パート 1:水溶性ビタミンの HPLC 分析法を Alliance™ iS HPLC System で再現する
要約
ビタミンサプリメントの人気が高まるにつれ、製品の含有量の記載が正しいことを確認する必要があります。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、製品がラベル表示と合っていることを確認するために必須の分析ツールです。一方、ビタミンは化学的特性の範囲が広いため、単一モードのクロマトグラフィーでビタミンを分析することは困難です。水溶性ビタミンの場合、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)により、極性の高いビタミンを保持することができます1。 さらに、これらのビタミンは複雑なマトリックス中に存在するため、サンプル前処理が困難で手間がかかることが多くなります。
規制対象ラボでは、システムが新しいシステムに更新および交換されるため、異なる HPLC システムにこのような分析法を移行する能力が不可欠です。この論文では、水溶性ビタミンのグラジエント HILIC 分析法を HPLC システム間で移行する能力について実証します。ここでは、古い HPLC システムと新しい HPLC システムで同じ定量結果が得られることを実証します。古い Alliance e2695 システムと Alliance iS HPLC System を分析法の移行に選択しました。この 2 部構成の分析法移行試験のパート 2 では、Alliance iS HPLC System での脂溶性ビタミンの HPLC 分析法の再現について説明します。
アプリケーションのメリット
- Alliance iS HPLC System を使用したマルチビタミンサプリメント中の水溶性ビタミンの定量
- 古い HPLC システムから Alliance iS HPLC System への分析法移管
はじめに
ビタミン分析はさまざまなラボで日常的に実施されています。栄養補助食品のラボでは、ビタミンが原料および最終製品に期待通りの濃度で含まれていることを保証するために、製造プロセス全体を通してサンプルの試験を行うことが有用です。米国では、21 CFR 101.9(g)(4) により、添加されているクラス I 成分は、分析法のばらつきを考慮して、ラベル表示値の 100% 以上であることが必要であると示されています2。 この要件を満たしていないラベルの付いた製品は不当表示と見なされることから、分析検査の重要性がさらに正当化されます。
ビタミン分析を実施する際、一部のマルチビタミン製剤にはマトリックス干渉物質が存在する可能性があるため、サンプル前処理が困難になる場合があります。この問題は、追加のサンプル希釈、固相抽出または液-液抽出を使用して軽減できる場合があります。より複雑なマトリックスでは、追加のサンプルクリーンアップや複数回の抽出が必要になる場合があります3。
ビタミンゆえに当然生じるさまざまな分析上の課題に加えて、通常の分析ラボには、分析に使用できるさまざまな HPLC システムがあります。さらに、ラボの装置が更新されると、最新のテクノロジーを利用する必要が生じる場合があります。これらの要因により、所定のサンプルに対して各システムで同じ定量結果が得られるように、異なるシステム間で分析法を移行できることが重要になります。
今回の実験では、古い HPLC システム(特に Alliance e2695 HPLC システム)から Alliance iS HPLC System へのマルチビタミン分析の移行について説明します。2 つのシステム間で定量結果が同等であることを示します。
実験方法
水溶性標準試料の調製
ニコチンアミド、ピリドキサール、ニコチン酸、リボフラビン、チアミン、ビタミン B12、葉酸の標準試料は、Sigma-Aldrich から購入した標準試料を使用して調製しました。2 種類の別々のストック溶液を調製しました。ストック溶液 1 には、DMSO 中に濃度 1 mg/mL のリボフラビン、ビタミン B12 および濃度 2 mg/mL の葉酸が含まれています。ストック溶液 2 には、20:80 アセトニトリル:水中に濃度 1 mg/mL のピリドキサールおよび濃度 2 mg/mL のニコチンアミド、ニコチン酸、チアミンが含まれています。混合ストック溶液は、20:80 アセトニトリル水中に、ニコチンアミド、ニコチン酸、リボフラビン、チアミン、ビタミン B12、葉酸の濃度が 50 µg/mL、ピリドキサールおよびリボフラビンの濃度が 25 µg/mL になるように調製しました。マルチビタミンサプリメント中に存在するビタミンである B12 および葉酸について、このストック溶液を 20:80 アセトニトリル:水でさらに希釈し、1.57、3.13、6.25、12.5、25、50 µg/mL のキャリブレーションスタンダードを調製しました。
注:光感受性のビタミン B12 と葉酸の分解を防ぐため、琥珀色のガラス容器を使用しました。
水溶性マルチビタミンサプリメントサンプルの調前処理
マルチビタミンサプリメントサンプルは、50 mL 遠心分離チューブ中で 10 錠を 25 mL の水に溶解して調製しました。サンプルを 30 分間振とうし、続いて 3,900 rpm で 10 分間遠心分離しました。10 mL の上清をきれいな 50 mL 遠心分離チューブに移し、アセトニトリルで 1:1 希釈しました。定量には、20:80 水:アセトニトリルによるさらなるサンプル希釈が必要でした。
LC 条件
LC システム: |
Alliance e2695 HPLC システムおよび Alliance iS HPLC System |
検出: |
TUV 検出器(10 mm HPLC フローセル搭載) |
波長: |
265 nm |
サンプリングレート: |
2 Hz |
バイアル: |
LCGC 品質保証透明ガラス 12 × 32 mm スクリューネックバイアル、トータルリカバリー、キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き、容量 2 mL(製品番号:186000307C) |
カラム: |
XBridge™ Amide カラム、3.5 µm、4.6 × 250 mm(製品番号:186004870) |
カラム温度: |
30 ℃ |
サンプル温度: |
15 ℃ |
注入量: |
25 µL |
流速: |
1.0 mL/分 |
移動相 A: |
100 mM 酢酸アンモニウム(pH 5.5) |
移動相 B: |
アセトニトリル |
移動相 C: |
水 |
サンプルマネージャ洗浄溶媒: |
50:50(v/v)水:アセトニトリル |
サンプルマネージャパージ溶媒: |
20:80(v/v)水:アセトニトリル |
グラジエントテーブル
データ管理
クロマトグラフィーデータシステム: |
Empower™ 3、FR 3.7.0 |
結果および考察
水溶性ビタミンの分析法の移行
栄養補助食品中のビタミンの分析は、製品の安全性および製品のラベル表示の正確さを保証するために重要です。ビタミン B12 と葉酸の両方を含むマルチビタミンのサンプルを、Alliance e2695 と Alliance iS HPLC System で分析しました。各システムでの分析には、同じ移動相、標準試料、サンプル、および同じクロマトグラフィーカラムを使用しました。両方のシステムの結果を、マルチビタミンサプリメントサンプルのラベル表示と比較するとともに、2 つのシステム間での結果の比較も行いました。両方のシステムでの、ビタミン標準試料とマルチビタミンサプリメントサンプルのクロマトグラムの例を、図 1 および図 2 に示します。
分析法をさらに調整することなく、すべてのシステム適合性基準が満たされていたことから、Alliance e2695 システムから Alliance iS HPLC System に分析法を正常に移行できたと考えられます。これらのシステムでは保持時間にわずかなシフトが見られました。図 1 および 2 から、Alliance e2695 システムでは保持時間が Alliance iS HPLC System よりわずかに短いことがわかります。2 つのシステムのディレイボリュームの差が、この保持時間のシフトに寄与している可能性があります。
両方のシステムにおける公称濃度からの % 偏差および R2 の結果を表 1 に示します。いずれのシステムでも、検量線の R2 値は 0.9999、公称濃度からの % 偏差は ± 1.75 以内でした。
水溶性ビタミンのシステム適合性およびサプリメントサンプルの結果
システム適合性は、作業用標準試料を 5 回繰り返し注入し、7 種類の標準化合物それぞれの保持時間と面積 %RSD を計算することで決定しました。ピリドキサールとニコチンアミドの間の分離度も決定しました。Alliance e2695 システムと Alliance iS HPLC System で得られた結果は同等であり、この分析法の確立されたシステム適合性基準を満たしています。結果は表 2 に示しています。
マルチビタミンサプリメント錠のラベル表示によれば、1 錠あたりのビタミン B12 と葉酸の含有量がそれぞれ 50 mg および 7.6 mg と記載されていました。Alliance e2695 および Alliance iS HPLC Systems を使用して得られたビタミン B12 および葉酸の定量結果をラベル表示と比較し、表 3 に示しています。いずれのシステムでも、ビタミン B12 の結果の差は 0.3%、葉酸の結果の差は 1.2% で、良好な一致が見られます。
マルチビタミンサプリメントサンプル中のビタミン B12 と葉酸の合計含有量は、ラベル表示の ± 9% 以内であることがわかりました。これらの結果は、Alliance e2695 システムおよび Alliance iS HPLC System のいずれを使用しても、マルチビタミンサプリメントサンプル中のビタミン B12 および葉酸を市販品の濃度範囲内で定量できることを示しています。ここで注目すべきは、葉酸の定量値はラベル表示値より 7.70 ~ 8.60% 少ないことです。製品を不当表示であると判定する前に、該当するサンプルマトリックスについて分析法を十分にバリデーションするとともに、代表的なサンプルを使用したことを確認する必要があります。
結論
マルチビタミンサプリメント中のビタミン含有量の分析は、製品のラベル表示の正確さを保証するために重要です。マルチビタミンサプリメントの分析には一定の課題が伴う可能性がありますが、今回説明した分析法により、古い Alliance e2695 と最新の Alliance iS HPLC Systems の両方で、再現性と信頼性の高い結果が得られました。システムで得られた定量結果が 1.2% 以内でよく一致していたことは、HILIC 分析法の最新の HPLC システムへの移行が正常に行えたことを示しています。マルチビタミンサプリメントの定量において、水溶性ビタミンについて、ラベル表示値の ± 9% 以内と良好な一致が見られました。
参考文献
- Eric S. Grumbach and Kenneth J. Fountain.Comprehensive Guide to HILIC Hydrophilic Interaction Chromatography.Waters Corporation, 2010.
- 21 CFR 101.9: Food Labeling – Nutrition Labeling of Food.(Current through 09/28/2023).
- Kim Tran and Peter Hancock.Analysis of Water-Soluble Vitamins and Caffeine in Beverage and Multivitamin Products by Arc HPLC System with PDA Detection, Waters Application Note, 720007357, 2021.
720008159JA、2023 年 12 月