRL)は、0.01 mg/kg(規則 (EC) No.396/2005)です1。 MRL は、通常の食品中の塩素酸塩について、存在量のデータに基づくレベルに設定されています(委員会規則 (EU) 2020/749)1。 過塩素酸塩の MRL 値は、果物や野菜では 0.05 mg/kg(ウリ科野菜およびケール、葉物野菜、ハーブを除く)、乳児用調製粉乳では 0.01 mg/kg、離乳食では 0.02 mg/kg です(委員会規則 (EU) 2020/685)1。 乳児用調製粉乳の塩素酸塩および過塩素酸塩は、陰イオン性極性農薬(APP)カラムを使用して以前に測定されています7。 ただし、この確立された分析法では、高濃度のギ酸アンモニウムバッファーを使用するため、シグナル抑制が発生する可能性があります。

Atlantis Premier BEH C18 AX カラムの疎水性特性と陰イオン交換特性の組み合わせにより、高濃度のギ酸アンモニウムバッファーを必要とせずに、これらの高極性化合物およびイオン性化合物を容易に分離および保持できるクロマトグラフィー特性が得られます。

このアプリケーションノートでは、Atlantis Premier BEH C18 AX カラムを搭載し、Xevo TQ Absolute MS システムに接続した ACQUITY Premier UPLC システムを使用した、食品マトリックス(植物由来と動物由来の食品の代表としてそれぞれキュウリと乳児用調製粉乳)中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩の測定用に確立された分析法の評価で得られた性能データを紹介します。

実験方法

キュウリと乳児用調製粉乳のサンプルは地元のスーパーで購入しました。試験に用いる部分は、それぞれ QuPPe PO メソッドおよび改変した QuPPe AO メソッドに従って抽出しました8。メソッドの詳細を図 1 および 2 にまとめています。MRM パラメーターは表 1 にリストしています。

メソッドの性能は、SANTE ガイドラインを使用して評価しました9。 マトリックス添加標準試料を、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩について 5 ~ 200 µg/kg の範囲にわたって調製しました。同位体標識標準試料(塩素酸塩-18O3、過塩素酸塩-18O4、臭素酸塩-18O3)を内部標準として使用しました。内部標準は分析の直前に添加しました。

図 1.  植物由来の食品用のサンプル抽出プロトコル
図 2.  動物由来の食品用のサンプル抽出プロトコル

LC 条件

LC システム:

ACQUITY Premier UPLC システム(FTN サンプルマネージャー搭載)

カラム:

Atlantis Premier BEH C18 AX カラム、2.1 × 100 mm、5 µm(製品番号:186009408)

バイアル:

Waters™ TruView™ LCMS 品質保証透明ガラス、12 × 32 mm(製品番号:186005669CV)

移動相 A:

10 mM ギ酸アンモニウム + 0.1% ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% ギ酸アセトニトリル溶液

流速:

0.5 mL/分

カラム温度:

50

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

2.5 µL

グラジエントテーブル

MS 条件

MS システム:

Xevo TQ AbsoluteMS

イオン化モード:

ESI -

取り込みモード:

MRM

キャピラリー電圧:

0.5 kV

脱溶媒温度:

600

脱溶媒ガス流量:

1,000 L/時間

コーンガス流量:

150 L/時間

イオン源温度:

150 ℃

ソフトウェア:

定量のための waters_connect

表 1.  塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩の MRM パラメーター。オートデュエル機能を使用して、最適なデュエルタイムが自動的に設定されています(太字は定量トランジション)。

結果および考察

分析法の感度を、乳児用調製粉乳中に 0.1 ~ 20 µg/kg になるように調製したマトリックス添加標準試料のレスポンスを評価することで評価しました。マトリックス添加標準溶液の分析により、優れた感度(≤0.1 µg/kg)と選択性が実証されました。乳児用調製粉乳では、塩素酸塩および過塩素酸塩の MRL は 0.01 mg/kg に設定されています。この分析法により、0.0001 mg/kg(MRL の 1/100)以下の 3 種類の分析種を定量することができます。これにより、サンプルの希釈やサンプルの注入量を減らす必要がある場合に、分析法の柔軟性を実感することができます。3 種類の分析種について、報告されている最低レベルでの代表的なクロマトグラムを図 3 に示します。

図 4 および 5 に示すように、キュウリと乳児用調製粉乳について、5 ~ 200 µg/kg の範囲にわたるマトリックス添加ブラケット検量線を使用して、直線性を評価しました。決定係数および残差は SANTE 合否基準の範囲内であり、良好な再現性が実証されました。いずれのマトリックスでも、ピーク形状および保持時間は、全体を通して安定していました。この安定性は、低濃度のバッファーの使用を可能にするカラム上の陰イオン交換部位の存在によって容易に得られました。イオン比および保持時間は、表 2 にまとめているように、必要な許容範囲内でした。

図 3.  0.1 µg/kg のマトリックス添加標準試料(乳児用調製粉乳)の分析で得られた塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩のクロマトグラム
図 4.  キュウリ中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩のキャリブレーションおよび残差のプロット(5 ~ 200 µg/kg)
図 5.  乳児用調製粉乳中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩のキャリブレーションおよび残差のプロット(5 ~ 200 µg/kg)
表 2.  キュウリおよび乳児用調製粉乳中の塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩の分析法パラメーターのサマリー

結論

Xevo TQ Absolute MS システムにより、優れた感度(0.1 µg/kg 以下)が得られました。これにより、サンプルの希釈やサンプルの注入量を減らす必要がある場合に、分析法の柔軟性を実感することができます。Atlantis Premier BEH C18 AX カラムでは、カラムに陰イオン交換部位が存在することにより、3 種類の分析種について、優れた選択性と保持が得られました。このカラムにより、低バッファー濃度を使用でき、分析法の信頼性が高くなります。

分析法の性能を、キュウリおよび乳児用調製粉乳中に調製したマトリックス添加標準試料を用い、それぞれ EURL 迅速極性農薬(QuPPe)PO および改変 QuPPe AO メソッドを使用して正常に評価することができました。3 化合物のレスポンスは、5 ~ 200 µg/kg の範囲にわたって直線性であり、決定係数、保持時間、イオン比、残差はすべて SANTE 合否基準の範囲内でした。

参考文献

  1. Huertas-Perez JF, Mottier P, Basle Q, Tan SY, Kopec-Durska M, Zawada P, Burton A, Griffin A, Sanchez- Calderon MG.Chlorate and Perchlorate – LC-MS/MS Analytical Method Validation in a Broad Range of Food Commodities.Microchemical Journal 177.2022.
  2. Chen Y, Zhu Z, Qiu H, Lu S. Occurrence of Perchlorate, Chlorate, and Bromate in Drinking Water in Shenzhen and Related Human Exposure Risks. Environmental Advances. 2022. 2666–7657.
  3. Constantinou.P, Louca-Christodoulou D, Agapiou A. LC-ESI-MS/MS Determination of Oxyhalides (Chlorate, Perchlorate, and Bromate) in Food and Water Samples, and Chlorate on Household Water Treatment Devices along with Perchlorate in Plants. Chemosphere 2019.235: 757–766.
  4. Panseri S, Noble M, Arioli F, Biolatti C, Pavlovic R. Occurrence of Perchlorate, Chlorate, and Polar Herbicides in Different Baby Food Commodities. Food Chemistry 330. 2020.
  5. Zhang W, Lu Q, Li Y, Hua Y, Zheng R. Occurrence and Exposure Assessment of Chlorate and Perchlorate in Food and Drinking Water from Fujian China.Food Control 153.2023.
  6. Li M, Xiao M, Xiao Q, Chen Y, Guo Y, Son J, Li R, Li C, Zhu Z, Qiu H, Liu X, Lu S. Perchlorate and Chlorate in Breast Milk, Infant Formulas, Baby Supplementary Food and The Implications for Infant Exposure.Environmental International 158.2022.
  7. De-Alwis J, Ross E, Adams S. Determination of Chlorate and Perchlorate in Infant Milk Using Waters Anionic Polar Pesticide Column and UPLC-MS/MS.Waters Application Note.720006686.2020.
  8. QuPPe Methods for Food of Plant and Animal Origin.https://www.eurl-pesticides.eu/docs/public/tmplt_article.asp?CntID=887&LabID=200&Lang=EN
  9. Document No.SANTE/11312/2021.Guidance Document on Analytical Quality Control and Method Validation Procedures for Pesticide Residues Analysis in Food and Feed.2021.

720008070JA、2023 年 10 月

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