• アプリケーションノート

20 mm ポリフェニル逆相カラムを用いた mAb サブユニットおよびインタクト mAb の迅速分析

20 mm ポリフェニル逆相カラムを用いた mAb サブユニットおよびインタクト mAb の迅速分析

  • Hua Yang
  • Stephan M. Koza
  • Steve Shiner
  • Waters Corporation

要約

モノクローナル抗体(mAb)などのバイオ医薬品の急速な成長により、開発プロセス全体を通してハイスループットの特性解析が求められています。今回、モノクローナル抗体(mAb)のサブユニットおよびインタクト mAb の LC-MS 分析のための、20 mm BioResolve™ Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å、2.7 µm カラムを使用した迅速逆相分析法について説明します。100 mm カラムと比較した場合、20 mm カラムの性能は、クロマトグラフィーの分離能については長さに比例して低下するものの、同等の質量同定および確認が 5 ~ 7 分の 1 の分析時間で行えます。さらに、20 mm カラムの再現性と頑健性も実証されています。

アプリケーションのメリット

  • 2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å、2.7 µm カラムを使用した、質量同定および確認のための mAb サブユニットおよびインタクト mAb の迅速 LC-MS 分析
  • 600 回の分析にわたるカラムの再現性および頑健性の実証

はじめに

mAb や抗体薬物複合体(ADC)、その他のタンパク質などのバイオ医薬品は、今や重要な医薬品クラスになっています。ハイスループットの特性解析は、これらの医薬品の開発プロセス全体にメリットをもたらします。分析用 LC カラムの長さを短くしても、多くの場合、バイオ医薬品の特性解析に十分なピーク分離が得られると同時に、分析時間を短縮できることが示されています1。 今回、長さ 20 mm のカラム中の BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å、2.7 µm 粒子を使用した迅速逆相分析法を紹介します。

実験方法

サンプルの説明

mAb サブユニット標準試料(製品番号:186008927)を 100 µL の 0.1% ギ酸に再溶解しました。ヒト化 mAb 質量チェック用標準試料(製品番号:186009125)を 320 µL の Milli-Q 水に再溶解しました。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ UPLC I-Class PLUS

検出:

280 nm での TUV、Xevo™ G2-XS QTof MS 検出

カラム:

BioResolve Premier RP Polyphenyl 450 Å、2.7 µm 2.1 × 20 mm(製品番号:186011019)

BioResolve RP Polyphenyl 450 Å、2.7 µm 2.1 × 100 mm(製品番号:186008945)

カラム温度:

80 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

1 ~ 5 µL

流速:

0.4 mL/分、寿命試験の場合:0.8 mL/分

移動相:

A:0.1% ギ酸または TFA の水溶液

B:0.1% ギ酸または TFA のアセトニトリル溶液

寿命試験の場合:

A:0.1% TFA 水溶液

B:0.05% TFA アセトニトリル溶液

20 mm カラムでの mAb サブユニット分析用グラジエントテーブル*

20 mm カラムでのインタクト mAb 分析用グラジエントテーブル*

*100 mm カラムの場合、実行時間は 5 倍長い時間にスケーリングします。

寿命試験用グラジエント(図 2)

寿命試験では、H2O の注入 24 回ごとに mAb サブユニット標準試料を注入して、600 回の注入を行いました。

Xevo G2 QTof 設定

モード:

MS 実験

質量範囲:

m/z 50 ~ 5000

極性:

ポジティブ

サンプリングレート:

2 Hz

コーン電圧:

70 V(サブユニット)、150 V(インタクト mAb)

キャピラリー電圧:

2.75 kV(サブユニット)、2.25 kV(インタクト mAb)

イオン源温度:

125 ℃(サブユニット)、150 ℃(インタクト mAb)

脱溶媒温度:

500 ℃

データ管理

LC ソフトウェア:

Empower™ 3

LC/MS ソフトウェア:

waters_connect™

結果および考察

2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラムでは、異なるバッチの MaxPeak™ High Performance Surfaces(HPS)カラムハードウェアで、優れた再現性が得られました。図 1 に示すように、mAb サブユニット標準試料の分離では、ギ酸および TFA の移動相を使用した場合の平均ピークキャパシティの %RSD 値はそれぞれ 2.51% および 2.27% になりました。0.1% TFA 移動相を使用した、カラム温度 80 ℃、流速 0.8 mL/分での 600 回の注入にわたって、保持時間とピークキャパシティが大きく変化しなかったことから、このカラムの頑健性も実証されました(図 2)。

図 1.  異なるバッチの HPS カラムハードウェアを用いた 3 本の 2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラムを使用した mAb サブユニット標準試料の分離において、優れた再現性が得られました。ギ酸移動相、4 分間で 15 ~ 55 % B、0.4 mL/分、カラム温度 80 ℃。ピーク 1:Fc/2、ピーク 2:LC、ピーク 3:Fd'。
図 2.  2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラムの頑健性は、H2O の注入 24 回ごとに mAb サブユニット標準試料を注入することによって実証されました。600 回の注入にわたって、保持時間とピークキャパシティは大きく変化しませんでした。TFA 移動相、2 分間で 15 ~ 55 % B、0.8 mL/分、カラム温度 80 ℃。

mAb サブユニットの分析

図 3 に、2.1 × 20 mm カラム(サンプルロード 0.25 µg)および 2.1 × 100 mm カラム(サンプルロード 1.25 µg)を使用した mAb サブユニットの分離を示しています。カラム容量との関係において、同じグラジエントの傾きが保たれています。3 つのメインのサブユニットのピーク(ピーク 1:Fc/2、ピーク 2:LC、ピーク 3:Fd')が、20 mm カラムで十分に分離されていました2。予想どおり、100 mm カラムでショルダーピークとして観察される低存在量の分子種の一部は、20 mm カラムでは、分離効率低下のためにメインピークから分離されませんでした。一方、20 mm カラムの分析時間は、100 mm カラムの分析時間の 5 分の 1 に短縮されました。追加のメリットとして、サンプル容量と移動相の使用量も 5 倍削減できました。

流速を 0.4 mL/分に保って MS のイオン化効率を維持しつつグラジエント時間を減らすと、分析時間をさらに短縮できます(図 4)。結果として、グラジエントの傾きが急になり、分離能は低下します。分離度は低下するものの、3 本のメインピークが 1 分間のグラジエントを使用して効果的に分離されました。質量データは、グラジエント時間 4 分間および 100 mm カラムでの 20 分間のグラジエントで得られたデータと同等でした(図 5)。

図 3.  2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラム(4 分間のグラジエント)および 2.1 × 100 mm BioResolve RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラム(20 分間のグラジエント)で得られた、mAb サブユニット標準試料の LC-MS 分離の比較
図 4.  2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラムでのグラジエント時間 1 ~ 4 分間における mAb サブユニット標準試料の LC-MS 分離の比較
図 5.  20 mm カラムでの 1 分間と 4 分間のグラジエント、および 100 mm カラムでの 20 分間のグラジエントを使用した mAb サブユニット標準試料の分離。3 本のメインピークおよびデコンボリューション済み質量(挿入図)について、同等のコンバインスペクトルが得られました。

インタクト mAb 分析

図 6a に、2.1 × 20 mm カラム(サンプルロード 0.25 µg)および 2.1 × 100 mm カラム(サンプルロード 1.25 µg)を使用したインタクト NIST mAb(ヒト化 mAb 質量チェック用標準試料)の LC-MS 分析を示しており、カラム容量との関係において同じグラジエントの傾きになっています3,4。 mAb サブユニット標準試料の分離で見られたのと同様に、20 mm カラムを使用することで、メインピークと存在量の低いショルダーピークの間の分離が若干低下したものの、分析時間、サンプル容量、移動相の使用量を大幅に削減することができました。20 mm カラムおよび 100 mm カラムで得られたメインピークのコンバインスペクトル、単一チャージ状態、デコンボリューション済み質量スペクトルをそれぞれ、図 6b と 6c に示します。20 mm カラムでの 1 分間のグラジエントで得られた質量データは、100 mm カラムでの 5 分間のグラジエントで得られた質量データと同等でした。

図 6.  インタクト NIST mAb(ヒト化 mAb 質量チェック用標準試料)の LC-MS 分析
a.  2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラム(1 分間のグラジエント)および 2.1 × 100 mm BioResolve RP mAb Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラム(5 分間のグラジエント)で得られた、インタクト NIST mAb の LC-MS 分離の比較
図 6.  インタクト NIST mAb(ヒト化 mAb 質量チェック用標準試料)の LC-MS 分析
b.  20 mm カラムを使用して得られたコンバインスペクトル、単一チャージ状態(挿入図)、デコンボリューション済み質量スペクトル。
図 6.  インタクト NIST mAb(ヒト化 mAb 質量チェック用標準試料)の LC-MS 分析
c. 100 mm カラムを使用して得られたコンバインスペクトル、単一チャージ状態(挿入図)、デコンボリューション済み質量スペクトル。灰色のブロックは、スペクトルがコンバインされた部分を示しています。

結論

2.1 × 20 mm BioResolve Premier RP Polyphenyl 450 Å 2.7 µm カラムは、再現性があり、頑健であることが実証されました。この短いカラムで実行する迅速逆相分析法(実行時間 3 分以下)により、mAb サブユニットが効果的に分離されます。それと比例してクロマトグラフィー分離能が低下するものの、マススペクトルおよびデコンボリューション済み質量は、100 mm カラムでの 20 分間のグラジエントで得られたものと同等でした。同様に、20 mm カラム型式を使用したインタクト mAb 分析用の迅速 LC-MS 分析法(実行時間 3 分以下)は、質量確認に使用できます。

参考文献

  1. Fekete S. and Guillarme D. Ultra-short Columns for the Chromatographic Analysis of Large Molecules.Journal of Chromatography A 1706 (2023) 464285.
  2. Ranbaduge N, Shion H, Lauber M.A., and Yu Y.Q., LC-MS Characterization of mAb Subunits Using a BioResolve RP mAb Column.Waters Technology Brief.720006199.2018.
  3. Shion H., Yu Y.Q., and Chen W. Enabling Routine and Reproducible Intact Mass Analysis When Data Integrity Matters.Waters Application Note. 720006472. 2020.
  4. Humanized mAb Mass Check Standard.Waters Care and Use Manual.720006358.2019.

720008299JA、2024 年 4 月

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