ACQUITY™ Premier システムと Arc™ Premier システムの間でのサイズ排除クロマトグラフィー分析法の移管
要約
このアプリケーションブリーフでは、モノクローナル抗体分析向けのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析法の、XBridge™ Premier Protein SEC 250 Å カラムおよび ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å カラムを使用する ACQUITY Premier システムと Arc Premier システムの間での移管について実証します。
アプリケーションのメリット
- タンパク質の SEC 分離向けに特別に設計された Waters™ MaxPeak™ High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーにより、二次的な相互作用が減って SEC の結果の一貫性が高まる
- MaxPeak Premier カラムは、さまざまな型式と粒子径で用意されており、HPLC、UHPLC、UPLC™ の各プラットホーム間での分析法移管が容易になる
はじめに
SEC は、流体力学的ボリュームに基づいてバイオ医薬品を分離するための、十分に確立された手法です1。 これらのバイオ医薬品は通常タンパク質ベースであり、製品の有効性と安全性に影響する凝集およびフラグメンテーションによる不純物についてモニターされています。これらの不純物の分析に関連する最大の課題は、タンパク質と粒子またはハードウェア表面の間で発生する可能性のあるイオン性および疎水性の二次的相互作用です。ウォーターズでは、これに対処するため、SEC 粒子およびハードウェア表面向けに、望ましくない二次的相互作用を低減し、回収率と分離度を高める MaxPeak HPS テクノロジーを開発しました。ウォーターズでは、この製品の一環として、BEH 粒子の表面(BEH-PEO)に、ヒドロキシ末端を持つポリエチレンオキシド結合粒子を組み込むとともに、分析種に対してより不活性になるようにカラムハードウェアを設計することで、SEC の分離効率が新たなレベルに高められました2。 これらの新たに設計された MaxPeak Premier SEC カラムにより、塩や有機溶媒の添加剤を最小限に留めるかまったく使用しないでバイオ医薬品を分析できるようになり、シンプルな生体関連バッファーを使用して、タンパク質サイズバリアントの信頼性の高い定量が行えます。
さらに、ウォーターズはさまざまな粒子径と型式の MaxPeak Premier SEC カラムを提供しているため、カスタマーは、MaxPeak Premier SEC カラムの性能を最大限に活用して、医薬品の開発から製品化までの全体にわたって分析ニーズを補助することができます。このことを実証するため、1.7 µm ACQUITY Premier Protein SEC 250 Å カラムを装着した ACQUITY Premier システムで開発した SEC 分析法を、2.5 µm XBridge Premier Protein SEC 250 Å カラムを装着した Arc Premier システムに移管しました。
結果および考察
SEC は、モノクローナル抗体(mAb)の開発および品質管理において、サイズバリアントを分離および定量するためのゴールドスタンダードの分析法です。この試験では、mAb 治療薬である Remicade™ および承認済みバイオシミラーである Renflexis™(有効期限切れ)を、サイズバリアントについて、ACQUITY Premier UPLC システムと Arc Premier UHPLC システムの両方で分析しました。SEC の分析法条件は、ACQUITY Premier システムで、無菌ろ過済みの 1X PBS(pH 7.4)のアイソクラティックグラジエントおよび ACQUITY Premier Protein SEC 250Å カラム(4.6 mm × 300 mm、1.7 µm)を使用して開発しました。クロマトグラフィー性能を移行するには、アイソクラティックグラジエントを使用する場合でも、流速や注入量などのパラメーターをシステム間でスケーリングして、同じカラムロード量とカラム容量を維持する必要があります。これらの分析法条件を Waters カラムカリキュレーターバージョン 2.0 を使用してスケーリングし、XBridge Premier Protein SEC 250Å カラム(7.8 mm × 300 mm、2.5 µm)を搭載した Arc Premier システムに移行しました。先発 mAb とバイオシミラー mAb が同等に分離された結果を図 1 および図 2 に示します。
相対ピーク面積割合(%)を、Remicade と Renflexis の 5 回の繰り返し注入について平均し、元の UPLC(ACQUITY Premier システム)分析法とスケーリングした UHPLC 分析法(Arc Premier システム)のクロマトグラフィー性能を比較しました。モノマーと LMWS1 の間の分離度は、Empower CDS 内のカスタムフィールドを使用して、ピーク高さおよびピーク高さの谷の高さに対する比で除算し、融合したピークの谷の高さ(VH)を計算することでモニターしました。両方の mAb に関連する棒グラフからわかるように、凝集体およびフラグメントについての相対ピーク面積割合は、元の分析法の約 0.1 % 以内でした。ACQUITY Premier システムは、粒子径が小さいことによって分離度が向上したことにより、ピーク間の VH が最も低いことがわかりました。この観察結果は、全体的なピーク面積(%)およびシステム間での純度決定にほとんど影響を与えませんでしたが(Remicade:99.4% vs 99.3%、Renflexis:98.8% vs 98.7%)、他の分析種に関する実験計画(DOE)の検討に影響を及ぼす要素になる可能性があります。また、SEC 分析のスループットを上げるために、流速を上げて XBridge Premier Protein SEC 250Å 2.5 µm カラムで得られる分離度と同等にすることで、ACQUITY Premier Protein SEC 250Å 1.7 µm カラムでの SEC 分析にかかる時間を約 20% 短縮することができます。以上のデータを総合すると、MaxPeak Premier SEC カラムにより、すべてのシステムおよびカラム型式にわたって再現性よくサイズ関連のバリアントを分離できるようになり、バイオ医薬品の開発、製造、品質管理を行う組織間での分析法の移行が容易になることが実証されました。
結論
SEC は、バイオ医薬品の特性解析、プロセスモニタリング、品質管理、リリースのための強力なクロマトグラフィー手法です。特性解析のために開発された分析法が、MaxPeak High Performance Surface テクノロジーを採用したさまざまなカラムおよびクロマトグラフィーシステムを利用して、頑健で同等の性能を維持しつつ、プロセスのモニタリング向けにダウンストリームに移行されました。この試験では、ACQUITY Premier システムと Arc Premier システムで分析した 2 つの mAb は、凝集体、フラグメント、モノマーについて、相対ピーク面積の割合の差が約 0.1% であることが実証されました。この一貫性により、Waters カラムカリキュレーターを利用して、MaxPeak Premier HPS を採用した粒子およびハードウェア表面を用いた LC プラットホームの間で、SEC 分析法が正常に移管できることが確認されました。
参考文献
- Yang H, Koza SM, Yu YQ.Determination of Hydrodynamic Radius With MaxPeak Premier Protein SEC Columns.Waters Application Note, 720007625 2022.
- Kizekai L, Shiner SJ, Lauber MA.Waters ACQUITY and XBridge Premier Protein SEC 250Å Columns: A New Benchmark in Inert SEC Column Design.Waters Application Note, 720007493 2022.
720007836JA、2023 年 1 月