USP メラトニンモノグラフアッセイおよび不純物分析法(II)の最新化 – 分析性能および栄養補助食品の分析
要約
アッセイおよび不純物用の USP メラトニン分析手順は、Arc™ HPLC ™ システムに Waters™ 2998 PDA 検出器および XBridge™ BEH ™ C18(2.5 µm、4.6 mm × 75 mm)カラムと組み合わせて、以前に最適化されています。このアプリケーションノートでは、最新の USP メラトニンアッセイの分析特性を調査しました。特異性、直線性、感度、正確性、および精度(併行精度)において優れた性能が示されています。このアッセイを 6 種類の代表的な栄養補助食品に適用した結果、メラトニン含量が 3% ~ 42% 過剰であることが示されました。この最新の USP メラトニンアッセイは、補助食品中のメラトニンの迅速かつ経済的な分析に適しています。
アプリケーションのメリット
- 栄養補助食品中のメラトニンの迅速で経済的な分析
- さまざまな形態の栄養補助食品中のメラトニンを、確実かつ正確に測定
はじめに
小児によるメラトニンの摂取量増加についての最近の社会的な懸念に対応するため(1,2)、Waters Arc HPLC システムに 2998 PDA 検出器および XBridge BEH C18(2.5 µm、4.6 mm × 75 mm)カラムを組み合わせて、最適化した LC 条件を用いることで、米国薬局方(USP)のメラトニンのモノグラフアッセイおよび不純物の分析手順3を正常に最新化できることを実証しました 4。このアプリケーションノートでは、さまざまな形態(液体、ソフトジェル、錠剤、カプセル)およびさまざまなメラトニン含量(1 回分あたり 1 ~ 10 mg)の代表的な栄養補助食品を使用して、USP アッセイ手順の分析性能および適用性をさらに実証します。
実験方法
メラトニン(USP メラトニン RS)と 5-メトキシトリプタミン(5-MT)は Sigma-Aldrich(ペンシルベニア州アレンタウン)から購入しました。栄養補助食品はオンラインストアで購入しました。これらの 5 種類のブランドの製品には 4 種類の剤形(錠剤、カプセル、ソフトジェル、液体)が含まれ、1 回あたりのメラトニン含量は 1 mg ~ 10 mg の範囲です(サンプル情報については表 1 参照)。
標準試料および移動相の調製
標準溶液:0.1 mg/mL の USP メラトニン RS のメタノール溶液。
バッファー:0.5 g/L の一塩基性リン酸カリウム水溶液。リン酸で pH 3.5 に調整し、ろ過しました。
サンプル前処理
錠剤は、使用する前に微粉末に粉砕しました。カプセル(微粉末)およびソフトジェル(半固体)は、内容物を直接使用しました。カプセルおよびソフトジェルのシェルを洗浄して計量し、(カプセルまたはソフトジェルの総重量からシェルの質量を引いて)内容物の実際の 1 回分の摂取量を得ました。分析には、10 錠から得た平均的な 1 回分の摂取量を使用しました。メラトニンの最終溶液が 0.04 ~ 0.1 mg/L の範囲になるように適切な量のサンプル(0.0001 g 単位で記録)を秤量し、25 mL のメスフラスコに入れました。スパイク実験では、メラトニン標準溶液のアリコート(0.0001 g 単位)をフラスコにスパイクしました。15 mL のメタノール(LC グレード、Fisher Scientific)をメスフラスコに加え、少なくとも 1 分間ボルテックスしました。次に、25 mL の標線までメタノールを追加しました。サンプルを室温で 30 分間放置してから混合し、アリコート(約 1.5 mL)を取って 2000 rcf で 5 分間遠心分離しました。透明な上清のアリコート(約 1 mL)を LC 分析用の LC バイアルに移しました。USP メラトニンモノグラフで推奨されているように、1 点検量線を使用してサンプルを定量しました。
LC 条件
システム: |
Arc HPLC システム(2998 PDA 検出器を搭載) |
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サンプルループ: |
50 µL(標準) |
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カラム: |
XBridge BEH C18 カラム、130 Å、2.5 µm、4.6 mm × 75 mm(製品番号:186006038) |
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カラムプレヒーター: |
なし(バイパスしている) |
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温度: |
30 ℃ |
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サンプルマネージャーパージ溶媒: |
アセトニトリル/バッファー(22:78 v/v) |
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サンプルマネージャー洗浄溶媒: |
アセトニトリル/水(22:78 v/v) |
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シール洗浄溶媒: |
メタノール/水(1:1 v/v) |
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注入量: |
2.0 μL |
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移動相(アイソクラティック): |
アセトニトリル/バッファー(22:78 v/v) |
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実行時間: |
5.0 分 |
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UV 検出: |
UV 吸光度(波長 222 nm、解像度 4.8 nm)、レファレンス(310 ~ 410 nm)によって補正 |
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ソフトウェア: |
Empower 3 CDS |
結果および考察
分析性能
「USP メラトニンモノグラフアッセイおよび不純物分析法の最新化によるスループットの向上と溶媒廃液削減」と題した前回のアプリケーションノートでは、最適条件下での HPLC 分析が、相対保持時間、分離度、そしてアッセイ(アイソクラティック溶出)および不純物(グラジエント溶出)の両方におけるメラトニンおよびその類縁物質 A(5-MT)に関する再現性などを含む USP システム適合性要件を満たしていることを示しました4。 このアプリケーションノートでは、栄養補助食品中のメラトニンを測定するためのアッセイ手順の分析特性に焦点を当てました。具体的には、分析特異性、直線性、感度、正確性、精度(併行精度)を調査しました。
分析の特異性(またはピークのアイデンティティー)を、保持時間および UV/Vis スペクトルにより確認しました。Empower CDS で、同じ LC 条件で分析した標準試料から UV/Vis スペクトルライブラリーを作成し、これを使用してサンプル分析におけるピーク ID を確認しました(PDA ライブラリーマッチングを使用)。ピーク純度(ピークの両側の変曲点)についても、干渉の可能性(共溶出)の兆候がないか確認しました。この試験で分析したサンプルでは、メラトニンのアッセイに対する干渉は見られませんでした。
図 1 は、メラトニン濃度に対する UV レスポンス(ピーク面積)のプロットです。このデータセットには、0.001 ~ 0.1 mg/mL の範囲の 5 濃度レベルを 2 回繰り返し注入して得られた結果が含まれます。最小二乗回帰(重み付けなし)によって、0.999 より大きい決定係数(R2)でゼロを通る直線に近似しました。検量線に対するすべてのデータポイントの相対誤差は ±5% 以内でした(データは示していません)。この優れた直線性により、USP メラトニンモノグラフのアッセイで推奨されている 1 点検量線アプローチがバリデーションされます。
定量限界(LOQ)は、米国食品医薬品局 Q2(R1) 分析手順のバリデーションに従って、低濃度のメラトニン溶液(0.25 µg/mL)を使用して推定しました5。 メラトニンピークの標準偏差の 10 倍を検量線の傾きで除算した値を使用するアプローチでは、LOQ は 0.5 µg/mL になりました。この LOQ は、注入量の調整後に他の LC-UV ベースの試験で報告された LOQ 値とほぼ同じです6-8。
この分析法の正確性を、栄養補助食品サンプルを使用したスパイク実験によって評価しました。さまざまな濃度のメラトニン(1 回あたり 1 ~ 10 mg)を含む、液体、ソフトジェル、錠剤の 3 種類の栄養補助食品に、元々のメラトニンレベルを基準にしてさまざまなレベルでスパイクしました(表 2 を参照)。測定したスパイク量を理論上のスパイク量と比較することで、回収率の結果を算出しました。平均回収率は 98.2 ~ 106.6%、併行精度(相対標準偏差、RSD)は 5.8% 未満でした(n = 3)。メラトニン QC 溶液(0.1 mg/mL メラトニン)で得られた結果においても、優れた正確性と併行精度(平均正確性 100.5%、RSD 0.8%、n=3)が実証されました。
サンプル分析
図 2 に、6 種類の栄養補助食品の HPLC-UV クロマトグラムを示します。表 3 に、これら 6 種類の栄養補助食品に関するサンプル分析結果の詳細を示します。メラトニン含有量の測定値は、ラベル表示より 3 ~ 42% 高い値でした。併行精度(RSD)の値は 4.0% 未満でした。栄養補助食品の製造時には、多くの成分がラベル表示より高いレベルで添加されます。栄養補助食品に含まれる他の成分と比較して、観察されたメラトニン含有量が過剰である例が頻発しています9。 以前の試験では、栄養補助食品中に極めて高いメラトニン含有量(ラベル表示の 4 ~ 5 倍)が報告されています。今回の試験では、これほど高濃度のメラトニンを含む製品は見つかりませんでした7,8。
これらのサンプルには、天然香味料や天然着色料など、その他のさまざまな成分が含まれていました(表 1 を参照)。これらの成分は USP メラトニン不純物試験に干渉する可能性があるため、これらのサンプルについては不純物試験を行いませんでした。
結論
栄養補助食品中のメラトニン含有量についての最近の社会的な懸念に対応するため、Arc HPLC システムと XBridge BEH C18 カラム(130 Å、2.5 µm、4.6 mm × 75 mm)を使用して USP メラトニンアッセイ手順を最新化しました。最適化された USP メラトニンアッセイ手順により、特異性、直線性、感度、正確性、精度において優れた分析性能が得られることが実証されました。液体、錠剤、ソフトジェル、カプセルの剤形で、1 回あたり 1 ~ 10 mg のメラトニンを含む 6 種類の栄養補助食品製品の分析を正常に行えました。その結果、これらの製品のメラトニン過剰量は 3% ~ 42% の範囲であることがわかりました。この最新の USP メラトニンアッセイ手順は、栄養補助食品中のメラトニンの迅速かつ経済的な分析に適しています。
参考文献
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- LaMotte, S. Potentially dangerous dose of melatonin and CBD found in gummies sold for sleep.CNN.April 25, 2023.https://edition.cnn.com/2023/04/25/health/melatonin-gummies-wellness/index.html.Accessed on May 12, 2023.
- Melatonin Monograph.United States Pharmacopeia, Docid: GUID-454646BE-F1DF-458C-9011-1FBBCCEFE5BC_4_en-US, 2023.
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- US FDA.Q2(R1) Validation of Analytical Procedures: Text and Methodology Guidance for Industry.Sept. 2021. https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/q2r1-validation-analytical-procedures-text-and-methodology-guidance-industry.Accessed on June 2nd, 2023.
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720008009JA、2023 年 7 月