Empower™ サンプルセットジェネレーターを用いた分析法開発のためのクロマトグラフィーメソッドの自動作成
要約
このテクノロジーブリーフでは、Empower™ サンプルセットジェネレーター(SSG)ソフトウェアを使用した、体系的スクリーニングプロトコルを用いて行う分析法開発のためのクロマトグラフィーメソッドの自動作成について説明します。この実験は、PDA 検出器および ACQUITY™ QDa™ 検出器を搭載した Arc™ Premier システムで実施しています。データ取り込みおよび分析は、Empower™ データクロマトグラフィーソフトウェア(CDS)を使用して行っています。
アプリケーションのメリット
- Waters ACQUITY™ LC 装置、光学検出器、ACQUITY QDa 質量検出器での分析のための、Empower サンプルセットジェネレーター(SSG)を使用した Empower 装置メソッド、メソッドセットおよびサンプルセットメソッドの迅速自動作成
- 正しく作成されたメソッドですべてのクロマトグラフィー分析が行えているという信頼感の改善
はじめに
分析法の開発は、目的の分離と頑健なメソッドを得るために広範なクロマトグラフィーパラメーターをスクリーニングする、複雑なプロセスです。体系的スクリーニングプロトコルを使用して、ナファゾリン塩酸塩(HCl)とマレイン酸フェニラミンの有効成分(API)およびその類縁物質の分析法を開発しました1-2。 選択性と分離に影響する主なファクターの影響を、プロセス全体を通して体系的に評価し、多くのクロマトグラフィーメソッドを慎重に作成する必要があります。
Empower サンプルセットジェネレーター(SSG)ソフトウェアにより、広範囲の変数を対象にクロマトグラフィーメソッドの作成を自動化することができます3。 Empower メソッドセットと装置メソッドは、すぐに行える注入シーケンスとして、実験計画に従ってサンプルセットメソッドで自動的に作成され、構造化されます。Empower SSG を使用することで、時間を節約し、転記ミスを低減できるとともに、すべてのクロマトグラフィー分析が適切に作成されたメソッドで行えたという確信が得られます。
このテクノロジーブリーフでは、Empower サンプルセットジェネレーター(SSG)ソフトウェアを使用した、分析法開発ワークフロー内でのクロマトグラフィーメソッドの迅速自動作成について実証しています。体系的スクリーニングプロトコルを使用して、ナファゾリン塩酸塩(HCl)とマレイン酸フェニラミンの有効成分(API)およびその類縁物質の分析法を開発しました。スクリーニング試験および最適化試験を行うのに必要なクロマトグラフィーメソッドを、Empower SSG を使用して作成しています。
実験方法
サンプルの説明
ナファゾリン HCl およびマレイン酸フェニラミンの API およびそれらに関連する類縁物質を含む標準混合溶液を、以前の記載に従って調製しました2。
MS 条件
LC システム: |
Arc Premier システム(PDA 検出器および ACQUITY QDa 検出器を搭載したカラムマネージャー(アクティブ)付き) |
バイアル: |
LCMS マキシマムリカバリー、容量 2 mL(製品番号:600000670CV) |
カラム: |
すべて 4.6 × 100 mm、2.5 µm、40 ℃ を使用 XSelect™ Premier CSH™ C18(製品番号:186009873) XSelect Premier CSH Phenyl Hexyl(製品番号:186009890) XSelect Premier HSS T3(製品番号:186009859) Atlantis™ Premier BEH™ C18 AX(製品番号:186009397) |
移動相: |
A:1% ギ酸水溶液 B:1% 水酸化アンモニウム水溶液 C:水 D1:アセトニトリル D2:メタノール |
流量: |
1.0 mL/分 |
注入量: |
5.0 μL |
洗浄溶媒: |
パージ/サンプル洗浄溶媒:80:20 水/メタノール シール洗浄溶媒:90:10 水/アセトニトリル |
検出: |
UV @ 260 nm |
グラジエントテーブル
データ管理
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower™ 3 Feature Release 5データ取り込みおよび分析用の Service Release 5(FR5 SR5)。 Empower サンプルセットジェネレーターは、Empower クロマトグラフィーデータソフトウェア(CDS)のオプションのアドオンとして入手できます3。 |
結果および考察
ナファゾリン HCl、マレイン酸フェニラミンおよびその類縁物質の分析法を、体系的スクリーニングプロトコルを使用して開発しました2。 カラムマネージャーおよび溶媒選択バルブを Arc Premier システムに統合することにより、カラムおよび有機溶媒の自動切り替えが可能になりました。
スクリーニング
スクリーニング段階では、さまざまなケミストリーのカラムをアセトニトリル溶媒とメタノール溶媒を用いて試験しました。スクリーニング試験の実行に必要なクロマトグラフィーメソッド(装置、メソッドセット、サンプルセットメソッド)を、Empower SSG ソフトウェアを使用して、以下に記載したステップに従って作成しました。
- 溶媒とカラムが含まれているカンマ区切り値(CSV)ファイルを読み込むことで、実験計画を Empower SSG にインポートする(図 1)
- メソッドセットと、この分析のためのシステム構成の装置メソッドが含まれているベースとなるサンプルセットメソッドを、Empower プロジェクトから Empower SSG にロードする(図 2)
- 溶媒(図 3)およびカラム(図 4)の Empower での設定に関連するファクターを、ポンプおよびカラムマネージャーモジュールにマッピングする
- 生成の最終設定には、注入パネル、平衡化時間、メソッド名が含まれている(図 5)
最終設定を完了した後、Empower SSG によって、すぐに実行できる注入シーケンスとしての実験計画に従って、サンプルセットメソッドが自動的に作成されました(図 6)。関連するカラムおよび溶媒を含む Empower 装置メソッドとメソッドセットが自動的に作成され、サンプルセットメソッドに組み込まれました。Empower ユーザーの指示に従って、平衡化ステップとブランク注入が、分析開始時に追加されました。Empower SSG を使用することで、クロマトグラフィーメソッドの自動生成が可能になり、このプロセスを手動で行う場合にかかる時間と転記エラーが低減します。
最適化
最適化の段階では、必要な分離とクロマトグラフィー性能を得るために、クロマトグラフィーパラメーターを体系的に最適化します。
最適化実験におけるクロマトグラフィーメソッド作成用の Empower SSG の使用法を説明するために、10 分間で有機溶媒 90 ~ 60% のグラジエントの傾きの影響を評価しました。スクリーニングのセクションで説明したステップに従ってメソッドを作成しました。グラジエントの傾きをポンプと強溶媒の割合、およびグラジエント分離のライン 2 およびライン 3(またはステップ)にマッピングしました(図 7)。
結論
体系的スクリーニングプロトコルを使用して行う分析法開発ワークフローの一環として、Empower SSG ソフトウェアによりクロマトグラフィーメソッドの作成を自動化しました。装置メソッドとメソッドセットが自動的に作成され、スクリーニング試験および最適化試験ですぐに実行できる注入シーケンスが、サンプルセットメソッドに組み込まれました。クロマトグラフィーメソッドの作成を自動化することで、これらのステップを手動で行う場合に生じる転記エラーとそれにかかる時間を最小にすることができました。SSG を使用することで、正しく作成されたメソッドを使用してクロマトグラフィー分析を行えたという信頼感が得られました。
参考文献
- Hong P, McConville P. A Complete Solution to Perform a Systematic Screening Protocol for LC Method Development.Waters White Paper 720005268, 2018.
- Maziarz M, Rainville PD.Efficient Method Development for the Analysis of Naphazoline Hydrochloride, Pheniramine Maleate and Associated Related Substances Using a Systematic Screening Protocol.Waters Application Note 720007850, 2023.
- Waters Empower 3 Sample Set Generator Release Notes.Waters Corporation, 716004237.
720008224JA、2024 年 2 月