• アプリケーションノート

Xevo™ G3 QTof の感度およびリニアダイナミックレンジ

Xevo™ G3 QTof の感度およびリニアダイナミックレンジ

  • Lisa Reid
  • Lee A. Gethings
  • Waters Corporation

要約

Waters Xevo™ G3 QTof を用いた化合物の迅速で正確なスクリーニングにおける高いダイナミックレンジの実証。今回、Xevo G3 QTof 質量分析計で最大 5 桁の幅広いダイナミックレンジが得られることを示します。Camelia Sinensis(緑茶)製品に含まれる天然の有効成分を集めた標準試料のセット(カフェインおよびさまざまなカテキン化合物)を使用してこの分析を行いました。このコンパクトなベンチトップ型四重極飛行時間型質量分析計は、優れたダイナミックレンジが得られるだけでなく、30,000 FWHM の質量分解能と、低分子アプリケーション向けの通常 2 ppm 以内という高い質量精度も備えています。

アプリケーションのメリット

今回、Waters Xevo G3 QTof で、一般的な天然の有効成分であるカフェインやカテキン類について、最大 5 桁の広いダイナミックレンジが得られることを示します。この装置において、高いダイナミックレンジが得られて、化合物の迅速で正確な MSE フルスキャンスクリーニングが行えることを実証します。

はじめに

複雑なマトリックスを特性解析する場合や、分析種が未知濃度またはさまざま濃度で含まれるサンプルのコホートを分析する場合、質量分析計が、これらの分析種に対して広いダイナミックレンジを発揮できることが不可欠です。ダイナミックレンジが広いと、対象の化合物が、検量線から外れたり検出器の限界から外れたりすることにより、選択したサンプル前処理の変更や再注入が必要になる可能性が低くなります。

どのような質量分析計でも、感度が向上すると、より低レベルで化合物を検出する機能が得られます。これは、低レベルの分析種については良い事ですが、存在量の多い化合物について問題になる可能性があります。感度が向上すると、検出器が飽和して直線的レスポンスが得られなくなり、定量上限が影響を受ける場合があります。装置のダイナミックレンジを大きくすることで、検出下限が向上して低レベルの分析種を検出できるとともに、検出上限が維持されて高レベルの分析種を正確に定量することができます。ダイナミックレンジが広いと、さまざまな濃度の化合物を含む個別のサンプルを 1 回の注入で分析でき、高い割合の分析種が装置のダイナミックレンジの範囲内に入ります。

結果および考察

システムのリニアダイナミックレンジを試験して、通常の分析濃度でのデータの信頼性を確保し、定量目的に必要な直線的なレスポンスが得られることを実証しました。このアッセイは、Sigma(英国、ドーセット)から購入した市販の 100 µg/mL の緑茶カテキン混合物標準試料(カタログ番号 G-016)を使用して行いました。システムに注入する前に、この標準試料を 25:75(v:v)メタノール:水溶媒で希釈して検量線を作成しました。直線性および感度の評価用に、0.001 µg/mL ~ 100 µg/mL の範囲の 5 桁の連続希釈シリーズを調製しました。各ポイントにつき 1 µL の注入により、それぞれの分析種がオンカラムで 1 pg ~ 100 ng の範囲になるようにロードしました。実験の詳細については、アプリケーションノート(720008031)を参照してください。

ACQUITY™ Premier UPLC™ クロマトグラフィーシステムおよび Xevo G3 QTof 質量分析計を使用して、カテキン標準試料の各希釈液の 1 µL の注入をポジティブイオン化モードで分析し、MSE コンティナム取り込みメソッドでデータ収集しました。

調製した濃度にわたる緑茶の活性化合物について得られたリニアダイナミックレンジは、5 ~ 3 桁の間でさまざまでした(図 1)。観測されたばらつきは、各分析種の検出下限(LLOD)によるものであり、個々の分析種の強度によるものではなく、直線回帰の傾きによるものと思われます。一部の化合物では、シグナルが他の化合物よりはるかに急速に減衰するように見えます(図 2)システムが飽和していなければこのようなダイナミックレンジが得られるため、今回説明した範囲以外でも直線的な範囲が得られる可能性があります(図 3)。

図 1.2 種類の標準試料(エピカテキンおよびエピガロカテキン 3-ガレート)の、傾きが異なる式になるリニアダイナミックレンジ(LDR)のグラフ
図 2.Xevo G3 QTof のリニアダイナミックレンジを実証する 4 種類の緑茶有効成分の濃度曲線A)カテキン-3-ガレート、B)カフェイン、C)エピカテキン-3-ガレート、D)エピガロカテキン-3-ガレート。
図 3.カラムロード量 50 ng および 100 ng におけるクロマトグラフおよびスペクトルの質。カテキンの(B)カラムロード量 50 ng、(C)カラムロード量 100 ng についての、重ね描き BPI(A)、並びに低エネルギー抽出スペクトルおよび高エネルギー抽出スペクトル(B+C)の実証

検量線の一番上のポイントは、通常の標準試料の取り込みレベル(オンカラムで 100 ng)であり、直線性の範囲内であるこの濃度では、幅の狭いガウス分布のクロマトグラフィーピークおよびスペクトルが得られ、システム(クロマトグラフィーまたは検出器)に対してオーバーロードになった化合物はありませんでした。作成された直線性の曲線はすべて、この検量線の上の方のポイントまで直線的なレスポンスを示しました。(これらの特定の標準試料について)従来のシステムでの分析で推奨されているオンカラムで 250 ng 超のロードを行うと、クロマトグラフィーが飽和し、分離が悪くなることがわかっているため、純粋な標準試料の注入量 1 µL を使用したことで、直線的なレスポンスが検量線の上の方のポイントまで維持されました。

LLOD は、クロマトグラム上にシグナル/ノイズ比(S/N)が 3 を超える目に見えるピークがある濃度として決定しました。図 4 に、Skyline(ワシントン大学の MacCoss ラボ)を使用した例として、エピガロカテキン-3-ガレートの LLOD での抽出クロマトグラム(XIC)を示します。データセットに含まれている最低の S/N 値は、5 pg のカフェインのオンカラムロードで見られる 7.0 です。

図 4.エピガロカテキン-3-ガレートのプリカーサーイオンとプロダクトイオンの両方について見られた LLOD での XIC(A)、ピーク面積の概要(B)、保持時間(C)、およびこの化合物のレスポンス曲線(D)を示すエピガロカテキン-3-ガレートの Skyline ビュー

結論

このアプリケーションでは、Xevo G3 QTof 質量分析計が 5 桁のリニアダイナミックレンジを実現できることについて紹介しています。緑茶の活性化合物の場合、S/N の計算値が 3 を超える目に見えるピークによって決定された、Xevo G3 QTof の LLOD の測定値は、オンカラムで 1 pg ~ 10 pg(濃度 1 ~ 10 ng/mL の標準試料を 1 µL 注入)でした。ACQUITY Premier クロマトグラフィーシステムと Xevo G3 QTof 質量分析計のいずれでも、オンカラム検量線ポイント 100 ng(濃度 100 µg/mL の標準試料を 1 µL 注入)で、優れた質のデータが得られました。

720008043JA、2023 年 9 月

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